梅雨も明け、夏野菜がおいしい季節。今すぐ知って食べたくなる、そんな野菜のニューノーマルを調査した。

野菜の摂取量を測定できる「ベジチェック」

みなさんは、自分に野菜が足りているかをご存じだろうか?

カゴメが開発した「ベジチェック」。手のひらを数十秒間乗せるだけで、1日にどれぐらいの量の野菜を摂取しているか測定できる端末だ。

野菜を食べることで皮ふに蓄積していくベータカロテンやリコピンなどの色素を、LEDセンサーで読み取るという仕組みだ。(大阪では阪急うめだ本店の「カゴメグリーン」で体験可能)

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試しに「農家のおばあちゃんの影響で、今も野菜を食べる習慣がある」という竹上萌奈アナウンサーが測定してみると、250グラムという結果に。厚生労働省が推奨する1日の摂取量は350グラムなので、少し足りなかった。

厚生労働省の調査では、成人の平均摂取量は1日290グラムと、多くの人が「野菜不足」の状態だ。

うま味引き出すロースト野菜の弁当「心も体も整う」

“野菜の宝石箱”があると聞いて伺ったのが、大阪市福島区の「ハタイロキョウト」。「美しいものはおいしい」をコンセプトに、野菜をメインにしたお弁当が人気のお店だ。

ハタイロキョウト 畑マエ子代表:
コロナでおうち時間が増えたことによって、自分自身の健康や体の大切さに着目される方がすごく増えました。ただ「健康だから食べる」というよりは、「おいしいから食べられる野菜」として、すごく需要が高まっています

素材の良さを極限まで生かすため、たどり着いたのが「ロースト野菜」だった。1種類ずつ、それぞれに適した温度と時間で焼き上げることで、本来のうま味を引き出すことができるそう。

さっそく、吉原功兼アナウンサーが試食してみた。

吉原功兼アナウンサー:
シャキシャキ感が失われずに、油分でしっかりとうまみが凝縮されて、ジューシーに仕上がっています。お酒が進みますねえ

味だけでなく見た目も人気の理由だが、最初から“映え”を狙っていたわけではない。

ハタイロキョウト 畑マエ子代表:
艶とか見た目を重視して作ったというよりは、味にこだわって作った結果、美しいものに仕上がりました。直感的に、見た目がいいものを食べると自己肯定感もすごく上がりますし、心も体も整うのだと思います

鑑賞後は食べられる!SDGsなベジタブルアレンジメント

さらに“映える野菜”をもう一つご紹介。

箱に入った色とりどりの植物。フラワーアレンジメントのように見えるが、全て食べられる野菜でできている。

その名も「ベジタブルアレンジメント」といい、髪飾りにすることもできる。

作っているのは神戸市北区の農家、鈴木広史さん・彩さん夫妻。ホワイトパンプキン、バナナピーマン、茎を食べるレタスなどの珍しい野菜を中心に、年間400品種を栽培している。

「食べられる」と聞いて吉原アナが手にしたのは、甘い香りのする赤い花だ。

香りは甘く、ワサビのような味がする不思議な花

吉原功兼アナウンサー:
ん…感じたことのある味だぞ。ワサビだ! ワサビの風味がきました!

農家 鈴木広史さん:
「ナスタチウム」っていう花なんですけれども、ワサビのような味がする不思議なお花です

吉原功兼アナウンサー:
すごくいい香りが口に広がって…見た目と全然違う味わい

鈴木さん夫妻のこだわりは、商品の出来上がりを考えて“あえて小さく”育てること。

吉原功兼アナウンサー:
大きくしない野菜づくりというのは大変ですか?

農家 鈴木広史さん:
小さく作る=小さいうちに収穫するわけではなくて、実は普通の野菜と同じぐらいの期間生育しています。それでも、小さく保たせる、凝縮させるというところを見極めていくのは、やっぱりすごく難しくて。妻と一緒に試行錯誤しながらやっているところです

フラワーショップで働いていたことがあるという広史さん。色あざやかな野菜ブーケには、当時鍛えたアレンジ技術が生かされている。

形が良くなくて売れない野菜も、普段は取り除くようなブロッコリーの葉も、アレンジメントなら生かすことができるため、環境に優しいというメリットも。

吉原功兼アナウンサー:
お花だとそのまま枯れちゃいますけど、野菜だったら、食べてゴミが出ない。SDGsでもありますよね

農家 鈴木広史さん:
「野菜ってこういう楽しみ方もあるんだ」とか。野菜の新しい価値も生まれていくんじゃないかと

映えておいしくて、SDGsな野菜ブーケは、インターネットで購入することができる。

進む高糖度化 水量を90%カットした「霧のトマト」

話は変わって、大人にも子どもにも1番人気の野菜は「トマト」だと、ご存じだっただろうか?

実は今、そのトマトがニューノーマルな進化を遂げているのだ。

タキイ種苗 トマト育種担当 中山育治さん:
ブランディング=付加価値を付ける一つの方法として、栽培技術で「高糖度トマト」を作っていくという流れが今、結構あると思います

さまざまな野菜の品種開発を行っているタキイ種苗によると、トマトの“高糖度化”が進んでいるそう。

その最前線を調べるため、兵庫県西脇市にある「いけうち高嶋農場」へ。驚くと思いますよ、と言われた「霧のトマト」を試食してみた。

吉原功兼アナウンサー:
甘いとは聞いてますが、言ってもトマトですよね?…甘い! 甘い!! ちょっと酸味がきて、また甘い。ちょっとの酸味が甘さを引き立てています

甘さを表す糖度は8~10度。通常のトマトの2倍近い値だ。高い糖度のヒミツは、この装置の中にあった。

いけうち アグロ事業部 三野航司朗さん:
こちらを見ていただきたいんですが…

吉原功兼アナウンサー:
あれ、なんかモクモクしていますね。何ですか? これ

いけうち アグロ事業部 三野航司朗さん:
「セミドライフォグ」という非常に細かい霧です

セミドライフォグとはノズルメーカーの「いけうち」が開発した、水滴が直径100分の3ミリという非常に小さい霧のこと。養分を含んだ霧を根に直接吹き付ける栽培方法で、土は必要ない。

いけうち アグロ事業部 三野航司朗さん:
根っこからすると、霧で水を取るのは結構大変。この霧をキャッチしようと、根っこが非常に細かい目をどんどん増やした結果が、このような大量の根になります

細かい根が広がることで、霧状の養液を効率よく吸収できるようになる。さらに、与える水の量を最大90%もカットすることで適度なストレスがかかり、糖度と栄養価の高いトマトができるという仕組みだ。

土のいらない栽培法で農業に革命を 目指すは宇宙!

甘いトマトが作れる栽培技術。これだけでもすごい発明だが、「土がいらない」「少しの水で栽培できる」という強みは、食糧問題を解決するかもしれない。

実際に、アラブ首長国連邦のアブダビでは、砂漠にある農場で「霧のトマト」の栽培・出荷に成功している。この栽培技術は、トマトだけでなくキュウリや葉野菜などにも転用が可能だということだ。

また、宇宙開発のJAXAも目を付けていて、既に「いけうちと」の共同研究が進められている。月面での“宇宙農園”の実現も目指しているそうだ。

トマトを甘くおいしくするための“ミクロな技術”は、世界を変えるかもしれない“大きな一歩”になっていた。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月23日放送)

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