5月下旬、北海道・旭川市で新たな日本酒の販売が始まりました。その日本酒づくりの主役を担っていたのは地元の高校生たちでした。
旭川市の老舗蔵・高砂酒造の直売所に新発売の日本酒が並んでいました。
購入客:「目的はこれ。楽しみでした。早く飲みたいです」
その日本酒の名は「兆 2022」。まろやかで旨味のある味わいに、すっきりとした飲み口が特徴的です。
この日本酒を作ったのは地元の高校生。約1年間に及んだプロジェクトです。
まろやかな味わいが楽しめる、日本酒「兆 2022」。5月下旬に発売が開始されました。
この日本酒づくりがスタートしたのは約1年前のことです。
旭川農業高校 当時3年 羽根 有哉さん:「ねじる感じで、しっかり苗が立つように植えてほしいと思います」
道産米「きたしずく」の苗を植えているのは旭川農業高校の生徒たちです。2021年4月から、旭川市の企業や団体が高校生とタッグを組み、日本酒づくりに挑戦する「旭農高日本酒プロジェクト」がスタートしました。
生徒は、酒米生産から製品化までの全行程に携わります。田植えから4カ月。酒米は順調に育っていました。
のちにこの酒米は一等米の評価を得ることになります。
旭川農業高校 当時2年 中井 明斗さん:「日に日にこんなに実っていたので、自分としてはうれしい。自分の子どもを育てた感じ」
旭川農業高校 当時3年 加藤 頼亜さん:「自分が飲めるようになったら、早く飲みたいなと思います」
2022年2月。高砂酒造の製造工場です。
高砂酒造 杜氏 森本 良久さん:「コンベアの上に 米を堆積している。その間に下から水蒸気でお米を蒸します」
酒米を蒸す様子や、麹菌をつける行程を見学したあとは日本酒を発酵させているタンクをのぞきにいきます。
高砂酒造 杜氏 森本 良久さん:「みなさんがつくってくれたお米でつくったもろみです。きょうで仕込んでから16日目です。
生徒も実際にもろみをかき混ぜ仕込み作業を手伝います。間近で職人の技を学んでいきます。
高砂酒造 松田 隆さん:「斜めに入れると、キレイに入ります」
旭川農業高校 当時3年 伊藤 蒼良さん:「作業は結構力がいる。毎日1時間ほどやるということで、大変だなと思いました」
完成が近づく中、日本酒の名前が決まりました。「兆 2022」です。
「旭川の特産品に育っていくように」という生徒の思いが込められました。商品名が入ったラベルを1枚1枚、丁寧に貼り付けていきます。ときにはこんな事も…。
旭川農業高校 川眞田 宗弥さん:「やばい。これは本当マズい。はがれない…買うしかないよこれ。やっちゃった」
慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、出荷の準備を進めていきます。コロナ禍でスケジュールの変更も余儀なくされた中、プロジェクト始動から約1年。すっきりとした飲み口のお酒が完成。ついに店頭に並ぶ日がやってきました。
購入した人は…
購入客:「すばらしいことだと思います」「高校生がプロジェクト組んでやっていたので応援もしたい」
1年間のプロジェクトを終えた生徒たちは…
旭川農業高校 豊増 史悠さん:「このような貴重な経験は 一生に一度あるかないか。心に深く刻んでいきたい」
旭川農業高校 中井 明斗さん:「おじいちゃんは、『これが孫がつくった お酒か』と喜びながら飲んでくれました。家族が喜んでくれるような活動に関わることができてとてもうれしい」
ともに日本酒づくりを行ってきた杜氏の森本さんは生徒の成長ぶりに目を細めます。
高砂酒造 杜氏 森本 良久さん:「いろんなことを すぐに吸収して自分のものにする、知らなかったことを真剣に聞いて取り組んでくれて、こちらも驚きました。ものをつくる面白さや素晴らしさを少しでも感じてこれからに生かしてもらえれば」
このプロジェクトは2022年も継続します。
「旭農日本酒プロジェクト、成功!」