伝統的な人事制度として、日本企業に定着してきた「年功序列」。NTTが、この「年功序列」をなくす方向に舵をきることが分かった。
NTTグループは2023年4月に、年功序列を廃した“新たな人事制度”を導入する方針だ。この新たな人事制度では、入社年次や在任期間にかかわらず、評価基準を満たせば、早期に昇格や昇級ができ、20代で管理職(課長級)への昇格も可能となる。
対象は、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモなど、主要会社の一般社員6万5000万人だ。
狙いは「社員の専門性を高めること」など
NTTがこのような人事制度を導入し、「脱・年功序列」へと舵をきる狙いは何なのだろうか? また、新たな人事制度で、管理職(課長級)に昇格するかどうかの評価基準はどのように定めているのか?
NTTの担当者に“狙い”と“評価基準”を聞いた。
――このような人事制度を導入する狙いは?
一般社員の専門性を高めること、能力の高い社員を適切に評価・登用すること、そして、これらを通じた新卒中途採用マーケットにおけるプレゼンス(=存在感)の向上などです。
――部署間の異動をあまり行わず、個人の専門性のスキルを上げる方向に舵をきるということ?
ジェネラリスト(=広範囲にわたる知識や経験を持つ人材のこと)ではなく、専門性を高める配置・異動へと転換していく考えです。
――NTTグループは「年功序列をやめる=脱年功序列を進める」ということ?
認識の通りです。
――現行の人事制度では入社してから管理職(課長級)に就くまでに、どのぐらいの勤務期間が必要?
詳細な最低在級年数は開示していません。10年以上とご理解ください。
――新たな人事制度では、入社してから管理職(課長級)に就くまでの勤務期間は、最短で何年となる?
これまで定めていた最低在級年数を撤廃する、見直し後の評価体系・昇格体系で評価していくというものですので、「最短で何年」などを申し上げることができません。こうした概念をなくすことが本質の施策です。
――20代で管理職(課長級)に就くことも可能になる?
「20代で管理職相当」は、理論上は可能でしょうが、当然、求められる水準は高くなります。個人個人の能力を見て、当該の水準を充足できていれば、の前提となります。
「専門性判定」「業績評価」「行動評価」で昇格が決定
――管理職(課長級)に昇格するかどうかの評価基準はどのように定めている?
新たに「専門性判定」の要素を新設し、「ITスペシャリスト」や「マーケティング」など“18の分野”の専門性の高さも評価基準に加えます。
この「専門性判定」、そして「業績評価」と「行動評価」という3つの要素により、昇給・昇格が決まる仕組みにします。
――「専門性判定」「業績評価」「行動評価」の評価基準は?
「専門性判定」は“専門性の発揮度”、「業績評価」は“設定した目標に対する達成度”、「行動評価」は“行動の発揮度”が評価基準になります。
――優秀でも、20歳代で管理職に就きたくないという従業員は、管理職への昇格を拒否できる?
これまでも同様ですが、個人が志向するキャリアパスにかんがみて、登用は検討していきます。
社員の専門性を高めることなどが狙いのNTTの新たな人事制度。NTTの決断をきっかけに、「脱・年功序列」の動きが広がっていくのか、注目していきたい。