長年、庶民の味として親しまれてきたサンマ。9月28日、全国有数の水揚げ量を誇る宮城県・女川魚市場で、今シーズン初めての待望の水揚げが行われた。しかしサンマは近年、全国的に不漁が続いていて、女川魚市場での2021年の水揚げ量は約1240トン。これは記録が残る2007年以降で、最も少ない水量だ。
日本の秋の味覚・サンマの不漁は、取り扱う鮮魚店や飲食店にも影響を及ぼしている。

秋の味覚・サンマ高騰 入荷量減少で…サイズも小さく

その日、市場から仕入れた魚を取り扱う、仙台市若林区の鮮魚店。

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9月27日、店頭に並んでいたサンマの価格は、1尾「600円」まで高騰していた。

斎藤魚店・斉藤雄美 専務:
昔のサンマのイメージが離れないので、お客さんは600円というと抵抗ありますよね。高いです

この鮮魚店によると、5年ほど前までは、同じサイズであれば1尾100円ほど。これより大きいサイズでも250円ほどで販売していた。しかし入荷量が減少したことにより、価格を上げざるを得ないという。

斎藤魚店・斉藤雄美 専務:
前に比べたら小さいサイズで価格も、上がってる状況。10月になれば三陸ものが、入荷量が増えてくると思うので、それに期待ですね

不漁、そしてサイズの変化の影響は、飲食店にも…。

――今年のサンマは?
魚々ろ・田母神聡志 料理長:

ちょっと細いですね。例年に比べると一回り小さいサンマ

毎年シーズンになれば、期間限定で塩焼きと刺身でサンマを提供している。多くの客から問い合わせがある秋の名物メニューだが、数年前から小ぶりなサンマが増えた上、不漁により仕入れ価格も上がっている。

魚々ろ・田母神聡志 料理長:
仕入れ価格は10年前と比べると、倍。ここ4~5年で、200円以下のサンマはなかなか入らなくて、一本200円以上が当たり前のように、普通になってきている

止まらない仕入れ価格の上昇。それでもこの飲食店ではメニュー価格に転嫁させず、値段を据えて置いている。

魚々ろ・田母神聡志 料理長:
お客様に、サンマのイメージ通りの価格で提供したいので。仕入れ値は上がっていますが、例年と同じ価格で提供しています

キロ単位の価格は10倍以上 水揚げ量は10分の1以下…続く記録的不良

サンマ価格(産地卸売市場価格)の推移を見てみると、15年ほど前はキロ当たり60円ほど。10年ほど前から年々上がり、2021年はキロ当たり627円と、10倍以上にまで上昇。過去最高値となった(出典:水産庁)。

この急激な価格上昇の要因の一つとみられているのが、水揚げ量の減少だ。
全国の水揚げ量の推移を見てみると、80年代から2014年ごろまでは、毎年20万トン~35万トンほど。しかしその後、急激に減少し、2021年は1万8291トンと過去最低だった(出典:全国さんま棒受網漁業協同組合)。

サンマの産地として知られる宮城県だけで見ても、水揚げ量は、3年連続で1万トンを割るほど減少している。特に2021年は3465トンで、前の年と比べて36%程度。過去最低の水揚げ量を2年連続で更新している。

海水温上昇で遠のくサンマの漁場 専門家「消費者が価格受け入れを」

なぜ、不漁が続いているのか。専門家は…

東京海洋大学・勝川俊雄 准教授:
最近、日本周辺の水温が高いことから、サンマの漁場がどんどん日本から遠ざかっている

日本の食卓に欠かせない秋の味覚・サンマだが、取り巻く状況は、数年前と大きく変化していると指摘。今後については…

東京海洋大学・勝川俊雄 准教授:
(国の調査で今シーズンは)2020年やその前と同じぐらい。減った時期の平均値ぐらいなので、それほど多くはない

その上で、サンマを食卓に残していくためにはどうすればいいのだろうか。

東京海洋大学・勝川俊雄 准教授:
サンマの漁業が成り立つように、ある程度高い価格で買っていかないと、もう油代も出ないとやめてしまうことになりかねない。シーズンに1本2本でも構いませので、秋の風物詩を食べることで、サンマの漁業を応援していただけたら

長年水揚げに貢献の“小型船” 漁に出られず 

専門家からは、「サンマの漁場が遠くなっている」と指摘があったが、このことが「ある問題」を引き起こしている。

こちらも、全国有数のサンマの水揚げを誇る宮城県気仙沼市。9月28日は2隻の船から、約70トンのサンマが水揚げされたが、どちらも「大型船」。20トン未満の「小型船」の漁も解禁されてから1カ月ほど経つが、その姿は港にない。

気仙沼漁業協同組合・臼井靖 参事:
小型船は漁場が遠くて、出航していないと聞いています。小型船も水揚げに貢献していただいていたので、漁に出られないのは、影響は出てくる

例年であれば、この時期はすでに三陸沖に漁場が形成され、小型船によるサンマの水揚げも本格化している。しかし、ここ2~3年は、北海道の東沖1500キロあたりに漁場が形成され、燃料タンクの容量が限られる小型船では、往復するのが困難になっている。
気仙沼では2022年、いまだ1隻も小型船が出漁していないという。

気仙沼漁業協同組合・臼井靖 参事:
群れが沿岸に近づいて漁場が近くなれば、小型船も出漁できると思う。小型船も大型船も漁ができて、水揚げが上向いてくれることを願うのみ

国などの調査によると、10月下旬には漁場が三陸沖に移る見込みとなっている。

(仙台放送)