もっと活躍できる場を

東京・お台場にある大手飲料メーカー サントリーのオフィスで、パソコンを前に真剣な表情で話し合う人や、山積みの封筒を前に悪戦苦闘する人たち。

この記事の画像(13枚)

さらに一心不乱に何かを裁断する人も。働く姿はまさに真剣そのもの。

この一角は、知的障害がある人たちが集まって働く職場「サントリー・コラボレイティブセンター」。

サントリーは、2015年から知的障害がある人たちの採用を重点的に始め、現在33人がほかの社員たちと同じように働いている。

この部署で一緒に働いている平岡典子さん。平岡さんは2007年、初めて授かった子どもがダウン症だった。

サントリー コラボレイティブセンター・平岡典子課長:
第1子がダウン症ということで、障がいがあって生まれてきたので、私自身かなり当初はショックを受けたときもありましたけど、育ててきた上でやっぱり障がいということをポジティブに社会に伝えていきたいというところもあって

知的障がいのある人たちが今よりもっと活躍できるようになることは、企業にとっても社会にとっても意義のあること。

会社側へのそんな訴えがひとつのきっかけとなり、平岡さんは2016年からコラボレイティブセンターでの仕事に携わるようになった。

オフィスが明るい雰囲気に

朝はまず、出社している全員が集合しての朝礼。業務の注意点などを確認した後は、その日行う仕事の割り振りを全員で話し合って決めていく。

一般的には障がいを考慮して、ある程度決まった業務を定期的に行うケースが多いというが、サントリーではそれぞれの個性や可能性を重視して様々な仕事にチャレンジしているという。

他の社員の残業時間が大幅に減った他、社員同士のコミュニケーションが以前にも増してスムーズになるなど、有形無形の様々なメリットがあったという。

サントリー社員:
本当にオフィスの雰囲気が明るくなりました。挨拶もみんながハキハキ元気にするようになりましたし、そこが一番の変化だなと

コラボレイティブセンター・石井基博さん:
おはようございます!

元気なあいさつが自慢の石井基博さんは入社8年目。この部署のムードメーカーだ。

コラボレイティブセンター・石井基博さん:
最初はあんまりできなかったんですけど、ちょっと練習してうまくできるようになったと思いました。他の担当者から「ありがとう」っていう言葉がとても温かい気持ちになりました。

多くの人と交流し互いに刺激を受けながら成長する。そんな働き方が社員ひとりひとりを笑顔にし、企業がより飛躍するための大きな力になるのかもしれない。

コラボレイティブセンター・平岡典子課長:
どの拠点にも彼らが活躍している姿というのを作っていきたいと思いますし、それを社会にも発信して行く。そういったサントリーの活動を他の企業にも真似していただいて、この世界観を広げていけたらなと思っています

「自分もできる」成功体験で自信を

Live News αでは、1400人全員がリモートワークで働く会社、キャスター取締役CROの石倉秀明さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
誰もが輝けるオフィス、石倉さんの目にはどう映りましたか?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
僕たちの会社でも障がいのある方が働いていますが、リモートということもあって、直接本人と話して言われるまで気付きませんでした。苦手なことや得意なことは人それぞれ違い、それに合った仕事をするという当たり前のことを 一緒に働いていて改めて認識しました。去年3月から障がい者の法定雇用率が改正されて、民間企業は43.5人に1人は障がい者を雇用しなければならないことになりましたが、日本企業の多くは中小企業で、その平均は41名程度なので、ほとんどの会社では同じチームで様々な個性を持った障害者と一緒に働く機会がないという機会損失も大きいと思います

内田嶺衣奈キャスター:
様々な個性を持った方が一緒に働く、多様性のある職場を広げるにはどんなことが必要ですか?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
私自身も自閉スペクトラム症という発達障害の当事者で、その場の空気を読んだりすることが 出来ないのですが、リモートワークだとそれが不利にならないので、リモートで働けるだけでも可能性はすごく広がると感じます。それ以外にも、わたしたちの取引先で、障がい者の就労支援をしている会社があります。障がい者支援というとどうしても傷つかないようになどの配慮もあって、無難な仕事を淡々とやってもらうことも多いようなんですが、それによってその人達の可能性を勝手に奪ってるのではとの懸念をその会社は持っていて、この会社では障がいのある方もどんどん取引先との打ち合わせに参加したりさらには新規開拓などの営業もやっているようです

内田嶺衣奈キャスター:
多くのチャンスがしっかりあるということなんですね。確かに、誰だってまずはやってみないと、何が得意で、何が苦手なのかは分からないですよね?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
向き不向きもあるし、障がいの度合いは人によって違うので、無理はさせないけど、失敗してもいいので表舞台にどんどん立たせることで「自分もできる」 という成功体験の積み重ねで、自信になる人も多いみたいです。障がいがあるから人より苦手なことは多いけど、それ以上でも以下でもないとおっしゃっていたのが印象的で、そういった考え方で活動する人が増えると、個性を活かせる本当に多様性のある社会になっていくと感じます

内田嶺衣奈キャスター:
出来ないことではなく、出来ることに目を向ける。少し視点を変えるだけで見える世界は大きく変わるはずです。そして、それはあすからでも誰もがチャレンジできることだと思います

(「Live News α」7月7日放送より)