食品ロスの削減に名店のシェフが腕をふるった。

"未利用魚"を活用

ほくほくの魚の揚げ物をはさんだハンバーガーや魚の身をたっぷり使ったトマトパスタ。
東京・原宿のフレンチレストラン「シンシアブルー」で調理されていたこれらの料理にはある特徴がある。

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使われていたのは解凍や加熱だけで簡単に魚料理を楽しめるミールパック。
名店シェフが監修し、一流の味が家庭で味わえる。

さらに27日にお披露目された6種類のミールパック全ての魚には、秘密があるという。

「シンシアブルー」吉原誠人シェフ:
タカノハダイやマトウダイという魚だったり、未利用魚と言われる、まずいからでなく規格外とか例えばサイズが不揃いで流通にのらないものを使っています。

未利用魚とは、「ふぞろい」や「鮮度が保てない」などが原因で従来ほとんど価値がつかなかった魚のこと。水揚げ全体の3割にのぼる。

スモークマリネは、スモークされた醤油の香ばしさと魚の身の甘さ、噛み応えも食感もしっかりしていて、かめばかむほどに魚の旨みが口の中に広がる。

持続可能な新たな水産業を実現

今回の商品は、未利用魚の活用にいち早く取り組んでいた福岡の企業「ベンナーズ」と名店シェフとのコラボ企画。

「ベンナーズ」では去年から「未利用魚」の下処理や味付けを行い、冷凍で届けることでおいしく簡単に消費してもらうサブスクリプションサービスを運営している。

代表をつとめる井口剛志さんは今回の取り組みを多様な食べ方の提案につなげていきたいと話す。

「ベンナーズ」井口剛志代表取締役社長:
我々のミッションの1つとしてあるのが、斬新な食べ方を提案し続けることもポイントで、魚を捕る漁師にとっても、食べる我々消費者にとっても、そしてそれら2つを包括する環境、及び社会にとっても良い。本当の意味で持続可能な新たな水産業をfishll(フィシュル)を通じて実現して行きたい。

9月までオンラインで先行販売する予定で、おいしく資源を活用する選択肢となりそうだ。

廃棄物は別のプレーヤーの原材料

小澤陽子キャスター:
一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
今回の試み、消費者行動などを研究されている鈴木さんの目にはどのように映りましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
現在のシステムでは、年間30~40%の食料が廃棄されていると推定されています。

循環型社会の観点からは、あるプレーヤーの廃棄物は別のプレーヤーの原材料となります。そのためフィシュルのような、廃棄されるはずの食品を売り手と買い手の双方向で結びつける課題解決型のプラットフォームビジネスは、今世界中で増えています。

小澤キャスター:
課題解決型のプラットフォームが増えているということですが、その中で勝ち残るためのカギは何でしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
持続可能な商品やサービスへのニーズは徐々に顕在化しています。
ここにしっかり焦点をあてることは大切です。

ただし、持続可能な商品やサービスが持続可能なビジネスになるかは、別の話になります。
あえてエシカルであることを掲げなくても購買欲求を喚起する魅力が備わっていなければ、 ビジネスとして持続することは難しくなってきます。

小澤キャスター:
確かに、地球に優しい商品が増えればと思う一方、それらがすべて消費者にとって欲しいモノであるかは、 また違うような気がしますよね。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
消費者は美味しいものが食べたいからお金を払うのであって、食品ロスの削減に協力できるならと積極的にお金を使おうという方は、そう多くはないはずです。

その点、今回の取り組みは、名店のシェフが監修した絶品の魚料理なので、純粋に料理として食べたいという欲求を消費者に抱かせるのも可能になります。
お魚の消費がかつてより減っているのは食生活の変化に加え、美味しい魚の選び方も料理の仕方もよく分からないという方が増えたためでもあります。

レストランで食べられるような魚料理を簡単に自宅のテーブルで味わうことができるのは、現代の日本人のニーズにも合っています。

持続可能な商品やサービスも差別化を図り、魅力的な価値を提案することで、LTV・顧客生涯価値と呼ばれる継続して商品を購入し続けてくれる顧客との良好な関係を築くことが可能になります。

小澤キャスター:
腕利きのシェフの技でこれまで廃棄されていたものを価値のあるものに変える。ビジネスの力でももっと地球に優しくなれるように感じました。

(「Live News α」7月27日放送分)