対象は高齢者、入院、投薬、妊婦 

「都は今後これらの取り組みによりまして、新たなステージへと歩みを進めてまいります」 新型コロナウイルス感染者の全数把握について、小池知事は、今月26日からの国の一律見直しをうけ、東京都も見直すことを決めた。 

見直し後でも、医師がこれまでどおり発生届を出すのは①65歳以上②重症化しているなどすぐ入院が必要な人、基礎疾患があり今後入院する可能性がある人③肥満など重症化リスクがあり治療薬の投与が必要な人 ④妊婦、となっている。 

コロナ対策本部会議に出席する小池知事(13日 都庁)
コロナ対策本部会議に出席する小池知事(13日 都庁)
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発熱外来や検査キットで「陽性」と分かったけれど、①~④にあてはまらない人は「陽性者登録センター」に自ら登録。登録すれば、健康観察、配食サービス(条件付き)、パルスオキシメーター貸与、宿泊療養、医療相談、入院・往診などの緊急時対応などを受けられる。しかし、登録するかしないかは本人次第。登録する人を増やせるかの環境整備は、見直しとなる26日までの課題だ。 

フラグ立てられる? 

「いかにフラグを立てられるか」 東京都は、今後、医師が発生届を出すのが全体の2割、自ら登録センターに届け出る人が8割になると見ている。その8割の人のなかで「急変した人」について、どう的確なタイミングで医療につなげていくのか、これも26日までに、”詰め”なくてはならない課題のひとつだ。 

「我慢強い人が重症化するケースは出てくると思う」一方でこのような懸念もあり、体調が悪化してきた場合、どのタイミングで再診を受けるよう促すことができるのか、これも課題だろう。 

「発生届」対象外の人の容態急変を、いかに把握出来るかが課題だ。
「発生届」対象外の人の容態急変を、いかに把握出来るかが課題だ。

一方、ある関係者は、「隠れ持病、肥満、ワクチン打ってない。若い人の急変は、この3つのどれかが多い」 と話していたが、「全数把握」を見直して、若い人の急変を把握できるかどうか、心配する声は多い。また、“隠れ疾患”は若い人ほど気づかない傾向にあり「これまで通り、すべて医師が管理した方がいいのではないか」との指摘もある。

BMI25以上は「肥満」 

ある感染者の60代男性は、高血圧であることから宿泊療養施設に入所。すると、身長と体重を自ら測定するよう言われ、その数値をもとに肥満度を表す体格指数=BMIを確認されたという。男性の数値「26」だった。 

ところが、施設の職員から、「重症化のリスクがあるので、血中酸素飽和度が94を切るようなことがあったら中和抗体薬を投与します」 と言われたそうだ。さらには、「BMI25以上は「肥満」で重症化リスクがあるため、血中酸素飽和度の数値次第で、中和抗体薬を投与する」と説明を受けたという。この男性は、一般的に肥満には見えず本人も驚いていたが、「肥満」は、それだけ重症化リスクが高いと言うことだろう。 

不同意のわけは「ど正論」 

当初、小池知事は、「国の全数把握見直し」に同意しなかった。その理由について、別の関係者は、「医療機関がひっ迫しているから止める、という、なし崩し的な止め方ではなく、なぜ止めるのか、誰を発生届で把握するのか、しっかり議論して結論を出してから止めるべきだ、と思っていたからだ」と説明した。その上で、東京都の対応について、「東京は、ど正論だった」 と評価した。

小池知事は、当初、「全数把握見直し」に賛同しなかったが・・・。
小池知事は、当初、「全数把握見直し」に賛同しなかったが・・・。

では、なぜ、小池知事は、この段階になって、「全数把握見直し」に舵を切ったのか。その根拠は、「発生届」対象外の人に健康観察を提供できるメドが経った他、コロナ治療の飲み薬の一般流通が始まるからだという。

「これまでよりさらに自分の身は自分で守る、ということだ」 このような見方をする関係者は多いが、26日の見直しにむけて残された課題も多い。 自分の身を自分で守るためには、感染予防対策を緩めず、感染したら行政や医療機関から“見逃される”ことがないよう自ら登録、まずはこの2つが大切だろう。 

(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)

社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。

小川美那
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「お役に立てれば幸いです」 見てくださる皆さんが“ワクワク&ドキドキ”しながら納得できる情報をお伝えしたい! そのなかから、より楽しく生き残っていくための“実用的なタネ”をシェアできたら嬉しいなあ、と思いつつ日々取材にあたっています。
フジテレビ報道局社会部記者兼解説委員。記者歴20年。
拉致被害者横田めぐみさんの娘・キムヘギョンさんを北朝鮮でテレビ単独取材、小池都知事誕生から現在まで都政取材継続中、AIJ巨額年金消失事件取材、TPP=環太平洋経済連携協定を国内外で取材、国政・都政などの選挙取材、のほか、永田町・霞が関で与野党問わず政治・経済分野を幅広く取材。
政治経済番組のプログラムディレクターとして番組制作も。
内閣府、財務省、金融庁、総務省、経産省、資源エネルギー庁、農水省、首相官邸、国会、財界(経団連・経済同友会・日商・東商)担当を経て現在は都庁担当。