アメリカ・ニューヨークで最大級のオフィスビルがオープン。働く人を在宅から出社に戻すための魅力とは。

三井不動産が参画

マンハッタンで19日、三井不動産などが手がけるオフィスビルがオープンした。

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IT大手「メタ」も入居予定で、地上58階建て、延床面積約27万㎡とオフィスビルとしては最大級。

テナントフロアの最上階からはハドソン川やワンワールドトレードセンターなどを一望できる。

また、マンハッタンでは珍しく地下鉄に直結していることも大きな魅力となっている。

コロナ禍で働く人たちが一斉に在宅勤務に切り替え、現在もオフィスに戻った人は半数に満たないのが現状で、ニューヨークのアダムズ市長は、経済を活性化させるために何としてでも人をオフィスに戻したい思いだ。

――オフィスに戻ることの重要性は?
エリック・アダムズ市長:
アイデアを交換したり互いに影響を与え合える。オフィスに戻るのは楽しいことだ。
 

ニューヨークで働く人は、「ニューヨークを堪能できる場所だから出社する動機にはなると思う」「企業が不動産に投資する価値はあると思う。出社すれば欠けている連帯感みたいなものが生まれる」などと話す。

オフィスに来て、人と会ってこそアイデアが生まれ、生産性アップや技術革新につながるという考えも根強く、こうした出社勤務への流れを生み出すことが経済成長への起爆剤になるのか、注目されている。

リモート増で都市をまたいで拠点作り

内田嶺衣奈キャスター:
1500人全員がリモートワークで働く会社「キャスター」取締役CROの石倉秀明さんに聞きます。三井不動産が開発に参加した新しいオフィスビルがニューヨークにオープンしましたが、どうご覧になりますか?

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
ニューヨーク市としてはリモートワークからオフィスへの回帰を狙っているということですが、そう簡単にオフィスには戻ってこないと感じます。

リモートワークの生産性についての論文や先行研究を多数調べてみても、オフィスの時とリモートワークの時で生産性が上がったという研究もあれば、下がったという研究もあり、実のところあまり明らかにされていません。

しかも、創造的な仕事やイノベーションを起こすようなアイディアを出す場面においても、リモートの方が良いという研究もあれば集まった方がいいという研究もあり、オフィスとリモートどっちがいいかはなんとも言えない状況が続いています。

その中で急激なインフレで家賃も上がっているので、経営者としてもオフィスに大きく投資をするかという意思決定は悩ましいところだと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
その研究、とても興味深いです。ニューヨークに新しいオフィスを持つという今回のメタの判断については、いかがですか?

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
メタのようなIT企業の従業員にとって、リモートワークできることは当たり前になっている中で、採用競争力を考えると、従業員全員に出社を求めるという決定はしにくいというのがベースにあると思います。

それでもオフィスを拡大する必要があったときに、家賃が高騰しすぎているシリコンバレーよりもニューヨークの方が経済合理性があると判断した。具体的には割安感があったのかもしれませんし、優秀なエンジニアを採用する際に、競合が多いシリコンバレーよりもニューヨークの方が有利だと考えた可能性もあると思います。

ただどちらにせよ今回の判断はリモートワークする人が増えたからこそできたものだと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
リモートワークが増えたからこそというのは、具体的にはどういったことですか?

「キャスター」取締役CRO・石倉秀明さん:
今までであればシリコンバレー内で拡張するしかなかったものが、リモートで働く人が増えれば、オフィスの場所も選択肢が増えて自由に選べるようになるので、都市をまたいで拠点を作れるようになったということです。

これは都市からすると大きな企業を呼び込む新たなチャンスが生まれているとも言えると思います。
国と国の間で競争があるのはもちろんですが、国内でも都市同士で競争が激しく行われていくのはアメリカらしいダイナミズムの象徴でもあると感じました。

内田嶺衣奈キャスター:
リモートとオフィス、それぞれの良いところを生かす働き方が今後進んでいくようにも思います。

(「Live News α」10月20日放送分)