FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部ネタプレ」。今回は、経済部・財務省担当の井出光記者が「修正に次ぐ修正...ザワつく骨太の方針」を伝える。

”骨太”ってなに?

井出記者:
6月7日夕方に、政府が今年の「骨太の方針」を決めます。この「骨太の方針」、このところ新聞やテレビで目にする機会があったと思います。そもそも「骨太」って不思議な言葉ですよね。

加藤綾子キャスター:
たしかに言われてみると。正式名称ではないんですよね?

井出記者:
その通りで、実はこの「骨太の方針」というのは通称。正式な名前は「経済財政運営と改革の基本方針」といいます。

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政府が、これからの経済・財政(国の予算)をどうするか、どういう改革を進めるかを毎年打ち出す文書です。政府は「この文書で改革の大きな骨組みを示します!」という狙いで「骨太の方針」という呼び名を使ってきました。

「歯を守ろう」暮らしに関わる色々な政策

内容を見ると・・・私たちの暮らしに関わる新しい方針が色々と盛り込まれています。

最近話題になった「国民皆歯科健診」の検討。毎年、国民全員に歯科健診を受けてもらう、というものです。なぜ政策として入るかというと「健康な歯をたくさん残し、歯周病の予防などをする」→「他の病気の予防につながる」→「将来的な医療費(社会保障費)が抑えられる」という考え方なんです。

そして、「健康保険証の原則廃止」。保険証をマイナンバーカードと一体化させた「マイナ保険証」を推進するため、今の保険証をやめてしまおうというものです。

他にもいろいろな項目が入った実際の骨太の原案は、A4サイズで37枚もあり、正直読みづらいです…。

官僚や政治家にとっては”最大の証文”

ただ、政治家や官僚にとってはとても重要なものになります。なぜなら、やりたい政策がこの骨太に書き込まれると、「書いてあるので絶対やれ」「盛り込まれたんだから予算をよこせ」などと言えるわけです。

そのため、取材現場ではこの時期、各社がどんな項目が入るのかを知ろうと競っているのですが…、今年は例年と比べてなんだかザワザワしていたんです。

ザワザワその①財務省幹部の逮捕

その理由の1つが「財務省の小野平八郎前総括審議官」です。先月酒に酔い、電車内で乗客に暴行し逮捕されました。事務方トップの候補とまで言われていた人で、温厚な印象だったので驚きました。

小野前審議官は財務省内で骨太の調整をする部署のトップでした。

実は、今回の骨太の方針でまとめるまでに、自民党の議員たちの中で財政に関する考え方をめぐり、対立が起きていました。

「積極財政派」「財政再建派」この2つのせめぎ合いです。

「積極財政派」は、安倍元総理や高市政調会長などで、「国が積極的に支出を増やし、経済を活性化させよう」という考え方です。

それに対して「財政再建派」は、麻生副総裁がそうで、「できるだけ支出を抑えて、国の借金を減らすべき」という考え方です。

財務省は、家庭でいえば、家計を預かる立場なので、「余計な支出は減らしたい」。つまり、「財政再建派」です。そのため、小野前審議官も「財政再建派」なのですが、主張の違う「積極財政派」の議員との調整役とも言えるポジションでした。

「このタイミングでの逮捕か…」と、財務省内ではザワザワしました。

ザワザワその②安倍元総理の注文

ウクライナ情勢を背景に議論された「防衛費」についてです。6月2日、安倍元総理がこんな発言をしました。

「防衛費を増やすことを骨太に書くべきだ!しかも、実現させる目標時期を「5年以内」とはっきり書き込むべきだ」と言ったんです。

この発言を受けて慌てたのが、財務省の幹部です。5年以内と時期を決めることは、財務省にとって大事な財源をどう確保するかということに大きく関わるからです。

そこで、財務省の幹部は動きました。安倍さんの発言はお昼でしたが、その日の午後のうちに官邸関係者と共に、安倍さんのもとを訪れたんです。直接会って、どう書き込むか内容の調整し…そして、発言の翌日の6月3日には、修正された「案」がまとまります。

そこには、「防衛力を“5年以内に”抜本的に強化する」という、安倍さんの意向に沿った言葉が盛り込まれました。

こうした細かい調整は色々な部分で起きていて、財務省の担当部署は一週間ほど徹夜が続いているとのことでした。

このように様々な人の意見に左右されてできあがる今回の骨太の方針ですが、7月に控える参院選の「与党の公約」にも反映される予定です。

外交評論家・宮家邦彦氏:
外交や国家安全保障の観点から見れば、防衛費GDP比2%というのはNATOでも標準ですから、日本は当然やるべきこと。10年も20年もかかけても仕方がないから5年ぐらいでやらないと意味がない。近隣の国へ正しいメッセージを送ることがポイントなので、おかしくないことだと思います。

(「イット!」6月7日放送より)