神社仏閣などで今も多く見られる瓦屋根。その棟の端に陳座するのが、建物のシンボル的な存在でもある鬼瓦だ。専門に作る職人は「鬼師(おにし)」と呼ばれる。技術を追求し、手作りで仕上げる鬼瓦は、まさに芸術品だ。

石川県唯一の「鬼師」…後継者を探していると聞いて飛び込んだ世界

県内で唯一の鬼師・森山茂笑さん
県内で唯一の鬼師・森山茂笑さん
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全国的に鬼師の数は多くないとされるが、石川県も例外ではない。現在県内で活躍する鬼師はただ一人、小松市に住む森山茂笑(もりやま・しげしょう)さんだ。石川テレビの竹内章アナウンサーが訪ねた。

鬼瓦
鬼瓦

竹内章アナウンサー:
鬼瓦って、神社仏閣の屋根についてる瓦のことですか?

鬼師 森山茂笑さん:
ええ、屋根の棟の端についてる

工房で取材に答える森山さん(右)
工房で取材に答える森山さん(右)

竹内章アナウンサー:
壁に飾ってある鬼の面みたいな、あれも?

鬼面瓦
鬼面瓦

鬼師 森山茂笑さん:
あれは鬼の面と書いて鬼面瓦(きめんがわら)って言って代表的なものなんですけど、基本的に屋根の端につく瓦を全部、鬼瓦って総称して言います

火除けとして「水」を表す模様が多い
火除けとして「水」を表す模様が多い

竹内章アナウンサー:
鬼瓦は何のためにあるんですか?

鬼師 森山茂笑さん:
機能的には、雨が入るのを防ぐ。一般的には、魔除けの役割をしていると…。昔、一番怖いのは火事で、そのために水を表す「雲」とか「波」を表現する形が多いです。それが石川県とか、こちらの地方の主流ですね

水を表す「雲」や「波」の模様をした瓦
水を表す「雲」や「波」の模様をした瓦

そう話す森山さんの作業場には、雲や波を模した、まだ薄い茶色の瓦が並んでいる。乾燥中だという。

竹内章アナウンサー:
森山さんの作った鬼瓦は県内だと、どこにありますか?

師匠と共に仕事をしたという、小松市の安宅住吉神社
師匠と共に仕事をしたという、小松市の安宅住吉神社

鬼師 森山茂笑さん:
僕も把握しきれてないんですが、有名なところでいうと地元・小松市の安宅住吉神社ですね。師匠と一緒に仕事をした、僕にとって思い出深い場所です

作業中の鬼師・森山さん
作業中の鬼師・森山さん

竹内章アナウンサー:
鬼師の世界に入られたのは、いつ頃ですか?

鬼師 森山茂笑さん:
僕が27、8歳くらい…、もう20年前くらいですね

引退した師匠の大橋弘笑さんと共に(2015年撮影)
引退した師匠の大橋弘笑さんと共に(2015年撮影)

竹内章アナウンサー:
それまでは?

鬼師 森山茂笑さん:
大阪でパンを焼いていました。一回は都会に出たいなと思って…。地元に帰ってくるときに、何か土の仕事がしたいなと思っていて、たまたま師匠の大橋弘笑が後継者を探しているって聞いて、鬼瓦職人ってかっこよさそうだなと思って、この世界に飛びこみました

職人の技術が頼りの地道な作業が続く
職人の技術が頼りの地道な作業が続く

竹内章アナウンサー:
探していたっていうくらいですから、鬼師になる人は少ないってことですよね

鬼師 森山茂笑さん:
鬼師という職業があることすら、僕も知らなかったですからね。だからこそ、こういう仕事があるって広めて、知名度を上げなきゃいけないと思っています

鬼師の仕事は、すべて手作業
鬼師の仕事は、すべて手作業

竹内章アナウンサー:
瓦屋根の家自体が減ってきてますよね

鬼師 森山茂笑さん:
鬼師の仕事は、瓦があっての仕事。瓦の需要が減って、危機感は感じています。どうにかして、瓦にスポットを当てたいと思っています

瓦の需要減り危機感… “黒瓦”が息づく金沢で普及に向け始動

そう語る森山さん。普及に向け、色々とアイデアを巡らせている。

瓦の技術を使った「寄せ植え鉢」
瓦の技術を使った「寄せ植え鉢」

鬼師 森山茂笑さん:
鬼瓦を作る技術を使って、何かしらとコラボしていこうと。例えば、「寄せ植え鉢」とか…。

森山さんが、「寄せ植え鉢」を見せてくれた。黒い瓦が器になっている。黒が植えられた緑を引き立たせ、独特の趣がある。

寄せ植え鉢には、鬼瓦制作の技術が詰まっている
寄せ植え鉢には、鬼瓦制作の技術が詰まっている

鬼師 森山茂笑さん:
黒瓦です。玄関先とか、庭に置いてもらう。瓦の雰囲気がそのまま、家の中にあったらいいなと思って作りました。植木鉢なら、町に普通に溶け込んでくれると思いました。「あぁ、やっぱり金沢らしいな」とか、「金沢の特徴、文化として瓦があるな」って再認識してもらえたらいいなと思っています

新たな作品に活路を見出す森山さん
新たな作品に活路を見出す森山さん

竹内章アナウンサー:
我々は住んでいるから、当たり前の風景になって気づかないですけど、確かに金沢の町並みの美しさの一つに屋根瓦がありますよね

鬼師 森山茂笑さん:
そうだと思います。僕は

黒瓦の家並みが、金沢の景観の象徴ともいえる
黒瓦の家並みが、金沢の景観の象徴ともいえる

竹内章アナウンサー:
そうなると瓦は、金沢の文化の一つと言えますね

鬼師 森山茂笑さん:
瓦が好きだっていう人がもっと増えるように、精進していきたいと思っています

文化を守るためにも鬼師の仕事を広めたいと森山さん
文化を守るためにも鬼師の仕事を広めたいと森山さん

手作業で作る鬼瓦は芸術品、そして鬼師は、石川の街並みと文化を影で支える職人であるといえる。県内で唯一の鬼師・森山茂笑さんの挑戦に注目していきたい。

(石川テレビ)

石川テレビ
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