リブが島根・隠岐の島町で保護され、自然の海に帰るまでを描いた絵本が完成した。子どもたちに、リブのエピソードを通じて海の環境をめぐる問題にも関心を持ってほしいと、島根県内そして全国へ絵本を贈る取り組みも始まっている。
片足ウミガメ「リブ」の物語を絵本に
読み聞かせ:
「いたい いたいよう もうダメ動けない」リブはとうとう うちあげられてしまいました

6月下旬、隠岐の島町内の保育園で園児たちが夢中になっている絵本があった。
リブ:
手がない!

主人公は片足を失ったアカウミガメ。実際にモデルがいる。2020年8月、隠岐の島町の海岸で保護された瀕死のアカウミガメ。網に絡まり、右の前足は壊死、フンからはプラスチックごみが見つかった。

「何とか生きながらえてほしい」
片足を失ったウミガメは、そんな希望を込めて「リブ」と名付けられた。リハビリを経て、2021年の夏に自然の海に帰された。

リブが保護され、自然に帰るまでのストーリーを多くの人に知ってほしいと、リブの保護に携わった町民が中心となって、リブの絵本作りがスタート。クラウドファンディングで200万円の資金を調達し、2,000部を制作した。

読み聞かせ:
海に行った時、ゴミを見つけたら拾って、海の生き物たちを守ってください
園児:
はーい!
海に囲まれた隠岐の島町。子どもたちがリブの物語をきっかけに、海洋ごみの問題を身近に感じてほしいと、できあがった絵本は保育園や学校などに贈ることにした。

ウミガメリブ絵本製作実行委員会・安部由起代表:
みんなで読んでください
絵本づくりの中心メンバーの安部由起さん。
ウミガメリブ絵本製作実行委員会・安部由起代表:
すごい痛々しくて、人間を代表して謝りました

スキューバダイビングのインストラクターで、発見当時、リブを一時的に保護した。隠岐のきれいな海を守りたいと精力的に活動していて、この日も海岸での清掃活動に参加していた。

ウミガメリブ絵本製作実行委員会・安部由起代表:
ロープも網もプラスチックも、いっぱいあります

清掃活動を呼びかけた男性も、生き物が海のゴミで命の危険にさらされている現状に心を痛めていた。
清掃活動を主催・八幡正道さん:
こっちのカメは死んでいてかわいそうだった。こういうゴミをなくさないと、また同じことが何回もあって、カメの命も救われない

網に絡まった2頭のウミガメ。隠岐の島町内の海岸で見つかったときには、すでに死んでいた。
海のゴミのせいで、足を失うだけでなく、死んでしまうウミガメもいる。悲劇を繰り返さないために、安部さんたちは町外にも絵本を贈る取り組みを始めている。

絵本が環境問題を考えるきっかけに
児童からの手紙の内容:
海にはこんなにゴミがあるのを知って、海でゴミ拾いをしようと思いました

大田市の大田小学校の児童から届いた手紙。絵本を読んだ子どもたちの決意が書かれていた。
児童からの手紙の内容:
私たちのせいで リブや生き物たちが成長しなくなるということがわかって もっと海を大切にしようと思いました

リブの絵本は、これまでに島根県内の保育園や小学校など約140か所に届けられ、今後は全国の公立図書館などにも贈られる予定。
ウミガメリブ絵本製作実行委員会・安部由起代表:
子どもたちがゴミを拾おうという気持ちがたくさんあるので、そのままの優しい気持ちでいてもらいたい

リブ:
そうだ 海はこんなに広かったんだ。クラゲたちも泳ぐの気持ちよさそう

自然に帰ったリブ。
絵本のメッセージ:
リブの手がおしえてくれた リブの手がつなげてくれた この手でこれからなにしよう

海の生き物たちの命を脅かす海洋ゴミは、広い海に今も漂い続けている。
(TSKさんいん中央テレビ)