医療的ケアが日常的に必要な“医療的ケア児”とその家族を支える「訪問看護」について特集する。日常的に子どもの訪問診療を行う「小児在宅医」に加え、「訪問看護」も在宅支援の重要な受け皿となっている。
子供に特化した「訪問看護ステーション」の立ち上げを目指す、女性看護師に密着した。

子供に特化した訪問看護ステーションを

佐藤彩那さん:
こんにちは、よろしくお願い致します

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佐藤彩那さん(34)は、6歳と4歳、2歳の子供を育てるお母さんだ。出産前は東北大学病院の新生児集中治療室「NICU」で5年間、看護師として働いてきた

佐藤彩那さん:
子供や赤ちゃんはものすごいパワーを秘めていて、奇跡的に驚異的な回復を遂げるシーンをたくさん見てきたので、私自身も常に希望を持ってケアに当たることができ、すごく魅力的でした

育児に専念するため病院を退職したが、今、子供に特化した「訪問看護ステーション」を立ち上げようと準備を進めている。病院ではなく訪問看護を目指したのは、3人の子供の存在が大きかったという。

佐藤彩那さん:
子供を産む前は医療者としての自分しかなかったので、病院にいた方が安心だと思っていたし、命をつなぐことが何より大事だと思っていた。
でも子供を産んで振り返ると、どうしたら家に帰れるかに思考が切り替わった。子供って本当にママのことが好き。子供にとっての幸せって何と思ったときに、大好きな家族と一緒にいることが幸せだと、子供を産んで改めてわかったので、大好きな家族とずっと一緒にいるという選択肢を増やしてあげたいと思った

2022年9月からの事業開始を目指し、現在は大学病院時代の同僚と、担当患者の調整や申請書類の作成に取り組んでいる。

佐藤彩那さん:
医療的な知識がある私たちでも、在宅(看護)となると、どの制度、法律なのかかなりバラバラで、全然つながっていないことを実感している。私たちが情報を家族に提供したり、一括したケアをしたりできればいいと思っている

訪問診療の現場を学ぶ…「家族と暮らしを楽しむ権利を守ってあげたい」

訪問看護ステーションの立ち上げを控えた佐藤さん。この日は宮城県内で唯一、小児専門の訪問医療を行う「あおぞら診療所ほっこり仙台」へ研修を受けに行った。

小児在宅医・田中総一郎院長に同行し、訪問診療の現場を学ぶ。

佐藤彩那さん:
起きた~!おはようございます。しょうちゃんおはよう。きょうお邪魔してましたよ。佐藤です

この日、診療したのは村上翔希くん(4)。薬の服用では完全に症状を抑制できない「難治性てんかん」を患っている。
肺出血による呼吸困難を防ぐため、気管を切開し、寝るときは人工呼吸器を着用。けいれんの刺激から肺出血を起こしやすく、通院自体が大きなリスクとなるため、2021年9月から田中医師の診療を受けている。

翔希くんのお母さんも、家で過ごすメリットを感じていた。

母・村上道子さん:
入院の時は緊張したりして、状態が今より少し悪くなることもあるが、家に帰ると雰囲気や匂いがあるのか、ある程度落ち着いてくれる

あおぞら診療所 ほっこり仙台・田中総一郎 院長:
一番過ごしやすいところですよね。おうちって

病院勤務で多くの医療的ケア児を見てきた佐藤さんだが、訪問診療の現場では新たに気づかされることが多かったようだ。

佐藤彩那さん:
病院では治すために頑張り続ける印象が強かったが、家では暮らしを楽しむ、生きるを楽しむことをすごく感じた

研修を受け入れた田中医師も、宮城県内にはまだ小児の訪問看護師が少ないとして、佐藤さんの活躍に期待を寄せている。

あおぞら診療所 ほっこり仙台・田中総一郎 院長:
医療者って、病院にいるとホームだが、家に行くとアウェーな状態になる。佐藤さんら看護師は、すごく患者に寄り添うことが上手な職種。そういう人たちが、アウェーな状態でも支えることができるので、すごく心強いと思う

厚生労働省の推計で、医療的ケア児は全国に約1万9000人いるとみられている。

佐藤彩那さん:
どんな障がいがあっても病気があっても、家で過ごして、家族と一緒に暮らしを楽しむ権利は守ってあげたい。私たちができることがあればなんでも力になりたい

子供たちや家族が望む日常を届けるために。佐藤さんの訪問看護ステーションは2022年9月1日にオープンする予定。

(仙台放送)

仙台放送
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