中学校の部活動が変わる。

スポーツ庁の有識者会議は、公立中学校の運動部活動の指導を学校の教師から、地域のスポーツクラブなどに委託するよう提言した。2023年度から3年かけて「休日」の部活動を段階的に委託する計画で、その後は「平日」の指導も移していく方針だ。

背景として、子どもの側からは少子化で生徒数が減り、学校単位ではチームが組めなくなっていること、教師の側からは超過勤務を減らして働き方改革を進める必要性があることが挙げられる。

長崎県内では長与町がほかの自治体に先駆けて、2023年4月、全運動部の休日の部活動を委託しようと取り組みを進めている。その現状を取材した。

14の部活動指導 来春までにスポーツクラブ委託へ

7月、長与第二中学校で行われたバスケットボールの「地域部活動」の練習。指導するのは学校の教師ではなく、外部コーチだ。

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そして6月からの週末は、長与二中だけではなく、町内のほかの中学校の生徒も一緒に練習している。

自分の中学の部員は少なくても、地域部活動に集まって大人数で練習したり、試合に出たりできる。これが長与町の「部活動の地域移行」だ。

高田中3年・門﨑都和さん:
今の高田中は部員が1人しかいないので、女子バスケットはもうなくなりました

門﨑さんが通う高田中学校の全校生徒の数は195人だ。

高田中3年・門﨑都和さん:
週末くらいしか練習する機会がないから、あんまり体力とかついていけてないけど、どんどん練習を頑張って、みんなについていけるよう頑張りたい

全校生徒195人の高田中 女子バスケ部員は1人だけ
全校生徒195人の高田中 女子バスケ部員は1人だけ

少子化で長崎県内の中学の運動部員は、2010年度の3万749人から2019年度の2万3398人へと減り、団体競技の人数をそろえづらくなってきている。

一方、土・日のどちらかに3時間程度練習している部活動は、依然として県内に900以上あり、担当教師への負担はかかり続けている。

長与町は町内の中学が3校というコンパクトさもあり、いち早く問題解決に取り組んできた。

2021年から、卓球部や陸上部、サッカー部の休日の指導を元々、町民を対象にスポーツ教室などを開いていた総合型スポーツクラブの「長与スポーツクラブ」に委託した。

3年後までという国の方針を待たず、2023年春までに、全ての運動部に加えて2つの文化部も含めた14の部活動を移行する目標を掲げ、6月に各競技の指導者への説明を終えた。

「勝利至上主義」とは一線を画すとしている。

会費は月3000円 運営経費を考えると…

チーフとして指導するのは、自営業の池本朋博さん(53)。

外部指導者・池本朋博さん:
最初にやらんといかんのは、今でいうジャブ、ステップ、昔はドッジングといったけど。ドリブルはこのままの状態で、体だけこうして…

部活動が教師の善意に頼って原則「無料」なのに対し、地域移行は指導者への「対価」を払うことが基本の考え方だ。

長与スポーツクラブでは月3000円の会費を集めているが、保護者はそこまでの負担感はないという。

保護者:
別に特に負担は感じてはいない。その分しっかり練習して教えていただけているので

保護者:
1万円とかになると、クラブチームに入るのは考えると思いますけど、適正な額だと思います

一方で外部指導者へのコーチ料や大会への参加費、消耗品の購入費、さらに地域部活動運営の事務経費をふまえると、月3000円では到底まかなえないと試算している。

長与スポーツクラブ・金﨑良一クラブマネジャー:
部活動が14競技あると、1000万近くの赤字が年度に出てくる。リスク管理としてはそのように思っています

保護者の負担を考えると、会費の値上げは現実的ではない。町外の企業は「企業版ふるさと納税」を募って、赤字を減らせないかと頭をひねっている。

クラブチーム化に懸念も 何よりも子どものため

長与町以外の自治体や競技団体は、受け皿作りを始めた段階だ。佐世保市の早岐中学校の教師で、県バレーボール協会の理事を務める中﨑さんも情報収集に苦労し、どう旗を振れば良いのかと悩みは尽きない。

早岐中学校 女子バレー部顧問・中﨑輝一さん:
礼儀面やあいさつ、部活動が担っていた役割がクラブチーム化になることで、ちゃんと保たれていくかどうか一番心配しているところ

人口減少が著しい離島は、クラブチーム化した方が競技を続けられると分析する一方、強さを追い求めるクラブが増えた場合に、取り残される子どもが出てこないかを危惧している。

早岐中学校 女子バレー部顧問・中﨑輝一さん:
クラブチーム化が進むことで部活動が廃部になったり、初めてバレーボールに興味を持ってやりたいという子が、頑張れるところがなくなったり…。そういうことがないよう協力していきたい

模索が続く、部活動の地域移行。先行事例の長与町では子どもたちに変化があった。

長与スポーツクラブ・金﨑良一クラブマネジャー:
やって良かった、率直に。子どもたちの表情とか、取り組む姿勢がとても良い。自分たちで自分の可能性を伸ばそうと、挑戦するような表情や行動が見えている。中学生は成長する時期だと思うが、成長できるフィールドがここにできたという点で大変うれしく思う

何よりも子どものため。ヒントはここにある。

保護者からは「情報がなくて不安」「これまでは中総体が目標だったけど、大会はどうなる?」との声も上がっている。国も自治体も競技団体も手探りの状態だが、制度改革のひずみで子どもたちが取り残されることがないようにすることが望まれる。

長崎県は「部活動のあり方検討委員会」を2022年10月から11月にかけて開催予定で、各自治体はここに向けて準備を進めていくことになる。

(テレビ長崎)