塩分の摂り過ぎが気になるなら、食生活の改善を促す食器はいかがでしょうか。

塩味が増したように感じる"電気味覚"

ビールで有名なキリンホールディングスが明治大学との共同研究で開発した、白を基調とした食器。
これは"味の調整"ができる食器デバイス「エレキソルト」で、その実証実験が9月、スタートした。

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キリンホールディングス 新規事業グループ・佐藤愛さん:
減塩食品の味わいを増強させるおわん型とスプーン型のデバイスです。

本当に塩味が強くなるのか、今湊キャスターが減塩ラーメンで体験した。

今湊敬樹キャスター:
電源を入れる前のラーメンをいただきます。若干、塩味が薄くて物足りない感じはあります。

そこで、電源を入れてみると…

今湊敬樹キャスター:
かなり塩味を感じるようになりました。飲んだ瞬間に舌先にぐっと塩味を集中させたかのような押し寄せてくるような感じがします。

薄味の料理を濃く感じることができる「エレキソルト」。
可能にしたのは電気味覚という技術だ。

エレキソルトを使わずに食べるスープは、塩味のもととなるナトリウムイオンが分散していて、ばらばらに舌に当たるため味に物足りなさを感じる。

一方、2つの電極がついたエレキソルトを使いスープを飲むと、電極に触れたスープから人体に影響のない独特の波形の電流が舌やその周辺に伝わる。

すると、ばらばらに動いていた塩味のもとが固まりになり舌に当たる。そうすることで、まるで塩味が増したように感じることができるという。

また、電気の強さは1から4段階まで調整ができ、自分の好みの味の濃さに調整することができるという。

より楽しく食事方法改善へ

そもそも、キリンはなぜ、このような食器デバイスを開発したのだろうか。

開発の背景には、減塩食を取らざるを得ない人や健康志向の人に、よりおいしく、より楽しく食事方法の改善に向き合ってもらいたいという思いがある。

キリンホールディングス 新規事業グループ・佐藤愛さん:
キリングループは既存事業として、食領域、医療領域をもっているが、次の成長の柱として食と医をつなぐ、ヘルスサイエンスに今力を入れています。お客さまの健康課題にまず寄り添う企業になりたい。

人生100年時代。
健康的な未来の手助けを目指すキリンのエレキソルトは、2023年の販売を目指す。

ヘルスサイエンスが新たな収益の柱に

三田友梨佳キャスター:
マーケティングや消費者行動を研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
食生活の改善をアシストするデバイス、どうご覧になりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
減塩・減糖をサポートするだけではなく、化学療法患者や高齢者など、味覚が低下している方にも再び食事を楽しんでいただけるようになるかもしれません。

三田キャスター:
いまキリンはグループを挙げて健康をアシストする製品に力を入れているようですが、これについてはいかがですか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
これまでキリンの主力事業であったビール・スピリッツ類の市場環境はますます厳しくなることが予測されています。

そのような中で、持続的成長を目指すためにはポートフォリオ戦略。つまり新たな収益の柱となる事業を育てる必要があります。そこで、大きな成長が期待できる分野でこれまでキリンが培ってきた強みを生かせるヘルスサイエンス領域への注力を強めています。

三田キャスター:
キリンがもつ強みとは具体的にどういったことでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
キリンは、ビールの大敵である乳酸菌の研究を過去40年にわたって続けています。これは激戦が予想される健康関連市場でも勝ち残るための強みとなります。

例えば、キリンビバレッジが展開しているプラズマ乳酸菌を活用した製品が好調で、前の年と比べて66%増と大幅にのびています。

三田キャスター:
強みを生かしてさらなる成長を図るためにはどんなことが鍵となりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
人口の減少により国内市場が縮小する中で、海外展開が成長のために欠かせません。
ただ、飲料や食品の場合、その国の風土や歴史などが購買に大きな影響を与えるため、他国の製品が市場拡大を図るのはなかなか難しいです。

その点、万国共通の願いである健康をサポートする製品は、科学的なデータが訴求ポイントになるため日本企業にも大いにチャンスがあるのではないでしょうか。
1907年に創業したキリンによる次の100年に向けた新たなチャレンジに期待したいです。
 

(「Live News α」9月7日放送分)