鳥取県沿岸の日本海では、6月以降、海岸や港などの浅瀬でサメやマグロの目撃情報が相次いで寄せられている。珍客が次々訪れるこの夏の異変、その背景を探る。

「追突されそうなほど、勢いよく泳いでいた」

東海大学海洋学部 堀江琢准教授:
異変の前兆の可能性もあるかもしれないし、大きい個体の魚が岸の近くに居座るようになるという変化はあるかもしれない

体長は1メートルを超えると見られる、浅瀬に忍び寄る黒い影…。サーフィンをする人のすぐそばを勢いよく通り過ぎていく。

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撮影した人:
追突されそうな勢いで来るなぁ…

マグロを目撃した今井隼人さん:
朝、海に来てみたら、2メートルちょいくらいの大きいマグロが現れました。めちゃめちゃ勢いよく泳いでましたけどね

その正体はクロマグロ。6月29日、鳥取市青谷町の海水浴場で目撃された。

マグロを目撃した今井隼人さん:
沿岸に大きいマグロ、初めて見たのでびっくりしました

沿岸でのマグロの目撃情報は別の日にも。6月19日には岩美町の田後沖で、さらに7月5日には鳥取市青谷町の夏泊漁港のいずれも浅瀬で目撃された。

マグロを目撃した今井隼人さん:
27年間、海に毎日通っていますが、イルカは見たことあるけどマグロは初めてでしたね。僕は1年中ずっとサーフィンしてるので、水温の変化など、かつてと海の環境はかなり変わってきていると思う

そして、この夏の”珍客”は他にも…。7月17日、鳥取市の白兎海岸の沖合200メートル付近で目撃されたのは、体長2メートル近いシュモクザメ。

サーファー:
え、ここで?海で遊んでるんでちょっと怖いですね。俺はここでは見たことないね

人を襲うことは少ないというシュモクザメ。県によると、県内の海水浴場では近年、毎年のように目撃情報が寄せられている。

漁獲制限でマグロが増加 イワシ豊漁も影響か

こうした異変の背景には何があるのか。サメなどの海洋生物に詳しい専門家に聞いた。

東海大学海洋学部 堀江琢准教授:
マグロに関しては最近、漁獲規制が入っていますので、個体数が増えてきている傾向がみられる。増えてきて、沿岸域にエサを取りに来たマグロがはぐれて入ってきたのではないか

水産庁によると、乱獲などによりマグロの資源量は90年代から徐々に減少。2010年には過去最も少ない9761トンにまで落ち込んだ。しかしその後、各国が漁獲制限など資源管理を行ったことで、2020年には6万5464トンまで回復している。

さらに堀江准教授は2022年ならではの要因を指摘した。

東海大学海洋学部 堀江琢准教授:
イワシの群れが逃げてきて、沿岸に寄ってくることもあります。そういったことが関わっているのではないか

サメやマグロのエサとなるイワシとの関連。鳥取県内では2022年、マイワシが大漁。県によると6月時点での漁獲量は3万3381トン。半年間ですでに2021年の年間漁獲量に迫る豊漁だ。

マイワシは数年周期で豊漁と不漁を繰り返すといわれているが、2022年は増加傾向にある最近10年ほどを見ても群を抜く多さ。しかも、そのイワシが多く生息しているのが浅瀬だという。

東海大学海洋学部 堀江琢准教授:
植物プランクトンの栄養が陸から流れてきて、そこから植物プランクトンが繁茂し、それをプランクトンが食べて、それ目がけて小魚がくる。だから沿岸域はいろんな生き物が多くて、沖合は少ない。イワシがエサとしてプランクトンを食べに寄ってきたりもするので、それを目指してサメやマグロが来てしまうことはあります

浅瀬で個体数が増えたイワシを求めて、サメやマグロが沿岸近くまで迷い込み”珍客”の出現につながったと推測した。海水浴など海辺でのレジャーの機会が増えるこの時期、サメなどに出会った場合、どうすればよいのだろうか。

東海大学海洋学部 堀江琢准教授:
刺激を与えず、ゆっくりと陸に上がるのが一番ですが、実際に海で見かけるとパニック状態になると思いますので、様子を見ながら陸に行くことを心がけてください

相次ぐ珍客の出現、それは海の環境の変化を示すひとつのバロメーターといえそうだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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