トヨタは、水素で発電するFCV・燃料電池車の商業用トラックを、共同開発すると発表した。

小型トラックにはFCVが有効

トヨタは19日、商業用小型トラックタイプのFCVを、いすゞ自動車、日野自動車など4社で共同開発すると発表した。

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スーパーやコンビニへの配送で使われる小型トラックは、短い時間で燃料を補給しなければならないため、充電に時間がかかる電気自動車ではなく、トヨタがこれまで開発してきたFCVが有効だと判断したという。

トヨタは開発したFCVトラックを使って、物流の効率化に向けた実証実験を2023年1月以降に東京都と福島県で始めるとしている。

水素エンジン普及への布石

三田友梨佳キャスター:
早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。
燃料電池を使った小型トラックの共同開発ということですが、長内さんはどうご覧になっていますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
今回の取り組みは脱炭素の切り札の1つとして、自動車での水素利用の選択肢をさらに広げていくと共に、開発中の水素エンジンのスムーズな普及への布石であると言えると思います。

自動車での水素の活用方法には2つあって、1つはトヨタが今レースを通じて開発を進めている水素エンジン。これは現在のガソリンエンジン車同様に、ガソリンの代わりに水素を燃やしてエンジンを駆動させる方式です。

もう1つが、今回のようなFCVといわれる燃料電池車で、水素を使って発電をして電気モーターを駆動させる、水素と電気のハイブリッドのような技術で、これはすでにトヨタのミライで実用化されています。

今回の取り組みは、2023年1月以降に市場に導入するというスピード感のあるもので、すでに実用化されているものを利用して「できるものからすぐにやっていこう」という、前向きな姿勢の表れでもあると思います。

三田キャスター:
今回は小型トラックを燃料電池で、ということですが、 そこにはどんな狙いがあるんでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
小型トラックを燃料電池で動かすということですが、電気自動車を充電するのに比べて、水素の充填はガソリン車同様に短時間で行えるのが特徴です。
トラックなどの商用車は、長時間走行してEVの長い充電時間のような、可動できない時間が長いと商売になりませんので、短時間で燃料補給が行えることも重要です。

一方で、小型トラックは重量も軽く、長距離を走る必要がないので、大容量バッテリーの搭載も不要で、トラックで燃料電池を採用するのであれば、小型からというのは理にかなっています。

三田キャスター:
今回の燃料電池車など今後さらに水素の利用を広めていくためにはどんなことが必要だとお考えですか。?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
豊田社長は常々「水素を作る・運ぶ・使う仲間を増やす」と言っています。
今回は燃料電池で動く小型トラックを開発して水素を使う仲間を増やすということですが、それを通じて水素のニーズを増やせば街中の水素ステーションを増やせるし、水素そのものを作る設備も整えられます。

脱炭素へ向けて世界中では電気自動車一色に考えられがちですが、必ずしも万能でないことが分かってきています。

燃料電池も水素エンジン車もまだまだ課題がありますが、日本の大きなCO2削減の技術として期待されるところだと思います。

(「Live News α」7月19日放送分)