人々の生活にさまざまな影響を及ぼしてきた新型コロナウイルス。ソーシャルディスタンスやオンラインでの作業など、生活様式も大きく変化した。「新規孤独」と「孤独を和らげたもの」。気づけば3年が経とうとしているコロナ禍の影響について、データ分析の専門家が解説する。

孤独を感じている人が2年で13%増

コロナ禍が及ぼした影響について「孤独」をキーワードに、医療経済学・データ分析の専門家である広島大学大学院・角谷快彦教授に話を伺った。

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角谷教授のチームは、全国の成人男女およそ1万7000人の追跡調査から独自のデータを出している。コロナ以前から孤独を感じている人は52%だった。それが2021年の調査ではさらに8%、2022年は新たに5%の人が孤独を感じるようになった。

「孤独」とは以下のような項目に当てはまるか、寂しさを感じている状況のこと。
1.人との付き合いがないと感じることがあるか
2.取り残されていると感じることがあるか
3.他の人から孤立していると感じることがあるか
など

コロナ禍で浮上した「新規孤独者」とは?

調査結果によると、コロナ禍で孤独を感じる人は増えている。さらにデータを分析すると”孤独の変化”が見えてきたという。

広島大学大学院・角谷快彦 教授:
孤独を感じる人の”属性”が変化しています。コロナ以前は「男性」や「独身の人」が孤独を感じることが多かった。それが、コロナ禍になって「若い女性」や「有配偶者」が増えてきた。コロナ2年目になると「子どもがいる人」でも孤独を感じる人が増え、家計の変化や居住地も孤独の要因になっています

(Q.感染リスクの高い高齢者の方が、外出する機会が減って孤独感が増しているのでは?)

広島大学大学院・角谷快彦 教授:
確かに高齢者の孤独感は増しています。わずかな差ではありますが、高齢者のパーセンテージが若い人を上回っています。しかし、高齢者の孤独はコロナ以前からあった。コロナ禍で今まで孤独を感じることがなかった若い女性、有配偶者、子どもがいる人まで孤独を感じるようになったということです

非常時にこそ、声をかけあうことが重要

そんな中、注目すべき結果も出ている。角谷教授のチームがコロナ禍3年目の2022年に初めて行った調査で「スマホの利用時間の長さが孤独を和らげた可能性が高い」ことがわかった。

(Q.スマホのやり過ぎはメンタルヘルスにあまり良くないのでは…?)

広島大学大学院・角谷快彦 教授:
その通りです。スマホの長時間利用はメンタルヘルスに悪影響を及ぼしますし、孤独感を深めると言われています。しかし、私たちの分析では「コロナ禍という”非常時”においては、特に若い女性でスマホの長時間利用が孤独を和らげている」という結果が出ました。こういう非常時に、声をかけあうことの大切さが強調されたのではないでしょうか。
孤独は主観的なもので、たくさんの人に囲まれているから孤独ではないとは必ずしも言えない。いろいろな人に囲まれているにもかかわらず、孤独を感じることはある。見た目や状況にとらわれず、こまめに声をかけあうことの重要性がこの研究結果からわかります

スマホで人とつながることが孤独を和らげた。人とのつながりは、人間として生きていくうえで欠かせない。出口の見えないコロナ禍に、声をかけあう優しさがますます求められている。

(テレビ新広島)

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