プロバスケットボール選手が扱い慣れたボールをカードに変えてSDGsを学ぶワケとは。

2030年までの道のりを体験

東京・府中市のスポーツ施設「トヨタ府中スポーツセンター」のバスケットコート。ここに選手たちが集まり、練習が始まるのかと思いきや、なぜかお行儀よく着席。

始まったのは、持続可能な社会を目指す世界共通の目標「SDGs」の勉強会だった。しかも、カードゲームで学ぼうというのだ。

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挑戦しているのは、プロバスケットボールBリーグ、アルバルク東京の選手やスタッフたち。

普段は試合で闘志あふれるプレーを見せているが、昨シーズンからより良い未来に向けて貢献できる社会的な活動「ALVARK Will」をはじめ、コートの外でもチーム一丸となって取り組んでいる。

ところで、なぜカードゲームなのだろうか。

アルバルク東京 SRグループ・髙島里美さん:
SDGsというワードだけ先行してしまって、実際どんなことというのがなかなか理解が追いつかなかったり、座学、お勉強チックに学ぶよりも、体験することで学べる方がいいなと。

ゲームは、SDGsの17の目標を達成するために、現在から2030年までの道のりを体験するもの。少人数のチームに分かれ、与えられたお金と時間を使ってプロジェクトを進行する。

世界をどう良くするかを考える

どのプロジェクトを進めるかは自由だが、その内容は全チームを含む世界の状況に反映され、経済や環境、社会などが刻々と変化していく。

全員悪戦苦闘して進めるが、途中経過を見ると、経済だけが極端に発展して、環境と社会は全く発展せず。

そこで、今度はほかのチームとも知恵を出し合い、カードの交換などをしながら世界をどう良くするかを考える。

およそ25分、ゲームを終え、出来上がった2030年の社会は目標達成率95%と、まずまずの結果のようだった。

アルバルク東京・田中大貴選手:
実際に自分たちがカードゲームを使ってやることによって楽しく学べるというか、クラブとしても個人としても発信できる状況があると思うので、みんなでより良い社会をつくっていけたらなと思う。

疑似体験で社会問題解決へ

三田友梨佳キャスター:
消費者行動やマーケティングなどを研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。今回の試み、どうご覧になりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ゲームの要素を取り入れ、楽しく学ぶことを 「ゲーミフィケーション」といいます。
その最大のメリットは、「やった方が良い取り組み」を 「やりたい取り組み」に変えることができることです。

SDGsは大切だとわかっていても、つい後回しにされがちです。
また、いざSDGsをしなければと思っても、何から始めれば良いのかがわからないことも多いです。

そこで楽しいゲームを通して地球への優しい取り組みを疑似体験をすることで、実際の行動にも移してもらいやすくなります。

三田キャスター:
確かに、何かを始めるきっかけが楽しいものであるとずっと続けることが出来ますよね。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ゲーミフィケーションは、ウォルマートの配送業者の安全訓練やロレアルの新卒大学生向けに開発されたオンラインゲームなど、企業研修にも活用されています。 
さらには私たち消費者が受けている企業サービスにもゲーミフィケーションを応用したものは多いです。

三田キャスター:
ビジネスではどのように活用されているのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ロールプレイングゲームでは自分の実力や到達すべきゴールがきちっと数字で可視化されています。 これをビジネスで活用すると、例えば、買い物でポイントを貯めると 「いいことがある」と設定されていると、ポイントを貯めるのが楽しくなり、買い物を続けてもらうモチベーションを高めるなど、顧客を囲い込むマーケティングでも活用されています。

三田キャスター:
ビジネスでの活用もそうですが、SDGsへの取り組みもゲームのように楽しいから始める、喜んで続けられる、そんな風になるといいですよね。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ゲーミフィケーションには行動経済学や心理学の知見が活かされていて、社会問題の解決の手法としても注目を集めています。
その肝は、ゲームをする時のように夢中になり、没頭していたらいつの間にか社会を変える力になっていることです。

カードゲームで疑似体験した楽しさを実装する参加者が広がり、SDGsの取り組みが広がって社会問題が解決に導かれることに期待したいです。

三田キャスター:
SDGsの目標がそれぞれ自分の生活とどう直結しているのか、どんな行動をしていけば良いのかを楽しみながら理解を深めるこうした試みは、大人も子供も学ぶことが多くありそうです。

(「Live News α」8月9日放送分)