富山県内の古民家に移住した男性が、若い人と地域の交流の場を作ろうと、築約100年の家を再生している。そのやり方は今どきらしく、SNSを中心にしたもの。
どんな方法なのか、新しいコミュニティーを目指す若者を取材した。
東京のメガバンクから富山に移住 SNSで「助けてくれる人捜してます」
射水市にある、築100年を超える古民家。
ここに移住することを決めたのは、茨城県出身の中谷幸葉さん（29）。3年前に東京の大手銀行を辞め、現在、富山市内のまちづくり会社に勤務している。
中谷さんがこの古民家のことを知ったのは、今から3カ月前のことだった。
古民家に移住した 中谷幸葉さん：
空き家になってしまうって話があって、そこに住んで、若い人たちが集まるような場所にしたいと思ってスタートしたのがきっかけ
この家は過去10年ほど、地元で竹林整備などをするNPOの拠点として使われてきたが、活動の休止が決まり、中谷さんが借りることになった。
ところが実際に来てみると、網戸はボロボロに破れ、草は伸び放題。とても住める状態ではなかったという。
そこで中谷さんは8月、SNSに、こんな投稿をした。
【中谷さんのインスタグラム】
「僕は東京のメガバンクを辞めて、富山の古民家に移住して来た29歳。勢いで引っ越してきたけど、とにかく草、草、草。助けてくれる人、探しています！」
この投稿が注目を集め、見た人から次々と「協力したい」という声が寄せられた。
そして9月、中谷さんのSNSの呼びかけに応じた人たちが、射水の古民家に集まった。まだ残暑厳しい中、草刈りに汗を流したのは、社会人や高校生など18人のボランティア。
中には草刈りのプロや、SNS上で活動をしているグループのメンバーもいた。
草刈りに訪れた男性：
僕は林業をやってます。山の方で、素材生産をやらせていただいてます
SNSで活動するグループのメンバー：
GUIIIIIN（グイーン）というチームで活動していて、わたしが、富山の観光スポットをインスタグラムで発信していて。ここも面白い場所になりそうだなと思って
古民家に移住した中谷幸葉さん：
SNS中心にマーケティング活動している人や、eスポーツ専門の人や、学生、高校生までいて。きょうは設計士の人がいて「こういう感じでDIYしたら良くなる」というアイデアが出たりとか
この日の作業の様子も撮影し、SNSに投稿する。SNSでのつながりが、草刈りという作業を通して強まり、その輪が広がっているようだった。
今後のことは“みんなで決める” 「やりたいことを実現できる場に」
家の周りはきれいになったが、木造2階建ての家の中は、昔の住人などの家具や物であふれている。その中にあった、前の住人・NPOが使っていたホワイトボードは、すでに様々なアイデアで上書きされていた。
古民家に移住した中谷幸葉さん：
ここに来た人たちが、みんなで話し合ったことを書いていったりとか、勝手に書かれていくこともあったりするが、ここを通して、やりたいこととか、実現したいことのアイデアを出している
中谷さんは最初から関わる人を募り、古民家の再生を進めながら、新しいコミュニティーを作りたいと考えている。
古民家に移住した中谷幸葉さん：
みんなで作り上げていくプロセス・過程が、本当に価値があると思っていて。発信しながら、みんなでつらいことも共有するし、作り上げていってコミュニティーが生まれる。作り上げた物に対して、当事者になっていくという価値がある
そして、ゆくゆくは、地域の困りごとを解決したり、呼びかけに集まってくれたメンバーの仕事につながる場所にしたいという。
ただ、どんな形で進めるのかは、今は決めない。
古民家に移住した中谷幸葉さん：
あえて会社とかに（組織化）していないのは、最後みんなで決めていけばいいと思うから。それぞれがやりたいことを、好きな仲間たちと実現できる場だと思っていて、関わった人たちが、そこから生まれた事業から報酬をもらえる、そういう場所になればいい。
今後、もしかしたらNPOになるかもしれないし、社団法人になるかもしれない。それも、みんなで決めていけばいいと思っている
取材のあと、家の中の片づけと大掃除をするためにSNSで仲間を募ったところ、20人以上が集まり、1日ですっかりきれいになったという。
これを機に、SNSのアカウント名を「富山の古民家に移住した」から「富山の古民家に仲間が集まった」に変更。いよいよ動きが本格化していく。
（富山テレビ）
