8月ももうすぐ終わるが、今夏は厳しい暑さが続いた。

連日のように猛暑日を記録するなどしたことから、熱中症で体調を崩した人もいるかもしれない。そんな中で近年、熱中症対策として注目されているのが、「日傘」だ。体に日光が当たるのを防ぐことができ、女性だけでなく男性でも愛用する姿を街中で見かけるようになった。

たしかに暑さを和らげているようだが、実際、日傘は熱中症予防としてどれほどの効果があるのだろうか。

遮光加工された日傘で体感温度が平均で3.7℃低下も

また、暑さが和らいできたこれからも使った方がいいのだろうか?日傘の効果の実証研究を行った大同大学工学部建築学科の渡邊慎一教授に話を聞いた。


――熱中症対策として日傘に注目した理由は?

建築環境の研究者として「屋外環境の熱」について研究していく中で、熱中症に注目しました。屋外で暑さを緩和するには、日射をどれだけ遮るかが重要になります。どのようにして身体に当たる日射を遮るのか、つまり、どのようにして日陰を作るのかを考えた中で、手軽に持ち運べる日傘に着目しました。


――実際にどれくらい効果があるの?

実証実験では、二つの指標を用いました。一つが「UTCI(Universal Thermal Climate Index)」です。気温や湿度、風速などの温熱6要素を測定し、計算によって求めた体感温度(単位:℃)です。そして、もう一つが「WBGT(Web-Bulb Globe Temperature)」です。こちらは環境省が「暑さ指数」と呼んでいるもので、熱中症の危険度評価によく使われています。

実験では、特別な加工がされていない無加工の日傘に加え、一般的なポリウレタン・ラミネート加工(強度のある遮光フィルムが熱融着)を施した日傘などの白色と黒色を使用。日射の遮蔽率では、このポリウレタン・ラミネート加工された日傘が黒白ともに99%以上の日射を遮りました。一方、無加工の白い日傘では半分ほどの日射を通していました。

この中で一番暑さを緩和する効果があったのがこのポリウレタン・ラミネート加工された日傘の白で、UTCI(体感温度)が平均で3.7℃低下しました。なお、黒より白い日傘の方が効果が大きかったのは、黒い日傘は白よりも日射を多く吸収して日傘生地の温度が上がり、その温度に応じて熱放射がたくさん放出されたためです。

(画像はイメージ)
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――WBGTではどのような結果が出た?

こちらは普通の日傘の白黒と、ポリウレタン・ラミネート加工された茶色の日傘で実験しました。結果として、ポリウレタン・ラミネート加工された日傘の直下(頭の位置)で、WBGTが最大で2.9℃、平均で1.8℃低下しました。WBGTによる熱中症の危険度は3℃刻みで上下しますので、この結果は日傘を使うことで熱中症の危険度を一定程度下げる効果があると考えています。


――これからは暑さが和らいでくるが、秋でも日傘はやはり大事?

はい。例えば、環境省の熱中症予防情報サイトでは、10月までの全国の熱中症リスクカレンダーを公開しています。過去5年間の各地のWBGTの最大値を示しているのですが、9月になるともちろん値は下がってはきますが、それでも熱中症「厳重警戒」となる日があります。厳しい残暑となることもありますので、熱中症の危険性はまだあります。暑い日にはぜひ日傘を使ってほしいです。

9月も「暑さ指数」が「厳重警戒」「危険」となる可能性がある。(出典:熱中症予防情報サイト)
9月も「暑さ指数」が「厳重警戒」「危険」となる可能性がある。(出典:熱中症予防情報サイト)

――ちなみに、子どもも日傘を活用するべき?

まさしく今取り組んでいるテーマです。大人と子どもでは身長が違いますので、頭の位置の地上からの高さが異なります。一般に地面に近いほど温度は高くなると言われていますので、より地面に近い子どもの方が暑く感じていると思います。

その状況で日傘を使った場合にどれくらい暑さを緩和する効果があるのか、この夏に実験し、いま分析をしているところです。子ども用の日傘はまだそれほど普及していませんので雨傘が代用されることも多いです。雨傘が日傘の代わりになるのかを調べたところ、黒色の雨傘では日射遮蔽率が約95%、WBGTは平均で-1.2℃で、一定の効果はあるようです。
 

「服装とのコーディネートなど自由な視点でお選びください」

科学的にも日傘が熱中症予防につながることは分かった。そうなると、日傘の選び方や適切な使い方も知りたい。日本洋傘振興協議会の担当者にも話を聞いた。


――近年、日傘の販売数は伸びているの?

「日傘男子」も増えています。「暑さから身を守る」が重要視されているのではないでしょうか。販売数は把握しておりませんが、百貨店や小売店、専門店などいずれも男性用の日傘をラインナップしているようですので売れていると想像します。

日傘男子も増えている(画像はイメージ)
日傘男子も増えている(画像はイメージ)

――日傘の選び方にポイントはある?

日傘として作られている傘においては(生地が加工されておりますので)色による効果の違いは気にしなくて大丈夫です。いまは多種多様な日傘がありますので、色、デザイン、素材などご自身のお好みや服装とのコーディネートなど自由な視点でお選びください。

より機能性を重視する方には遮光、遮熱といった機能を備えた日傘もあります。通勤や移動といった仕事時間に使うことが多いか、買物やプライベートのお出かけ時の利用が多いか、利用目的や利用シーンに応じて色、柄、素材あるいは長傘タイプか折りたたみタイプにするかなど考えるのも楽しいです。


 ――日傘をさす際の注意点や正しい使い方を教えて。

基本的には雨傘と同じです。雨傘の場合には歩くときや風を伴う雨の場合など、濡れないように傘を傾ける方向などに気を使いますが、日傘は雨に濡れる心配はありません。頭上に真っ直ぐにもって周囲の様子にしっかりと注意がいくような高さでさすと颯爽と、かつ涼しげな姿に見えます。

「日傘は一年を通じてお使いいただけます」

――これから秋になっても、日傘を活用することはやはりオススメ?

日傘は一年を通じてお使いいただけます。秋(あるいは春)といえども手放せません。「熱中症」を特に警戒する時期は真夏を中心にその前後の期間だと思いますが、「紫外線」は日中常に降り注いでいます。直射日光を遮るという目的で日傘を利用する方は結構います。天候やご自身の体調などに合わせて利用されるとよいと思います。


――ちなみに熱中症予防として、帽子との違いは?

基本的に構造が違います。帽子は直接身に着ける(頭にかぶる)ようにできていて、傘は手にもって使用します。大きさも異なりますので、日ざしを遮る(影をつくる)範囲が異なります。通常は帽子よりも傘の方が影の範囲は広くなります。

(画像はイメージ)
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8月初旬に比べると暑さは収まったかもしれないが、まだまだ厳しい暑さとなる日もあるかもしれない。熱中症予防のためにも、出かける際には「日傘」などをうまく活用してほしい。