9日、政府が開く物価・賃金・生活総合対策本部で取りまとめられる予定の「物価高対策5万円給付案」。電気・ガスや食料品などの価格高騰対策として、住民税が非課税の世帯などを対象に、5万円を給付するというものです。
給付対象者は約1600万世帯、日本全体の約27%に当たります。財源は約9000億円の予備費からまかなう形です。

賛否渦巻く「給付対象」 ギリギリの暮らしする人も…

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5万円給付案に対して、一部では「一律で給付してほしい」「なぜまた非課税世帯だけなんだ"働いたら負け“なの?」「5万円では全然足りない」と疑問の声も上がっています。

これについて、時事通信社・解説委員の山田恵資氏は次のように話します。

時事通信社・解説委員 山田恵資 氏:
線引きのラインを所得の低い方のほうに合わせるとなると、所得が低くても課税をされている方には何の恩恵もないということになってしまう。また、課税されていてかつ家族がたくさんいるというケースですと、より負担が大きくなっていきます。
ですので、やはり所得の低い方のところで線引きするとなると、大きな不満も同時に出てくると言うことだと思います

「住民税非課税世帯」の生活の実態はどのようなものなのか。
めざまし8が20代のシングルマザーの女性に取材したところ、1カ月の手取りは約11万円、家賃や食費、教育などの雑費、光熱費などを引くと、3500円程度しか手元には残らないといいます。

女性は「子供の病気などで医療費がかかると自分の食費を削るしかない、貯金できる余裕がないから将来が不安」といい、給付額が5万円では全く足りないと話します。

続く物価高 2022年に入りどれだけ上昇した?

8月31日時点で実施済み・予定を含む値上げ食品は2万56品目、電気料金に至っては、2021年9月と比較すると2028円(東京電力・標準家庭のケース)も値上がりしており、大手10社すべてが値上げの上限に達するのは初めてだということです。

生活費全体にも影響が出ています。明治安田総合研究所フェロー、チーフエコノミストの小玉祐一氏の試算によると、2022年7月と、2021年の平均を比べてみると、現状で7030円の負担増、世帯で計算すると年間で約8万4360円にもなるといいます。

なぜ「今」なのか?岸田政権の焦り

なぜいま5万円給付するのか。
時事通信社・解説委員の山田恵資氏は、7月以降、旧統一教会の問題や、安倍元首相の国葬費用などを巡って、「岸田政権の支持率が落ち込んでおり、低下に歯止めをかけたい、相当危機感があるのではないか」と指摘します。

時事通信社・解説委員 山田恵資 氏:
どの政権も支持率は高い方がいいのですが、岸田政権にとっては内閣支持率が非常に政権にとって重要な要素になるわけです。といいますのは、元々岸田さんは党内の政権基盤は強くないんですね。第四派閥ですし、安倍派・茂木派・麻生派といった各派から支えられているという構図にあるわけで、
そうするとそれを後押ししてくれるとすれば、もうひとつは「内閣支持率」があって、それで初めて岸田さんが“岸田色”を出せるんです

岸田政権の運営には「内閣支持率」が重要だという山田氏。

時事通信社・解説委員 山田恵資氏:
岸田さんはこの一年間支持率は高めで維持してきましたので、その点では政権基盤が揺らぐような形はなかったんですけども、参議院選挙の後、支持率が急落しているわけですね。
頼みの支持率が下がってくると、元々政権基盤がそんなに強いわけではないとなると、政権基盤はもともと弱い、求心力、支持率も下がってくるという状況は、非常に今後の政権運営に影響するということ。岸田さんはなんとかそれを食い止めたい。
そこで、こうした政策を打ち出すということになったのだと思います

さらに、今回対象になる非課税世帯に「高齢者」が多いことから、「アベノミクスの恩恵を受けられなかった世代を、支持率上昇のために取り込みたいのでは」とも推察します。

本来あるべき給付の形とは?

時事通信社・解説委員 山田恵資氏:
やはり“恒久的”な制度をきちっとしなくてはいけないと思います。
ひとつは成長と分配ということで、経済の成長は大事ですけどもなかなか先が見通せないということになりますと、たとえば累進課税で1億円超の高額所得者の方への課税を財源にして、それを低所得者の方々に配分するというようなことも、やはりこれから真剣に考えていかなくてはいけないのではないかと。
そこを避けたままですと、こうした付け焼き刃のような政策が続くだけになってしまって、結局は恒久的なものにならない。多くの方が結局は救えないのではないかと私は考えます

(めざまし8 「わかるまで解説」より9月9日放送)