イーロン・マスク氏率いるベンチャー企業が開発した、衛星のインターネット通信システム「スターリンク」の法人向けサービスが日本で始まる。

専用アンテナ公開

「スターリンク」は、イーロン・マスク氏が代表を務める宇宙ベンチャー「Space X社」が開発した人工衛星による通信システム。ロシア軍との戦闘を続けるウクライナ軍に、無償で提供されたことでも話題となった。

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KDDIは10月19日、「スターリンク」の法人向けサービスを始めると発表し、専用のアンテナを公開した。1人で持ち上げられるほど軽く、設置すれば衛星と通信し、どこでもインターネットを利用できるようになる。

通常の衛星と比べて、地上からの距離を65分の1の高さに打ち上げることで、低遅延を実現したという。

KDDI・松田浩路執行役員:
山間部のカバーや離島のカバー、自然災害時に何かあったときのバックアップ回線としても使われることを見込んでいます。

個人向けのサービスはすでに10月11日から始まっているが、法人向けは年内のサービス開始を目指すとしていて、「スターリンク」の提供は日本がアジアで初めてだという。

山間部や海上で利用期待

Live News αでは暮らしを変えるテクノロジーに詳しいIoT NEWS代表の小泉耕二さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
スターリンクの日本での法人や自治体向けの提供開始、どうご覧になりますか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
スターリンクは情報戦が重要とされるウクライナでも導入され、現在欠かせない状態です。日本でも10月11日より関東から北側で個人向けのサービスが提供開始されています。実際に使ってみた友人によると、バルコニーにアンテナを立てることで大体100Mbps-200Mbps程度は出ている様子です。私が今自宅でキャリア回線を使った場合100Mbpsも出ていない状態なので、かなり高速といえます。 1秒間あたりのデータ量の目安としては、数Mbps-数10Mbpsあれば動画の視聴も可能なので、スターリンクを導入するとかなりリッチな通信環境が手に入ることになります。ただ、個人の場合、衛星の電波を受信するルーター付きアンテナが7万3000円かかり、月額1万2300円を支払うことを考えると、通信が安定している都市部ではそれほどニーズは高くないかもしれません

三田友梨佳キャスター:
では、スターリンクの想定されるニーズ、どのようなケースでの利用が期待されるのでしょうか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
キャリアの通信ができない山間部や海上など、これまでつながらなかったエリアで衛星電波を受信するアンテナを立てて利用することが期待されます。具体的には登山で利用される山小屋山間部の温泉宿です。 また、遠洋漁業など長期間海上で過ごす方は家族との会話もろくにできませんでしたが、これがあれば動画で会話もできそうです。さらに飛行機用のアンテナもスターリンクは準備しているので、これが導入されれば飛行機内でのネット接続もより快適になるはずです

三田友梨佳キャスター:
通信がつながりずらいケースというと大規模な災害時での利用も想定できるように思いますが、これについてはいかがですか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
例えば、衛星電波受信用のアンテナをオフィスなどに設置した場合、電波を受信するには電源が必要になります。そのため企業や自治体が大規模災害などの非常事態への備えとしてスターリンクの活用を検討する場合は、電気の供給が途切れても電源の確保が出来る自家発電の導入などもあわせて考える必要があります

三田友梨佳キャスター:
これまでは人のいるところに基地局を使ってサービスを提供するのが当たり前でしたが、サービスの幅が広がっていきそうです

(「Live News α」10月19日放送分より)