私がお伝えしたいのは「トム・クルーズになりきる知事」です。

大ヒット中の映画、「トップガン マーヴェリック」をパロディ化した動画に出演するこの人、実はアメリカ・フロリダ州の現職知事なんです。

選挙キャンペーンのために作られた動画の中で、まるでトランプ前大統領のような「メディア批判」を大展開。

ポイントはこちら、「知事のあだ名は”ミニ・トランプ”次の大統領候補!?」注目です。

【注目ポイント・記者解説】

■トム・クルーズになりきって訴えるのは「メディア批判」

日本での興行収入が100億円を超える大ヒットとなった「トップガン マーヴェリック」。映画のトム・クルーズの役柄と似たジャケットを着用、サングラスをかけ、最後には戦闘機に乗りこみ、“トムになりきって”いるのは、フロリダ州のデサンティス知事(43歳・共和党)。

8月、知事の夫人がSNSに公開し、話題となったこのパロディ動画のタイトルは「トップ・ガブ」。「ガブ」とはGovernor(知事)の略なので、「トップ知事」という意味となる。“最高の知事”と自画自賛した動画は、デサンティス氏のこんなセリフで始まっている。

「きょうは、企業メディアとの戦い方について教える。
その1、相手が攻撃されない限り攻撃するな。しかし攻撃されたら徹底的に反撃せよ。
その2、戦いから決して逃げるな。
その3、彼ら(メディア)のシナリオを受け入れるな。」

これら“3原則”の決めゼリフの合間には、デサンティス氏が会見の場で、記者を“論破(したように見える)”実際の映像を織り交ぜている。
たとえば、「それはフェイクのシナリオだ!」と記者を指さし“一刀両断”。「フェイクニュースを垂れ流す大手メディアは敵だ!俺はそれに真っ向から戦う政治家だ」と言わんばかりだ。

…ん?このフレーズ、どこかで耳にしたことはないだろうか。

そう、トランプ前大統領だ。自らに批判的な、リベラル派の大手メディアを「フェイクニュース」と断じ、SNSでの発信を連発。真実は自らの発言のみであると訴え、熱狂的ともいえるトランプ・サポーターの支持を固めてきた。筆者も、2020年の大統領選でトランプ支持者らを取材したが、大手マスコミへの嫌悪感はトランプ氏によって植え付けられているという印象を受けた。

■トランプ氏の手法“踏襲”も、大統領選に向け、「微妙な距離感」

デサンティス氏は、トランプ氏の「マスコミを敵視するやり方」を踏襲していることなどから、「ミニ・トランプ」と呼ばれることもある。これ以外にも、反LGBTと捉えられかねない政策を推進したり、コロナ感染対策より経済再生を優先するなど、かなり“保守的”な政治家だ。

「トップガンのパロディ動画」は、11月に迎える知事選で再選を目指すデサンティス氏の選挙キャンペーン動画である。トランプ氏と同じ手法で、「マスコミにも負けない、力強い政治家」というイメージを定着させる狙いだろう。しかし、目指しているのは、知事としての再選だけではない、という見方が広がっている。それは、2年後に迫った大統領選挙である。

共和党支持者への世論調査で、「次の大統領候補は誰がいいと思いますか」と聞いたところ、首位のトランプ氏(51.2%)に次いで人気なのが、デサンティス知事(23.2%)だ。3位のペンス前副大統領(7.4%)を大きく引き離している(リアルクリアポリティクス調べ)。

実際に、フロリダ州以外からも資金集めを続けているため、「デサンティスが2024年の大統領選に出馬するか?」というのが米・政界の注目の一つとなっているのは間違いない。

しかし、トランプ氏と同じ手法をとっていると言うことは、支持層が同じ、ということでもある。一部メディアの評論家の中には、「トランプ氏が次期大統領選に出馬する場合、真っ向から勝負を挑むべきではない」という意見もある。

奇しくもフロリダ州にある邸宅、「マール・ア・ラーゴ」がFBIによる捜索を受け、共和党支持者の中で「捜索は行き過ぎている」との見方が広がったことから、トランプ氏への支持がさらに強固になったという報道もある。

デサンティス氏が次の大統領に“勝負”を挑むのかーすべては、トランプ氏の出方次第であり、現在2人は「微妙な距離感」になっている様にも見える。いずれにせよ、若き“ミニ・トランプ”、今後も注目である。

(国際取材部 ニューヨーク支局 中川真理子)

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