長引くコロナ禍の影響により、国内ではうつの症状を訴える人が、コロナ流行前と比べ2倍以上に増加している。なぜうつ症状が起きるのか、これまでそのメカニズムは正確にはわかっていなかったが、いま解明に向けた研究が進んでいる。その最前線を取材した。
コロナ禍で2倍に急増 うつの原因を脳波から探る
コロナ禍で迎える3度目の夏。マスクの着用など少しずつ制限が緩和されているが、街の人たちは…。
街の人:
付き合いが無くなりましたね。社交ダンスとか飲み会とか。友達に会えないとか、そういうストレスはある
街の人:
今は慣れちゃって普通の生活を送っていますが、当初はストレスが溜まって大変でした。ちょっと元気がないというか…そんな感じがした
そもそも「うつ病」とは、気分が落ち込んでいるなどの精神症状とともに、眠れない、食欲がないといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が出る気分障害のひとつ。
この記事の画像(12枚)経済協力開発機構の調査では、国内のうつ病やうつ状態の人の割合は、新型コロナの感染拡大前後で2倍以上に増加。誰もが発症する可能性があるにもかかわらず、現在、その詳しいメカニズムは分かっていない。
こうした中、東北大学では脳波を使い、そのメカニズムを解き明かす研究で成果をあげている。薬学研究科の研究室に入ると、頭に帽子のようなものを装着した一匹のマウスがいた。これは一体、何なのか。
東北大学大学院薬学研究科 佐々木拓哉 教授:
マウスの頭に電極がたくさん入っているところ。プラスチックで覆って電極が壊れないようにカバーをしていて、コネクターの接続部分に装置をつけると脳波が取れる
研究ではマウスの脳に電極を埋め込み、さまざまな状況下で脳波を測定、解析している。
東北大学大学院薬学研究科 佐々木拓哉 教授:
脳波を測る電極をつなぎ、ケーブルを介してパソコンに出すと、このような形で脳波が記録できる。マウスも走り回ったり、たまにケンカするが、社会性や他者とどう付き合うか考えながら生きている動物で、人と非常に共通している
不安と関係するシータ波、集中力と関係するガンマ波
こちらは健康な2匹のマウス。鼻と鼻をくっ付けるなど、交流する様子が見られる。
一方、こちらは片方がうつ病傾向にあるマウス。ケージの隅でほとんど動かない。
研究では、対照的な2匹のマウスの脳波を4年の歳月をかけて測定。その結果、脳波の中で不安と関係するシータ波と、集中力と関係するガンマ波に、うつ病傾向の時のみの特徴的なパターンがあることを世界で初めて発見した。
東北大学大学院薬学研究科 佐々木拓哉 教授:
他と交流する時は、例えば特定のシータ波と呼ばれる脳波が減ってしまったり、ガンマ波が増えたりが本来あるが、うつ病の場合にはそれがうまく制御できない
また、この発見したうつ病傾向特有のパターンを人工的に正常な状態に戻すと、再び他のマウスと交流するようになることも分かった。
東北大学大学院薬学研究科 佐々木拓哉 教授:
人もマウスと同じように脳波が出ていて、基本的な構造は同じなので、マウスと同じようなことが起こっていると推測される。もし脳波をきちんと読み取ることができれば、今のうつ病の度合いがどれぐらいか、客観的にわかる可能性がある。本当にただ気分が落ち込んでいるだけか、脳の活動も一緒に変わっているのか、そういったものが見えてくる
(仙台放送)