保育園で出る、使用済みの紙オムツ。「家庭での持ち帰り」を経験した人はご存知かと思うが、毎日のことなのでその量もバカにならない。この「家庭への持ち帰り」について「不衛生」という声が全国で上がっているが、島根・松江市では、11月から公立の保育施設で持ち帰りをやめ、園での処分に切り替える。
一方で、いまだ保護者が持ち帰り処分するという自治体や施設も少なくない。全国の自治体によって対応が分かれる中、山陰の現状を取材した。

国の規定なく…自治体によって対応バラバラ

保育園で出た使用済みのオムツ、処分はどうしているのか。街の人に聞いてみると…。

保護者:
保育園で引き取って処分してもらっています

保護者:
家に持って帰ってました。家に持って帰って廃棄

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保護者:
途中までは持って帰っていて、途中からは園で処分に変わった

保護者が持ち帰って家庭で処分するのか、それとも施設側で処分するのか。現在国の規定はなく、私立の場合は各保育施設に、公立の場合は自治体にその対応が委ねられている。

山陰の公立施設をみてみると、鳥取県では4市のうち、倉吉市のみ「持ち帰り」。鳥取市・米子市・境港市では園が処分している。また島根県では、公立施設がない浜田市を除く7つの市で、原則「持ち帰り」となっている。

「持ち帰りの時は名前で分別して…」保育士の負担軽減にも

保護者:
持ち帰りは車の中に臭いが残ることがあった。でもしょうがないかなとも思う

全国でも、自治体によって対応が分かれているが、持ち帰りは不衛生で保護者の負担も大きいと、園での処分に切り替える動きが広がっている。

こうした中、松江市でも…。

松江市 子育て政策課・上山淳子さん:
今までは、保護者に自宅へ持ち帰っていただいていたが、それを各所・園で処分する

予算として約250万円を計上。11月から、公立の11施設で園での処分に切り替えることを決めた。

松江市子育て政策課・上山淳子さん:
衛生的にも臭いが出るし、重いので負担軽減になれば

私立の施設についても、補助金を出すなどして、園での処分に切り替えることを検討したいとしている。

島根県内でも、私立の施設の中には、すでに独自で園での処分に切り替えているところもある。
「みつき福祉会」では、グループの14施設で、2019年から園での処分に切り替え、そのための経費として保護者からひと月100円を徴収している。

保護者:
お迎えのあとに出かけた時も、車の中が臭くなると思うので、すごく助かってます

園での処分に切り替えたことで、保育士の負担軽減にもつながっているという。

みつき出雲郷保育園・増岡年子 園長:
持ち帰りの時は、お名前で分別して持ち帰りの袋に入れる準備が必要だった。園廃棄でそこも軽減されたというのは確かです

温泉施設のボイラー“燃料”に活用 先進的な取り組みも

さらに、先進的な取り組みを進める自治体もある。
鳥取・伯耆町では10年前に「持ち帰り」をやめ、町の収集車が保育園で出た紙おむつを回収する。しかし回収された使用済みオムツは、廃棄されるわけではない。燃料として有効活用されるのだ。

保育園や高齢者福祉施設で出た紙おむつが運ばれるのは、清掃センター。使用済みの紙おむつは、専用の機械で小さな固まりのペレットにされ、燃料に生まれ変わり、町内の温泉施設のボイラーの燃料として使われる。

伯耆町・森安保 町長:
持ち帰るというストレスをなくしたほうがいいという判断で、これまでずっとやってきた。それを燃料化という手法に組み入れたので、環境的な意義も保護者には感じていただいていると思っている

保護者の負担を軽減し、燃料として有効活用。まさに一石二鳥の取り組みだ。

しかしこのような先進的な取り組みがある一方で、先述した通り、自治体や園によってはいまだに持ち帰りというところが多くあるのが実情だ。

民間企業の調査によると、持ち帰らせる理由として「便で子どもの体調を知ってもらいたい」「昔からそうしてきた、理由は分からない」などが挙げられるという(2022年2月~3月 公立保育園がある全国の自治体への調査/BABY JOY調べ)。

当たり前とされてきたルールを見つめ直し、何が最適か、社会全体で考えていく必要がある。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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