ヤマト運輸や佐川急便など物流大手5社が初めてタッグを組み、過疎地域での効率的な配達を目指す。

配送コストの課題解決へ

埼玉県秩父市の郵便局に現れたのはヤマト運輸のドライバー。郵便局員からゆうパックを受け取り配達する。

この記事の画像(4枚)

ほかにも佐川急便など3社がヤマト運輸の営業所に荷物を運び一括で届けるなど、物流5社による「共同配送」の実証実験が行われている。

秩父市など過疎化が進む地域では配送コストが課題になっていて、今回の実証実験で効果や課題を検証する。

荷物を受け取った人は、「過疎地域のことを思って協力してもらえることは住む方としてはありがたい」と話す。

ヤマト運輸 営業担当マネジャー・堤浩二さん:
今回の取り組みについては様々なメリットが生まれてくるんだろうと、十分に検証結果をふまえたうえで、今後どうしていくのが一番いいか考えていきたい。

2023年度には地元の運送会社も参加して、サービスの本格運用を目指す。

運ぶことに付加価値つけて競争優位性を

三田友梨佳キャスター:
マーケティングや消費者行動を研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。 物流企業5社がタッグを組んだ共同配送サービス、どうご覧になりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
モノを早く、安く、しかも丁寧、確実に運んでくれる日本の物流は、世界に誇れるサービスです。 ただし、私たち利用者はその恩恵をいつまで受けることが出来るのか分からない程、物流業界が深刻な危機を迎えています。

例えば、トラックドライバーは他の産業に比べ労働時間は2割長く、それでいながら賃金は1割~2割低いとされ、人手不足や高齢化が深刻でありながらネット通販などの隆盛により、運ぶモノの種類も量も増えています。

そこで今回の共同配送のように、ともに手を携える「協調」をとりながら顧客の獲得を狙う「競争」の関係が求められています。

三田キャスター:
「協調と競争」はどのようにして両立が成り立つのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
これまで物流会社は自前で輸送ネットワークを構築していましたが、今後は他社の荷物でも一緒に運べるものは運び、配ってもらえるものは配ってもらうということになります。

航空業界ではこの「協調と競争」の関係づくりが進んでいます。
例えば、全日空は「スターアライアンス」、日本航空は「ワンワールド」という業務提携を海外のエアラインと結んでいます。これによって、 航空機を共同運航して効率化を図ったり、空の旅の利用者も乗り継ぎ、空港でのスムーズな手続きやマイレージプログラムの相互利用など多くのメリットを受けています。

三田キャスター:
ともに手を携える協調が進むことによってそれまでの強みや差別化の要素が失われることにならないのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
運ぶというサービスは将来的にはコモディティ化していき、この部分での強みや差別化を図ることが難しくなっていくものと思われます。 そのためモノを「運ぶ」ことに付加価値をつけて競争優位性を探っていく、つまり、ここでの競争が成長へのカギとなります。

三田キャスター:
新たな物流モデルの構築となるのか、今後の動きが注目されます。

(「Live News α」9月28日放送分)