熱戦が繰り広げられている夏の高校野球。甲子園は球児たちにとって夢の舞台だが、選手たちと同じく甲子園を夢見ている生徒たちがいる。スタンドから声援を送る吹奏楽部だ。
コロナ禍のため、2年間 応援が禁止されていた愛知県代表「愛工大名電高校」の吹奏楽部に密着した。

海外公演も経験の名門吹奏楽部 3年ぶりに高校野球のスタンド応援へ

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7月5日。音楽室に集まってくる生徒たち。ついたてをたてて、フェイスシールドをして…

吹奏楽部の女子部員:
大きな声でカウント言って、しっかり体で覚えて、大きな声を出すことを重視してやって下さい

部員全員:
はい!

彼らは、名門愛工大名電高校の「吹奏楽部」だ。

吹奏楽部の女子部員:
先輩は、間違えたり気になる事があったら、その場ですぐに言ってあげてください

部員全員:
はい!

部員は総勢194人。海外でも公演するなど、実力は折り紙付きだ。

吹奏楽部の顧問を務める、伊藤宏樹(いとう・ひろき)先生。

伊藤宏樹先生:
ちょっとさぁ、立ってやったほうがいいんじゃないの?立ったままスタンディングで。さてなぜでしょう?

男子部員:
野球応援のシーズンだからです

伊藤宏樹先生:
やっぱり甲子園ってすごいよ。アルプススタンドでね、自分たちの音がブワーって広がっていくこの感覚はね、経験した人しか分からない。(選手たちは)自分がバッターボックスに立っているときに、(応援の音楽が)めっちゃ聞こえるらしい、甲子園でも。あんなにバット持ってて、奮えてくる事はないって言ってるよ。彼らはすごい感謝してるんだよね

応援もコンクールも中止の2年間…最後の夏こそ夢の舞台へ

吹奏楽部の“夢”のひとつ。それは、甲子園のアルプススタンドでの応援。
しかし、ここ3年は彼らは“コロナ禍”の影響を受けてきた。

2020年、夏の甲子園が「中止」。2021年、愛知大会は開かれたものの、スタンドの応援は「禁止」。出場した夏の甲子園こそ、アルプススタンドでブラスバンドによる応援が認められたものの人数制限があり、甲子園にいったのは当時3年生が中心。
今の在校生のほとんどは、高校野球の応援をしたことがない。

3年生のフルート担当の水谷有羽(みずたに・ゆう)さん。パート練習で後輩たちに指導するなど、リーダー的存在だ。

水谷有羽さん:
(音を)切るタイミングと、出るタイミングあわせてほしい

水谷さんが入部したのは、2年前のコロナが流行し始めた2020年。他の部員と合奏もできず、先輩とも距離をあけての練習に。

コンクールも軒並み中止、活躍の舞台が失われていた。

水谷有羽さん:
やりたいことがやれなかったり、1年生の頃はしっかりと部活動がはじまったのが2学期の後半あたりだったので、1年生の大きな思い出があまりないような感じなので…

2022年の夏こそ、あの夢の甲子園の舞台へ。

水谷有羽さん:
(応援に)行けると信じているんですけど、昨年(2021年)は人数制限がコロナの影響であったため、木管のフルートは2年生はくじ引きになってしまって、外れてしまったのですごく悔しくて。今回は絶対に行きたいなって思っています

ところが…

コロナ禍に翻弄…遠い高校野球のスタンド「見に行って叫びたい」

愛知大会での応援を4日後に控えた7月20日。チアリーディング部との合同で練習が行われた。

しかしこの日、水谷さんの姿はなかった。実は家族が発熱し、自宅待機となっていた。

さらに、初めてのスタンド応援となる予定だった7月24日の5回戦は、別の1年生の部員がコロナに感染し、応援自体が「中止」。準々決勝、準決勝も、部員がコロナに感染し、スタンド応援が「中止」となった。

3年ぶりに再開されたはずが、遠い「高校野球のスタンド」。水谷さんは以前、応援への想いを語っていた。

水谷有羽さん:
自分が初心者で高校から始めたので、誰よりも吹けなくて、迷惑だからやめようと思っていたのですが、宏樹先生にここで言われたのが、「音楽」がただ「音楽」じゃなくて、深いところまで教えてもらって、それに自分はすごく感動して…。(野球の試合を)見に行って叫びたいですね、心一杯

伊藤宏樹先生:
最終的に音楽というのは、相手に伝えるものじゃないですか。それは野球の応援でもそうですよね。形ばかりきれいで応援するものじゃなくて、「いけー!」「頑張れー!」っていう意思が伝わっていかなければいけないので

名電ブラスバンドが戻ってきた決勝戦…3年間の思いを一気に解放

そしてついに、7月30日の愛知大会の決勝戦。3年ぶりに名電のブラスバンドが戻ってきた。そこには、汗を流しながら応援する水谷さんの姿もあった。

水谷有羽さん:
違う景色で仲間と楽しみながら応戦するって、今まで感じたことのないような感情になったので

試合は接戦。強豪・東邦高校を相手に先制はしたものの、3回の裏に逆転を許した。
水谷さんはm、4回からブラスバンドを指揮。

その後、互いに譲らないゲーム展開が続き、同点のまま迎えた8回。ライトへタイムリーを放ち、勝ち越しに成功。

水谷有羽さん:
言葉に表せないくらい、周りで「やったね、やったね」って

吹奏楽部の想いのこもった応援が勝利を後押しし、2年連続の夏の甲子園の切符を掴んだ。

水谷有羽さん:
吹奏楽部としての応援はやっぱり初めてで、昨年度(2021年)自宅で応援することになって、仲間と一緒に応援することができなかったので、今までたまっていた分、「ばぁー」っと今日解放されて。仲間と応援できるって、こういうことなんだなって感じました。
甲子園のアルプススタンドに行けることが、すごく楽しみです。スポーツって、なんかすごいですよね。ちゃんと仲間に思いをとどけられたんじゃないかなって思います

愛工大名電は準々決勝まで進んだ。8月18日木曜日、第1試合で仙台育英と対戦する。

(東海テレビ)

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