拉致被害者5人が帰国してから20年。
北朝鮮による拉致被害者の一人、蓮池薫さんがFNNのインタビューに応じた。
小泉純一郎首相(当時)が訪朝した初の日朝首脳会談で、金正日総書記(当時)が日本人拉致を認め、2002年10月15日、24年ぶりに日本に帰国した拉致被害者の蓮池薫さん。
帰国してからの20年を振り返った。
「我々5人の帰国、家族の帰国以来、全然進展がない。拉致被害者については、その後20年間、正確な情報もないし、帰国はもちろんのこと、情報提供もまったくない。そういう状況の中で、やはり何とかしていただきたい、何とかしなくては、という思いが一番ですね」
帰国してからの生活について聞くと…。
「私が20年ここで暮らしたということは、重要な問題ではないと思います。帰って来ていない人たちについて、状況をどう動かしていくか。政府も我々も、そこに集中しなくてはいけないと思います。」
この20年の間、北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの父・横田滋さんや有本恵子さんの母・有本嘉代子さんが亡くなり、高齢化している拉致被害者家族の現状に、蓮池さんは焦りを隠せない。
「親子の再会を目指すのが家族会ですよね。親子の再会のために活動して、こういう動きがあった。その親世代が果たして、生きている間に子どもに会えるかどうか。今の状況を見ていると、日本政府は、どなたかが他界された、そうすると『忸怩たる思いだ、痛恨の極み』という話があって、それがしばらく過ぎると、また、同じようになる、それが繰り返されているだけと感じてしまう。家族会が結成された時の親の世代の方々が、ほとんど他界されている状況では、解決できない部分がほとんどになってしまった。つまり、取り返しがつかない部分がほとんどになってしまった。これを政府がどのように受け止めているのか。今までと同じように淡々と繰り返して『今度こそ頑張ります』で済ませる話ではないと思うんですよ。ここをなんとか本気で、他界され(親が)どんどん減っていくことを、どう受け止めているのか、どれくらい真剣に重く受け止めているのか、すごく疑問に感じてしまう」
拉致被害者の親世代が生きているうちに、帰国を実現させたいと語る蓮池さん。
進展しない拉致問題の解決に向けて、政府へ求めることとはー
「親子の再会のない拉致問題の解決は考えていない、それまでにあなたたち(北朝鮮)が動かなかったら、あなたたちの望むものは手に入らないという、強いメッセージです。我々も講演でこう言います。時間は限られている。今までは、親の世代が亡くなればやりやすくなる、反発が弱くなると思っていた節がある。それが通用しない、そんなの待っていたら、あなたたちが得られるものは半永久的に得られないかもしれないぞ、こういう強いプレッシャーをかけるのが、いま北朝鮮が一番堪えるプレッシャーだと思う。動けばこう、動かなければこう。時間が無い。このメッセージを北朝鮮に強く伝えるしかない。アメリカに頼る話ではない。」
その上で、北朝鮮に気になる動きがあるという。
「ひとつは、核政策の法制化。アメリカの関心は非核化しかない。ということは、アメリカとは交渉しないという話。韓国もそういう流れです。日本は、非核化は後の問題でいいじゃないですか。拉致問題に特化してやる。それからもうひとつは、(北朝鮮は)拉致は解決済みだと言いながら、今までにないことを言っている。昔から過去の清算をやれと言っていたが、今回、国交正常化の前に、過去の清算、経済協力をしろと、これが平壌宣言の基本精神だと言ったんですよ。今まで言っていたことを変えた。そんなこと言ったことないんです。日朝が国交正常化をして、その後、適当な時期に日本は北朝鮮に経済協力を始めるという話、これを逆転させるという話を今回初めて出した。何か欲しくて切羽詰まっている。これをどう分析するか、北の意図が何なのか。そこを見ると、考えようによっては、拉致問題が動く可能性があるのではないか。日本政府がどう出るか、そこにかかっている、そこに期待したいんです。そういう意味では、絶好のチャンスとは言えないかもしれないが、今までの動きとは違った、何か新しい動きがある。ぜひ逃さずに、北に強いメッセージを伝えて欲しい」
我が子の帰国を待ち続ける横田早紀江さんら親世代に、蓮池さんは諦めないよう訴える。
「希望を持って、元気で長生きしてほしい。帰国がかなっていない被害者に対して、みんなで政府に働きかけていくつもりです、と。家族も本当に一生懸命やっています。ですから健康で、その日が来るのを待っていてほしい」
帰国してから20年、家族と一緒に自由を手に入れた蓮池さんは、少し幸せそうに見えた。
Q.今、幸せですか?
「もちろん。北にいたときのことを考えれば、本当に有り難い状況。そう思うからこそ、他の方々にもぜひ、帰って来て、そういう思いを味わって欲しい。(帰国できていない拉致被害者にも)絶対に帰って来ていただいて、恨みを晴らしてもらいたい。日本の生活を味わっていただきたい。そのためにも、早く帰国を実現していかなくてはいけない」