常夏の国タイでは、まさに真夏の気候が1年中続く。1年間の平均気温は29℃と高温多湿で蒸し暑い。最高気温は、最も低い11月から1月でも平均で32度、タイの夏にあたる4、5月は、平均で35℃と厳しい暑さだ。

さらに、スウェーデンの研究機関によると、この50年ほどでタイの平均気温は0.95℃上昇していて、世界の気温上昇の平均0.69℃と比べても高くなるなど、気候変動の影響も受け、暑い夏がさらに暑くなりつつある。

陽炎が揺れるバンコク市内の道路
陽炎が揺れるバンコク市内の道路
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辛い料理で爽快感、水辺での”納涼”

タイではどう暑さをしのぐのか。まず大切なのが食事だ。

タイといえば、グリーンカレーやトムヤムクンなど辛い料理が有名だが、唐辛子がたっぷりと入った料理を食べると頭や額から汗が噴き出してくる。しかし、汗が引くと不思議と爽快感を感じすっきりとした気分になる。

タイ料理の多くは唐辛子が使われていて、食べ終わると汗をかいて体温を下げることができる。また、唐辛子は殺菌効果もあるので暑い気候の中で食物が傷むのを防いでくれる効果もあり、昔からの生活の知恵として、暑いタイだからこそ愛用されていることが分かる。

唐辛子がたっぷり入った「ボートヌードル」と呼ばれるタイの麺
唐辛子がたっぷり入った「ボートヌードル」と呼ばれるタイの麺

さらに、食事以外にも暑さをしのぐのに重要なのがロケーションだ。バンコクの中心部から数十分車で郊外に向かうと、水路に何隻もの船が浮かんでいるのを目にする。これらはすべて水辺のレストランとして使われていて、訪れた人たちは涼しい風が通り抜ける気持ちよさを感じながら食事を楽しむ。タイではこうした水辺での食事というのも人気なのだ。

川の上に浮かぶボートを利用したレストラン
川の上に浮かぶボートを利用したレストラン

そして、水辺でのレジャーで人気なのが「滝遊び」だ。バンコクから車で2時間ほど行った中部ナコーンナーヨック県の観光名所のサーリカー滝に行ってみると、多くの行楽客が、滝の前で記念撮影をしたり、食事や水遊びをしたりして楽しみ、なかには昼寝をしている人たちもいる。

タイでは、滝遊びは海水浴と同じくらい人気のレジャー
タイでは、滝遊びは海水浴と同じくらい人気のレジャー

涼しい場所でのんびりと過ごすのが人気のレジャーなのだ。さらに滝だけではなく、ダムの近くでも涼んだり泳いだりと、常夏で暮らすタイの人たちの涼しさへの並々ならぬ思いを感じる。

食事や昼寝をしながら、のんびり過ごす
食事や昼寝をしながら、のんびり過ごす

暑ければ無理はしない! 気候変動の影響は…

そして、もちろん生活の上でも様々な暑さ対策をしている。いくつか例を挙げてみる。

●1日に何度もシャワーを浴びる
水浴び感覚で1日に何度もシャワーを浴びて、体を冷やす感覚が根付いている。

●クーリングパウダー
体につけるメントール入りのパウダー。シャワー後につけるのが一般的だが、ひんやりと体を冷やすことができて昔から愛用されている。

●暑ければ無理はしない
暑さが厳しい時期の日中は可能な限り不要な外出は避けるのが一般的で、日が落ちた後に買い物や屋台へ食事に出かけることが多い。

こうした対策や元々暑さに体が慣れていることもあってか、熱中症の搬送者数は、集計の仕方に違いがあり一概には比較できないが、例えば2017年は、日本は4万7485人(6~8月)だったのに対して、タイは3409人(3~5月)といったように日本に比べると10分の1以下だ。

しかし日本と同様に、気候変動の影響で災害も増えてきている。

タイを含めた東南アジアは、気候変動の影響を最も受けやすい地域の1つといわれている。スイスのベルン大学の研究によれば、こうした気候変動分の熱さで、死者がすでに最大6割増えているとの結果も出ていて、今後さらに悪化することも危惧されている。

冠水したバンコク市内の市場(2021年11月撮影)
冠水したバンコク市内の市場(2021年11月撮影)

また、温暖化の影響なのか、2021年も大規模な洪水被害が頻発し、バンコクでも浸水被害が出た。さらに海面の上昇で今後40年から100年の間に、少なくとも沿岸部3200平方キロメートル、1100万人の住む地域が水没したり、高潮の被害に遭うなど、影響を受ける可能性があるといわれていて、タイ政府も温室効果ガスの削減や洪水や海面上昇対策など早急な対応が求められている。

暑さには慣れている常夏のタイだが、今後さらに暑くなるかもしれない気候へのさらなる対策が求められそうだ。

【執筆:FNNバンコク支局 池谷庸介】