楽器を使わず、人の声だけで曲を演奏する「アカペラ」。
長崎市には、中学生から50代の約40人からなるアカペラクリエイターチームがある。名付けて「ハモらんばプロジェクト」。
アカペラの普及を仕事にしたいと、プロジェクトを立ち上げた24歳の若者を取材した。

テレビ長崎の楽曲を“耳コピ”でアカペラ化

森勇吉さん:
こんにちは、もりきちです

長崎市に住むアカペラクリエイター「もりきち」こと、森勇吉さん(24)。2022年4月に「ハモらんばプロジェクト」を立ち上げ、イベントの企画や動画投稿をしている。

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この日は、テレビ長崎の情報番組のテーマ曲のアカペラ化をお願いしてみた。

テレビ長崎・中村葉月アナウンサー:
これは、楽譜を作ったんですか?

森勇吉さん:
はい、音源を聞いて、耳コピ

森さんは曲を聴いて、リードやコーラス、パーカッションなど6つのパートに分け、アカペラ用の楽譜を作った。

森勇吉さん:
プルップーって、唇を振動させて、鳴らしたりします

そして収録した音声と撮影した映像をもとに、自宅で編集。お洒落な楽曲動画が完成した。

「感情表に出せず」アカペラと出会い笑顔に

森さんは、以前は目立つことが苦手で控えめな性格だったという。小、中、高校まで、いじめを受けて、ずっと居場所がないと感じて生きてきたからだった。

森勇吉さん:
いじめを受ける場面があって、なかなか自分の本当の姿、ありのままの姿を表に出す機会が少なかったので、感情を表に出すのが苦手になっていた。

その後、大学に進学し、いじめから子どもたちを救えるようにと、教師の道を目指していた。
しかし、教師としてできることに限界を感じて、いったんは夢を見失った。
そんな時、大学のサークル活動でアカペラと出会って、視界が開けたという。

森勇吉さん:
自分はこんなに笑っているんだというのを写真を通して気づいて、そこからアカペラが色々な人数、複数人でする中の1人として、自分がそこに必ず必要だと。居所として。

自分は、ここにいていいんだと感じた。
人を笑顔にできるアカペラの魅力に気づいた森さん。同時に“自分探し”をする中で、高齢者のための買い物代行サービスに取り組んだりしたこともあった。
結局、人手が足りず断念はしたが、その過程で「アカペラの普及を生業にしたい」と夢を描くようになり、2021年に一念発起して大学を中退した。

いまは家庭教師やSNSの運営代行などの仕事で生計を立てながら、アカペラ動画の投稿を続けている。まだアカペラでは収入を得ることはできていないが、アカペラを広げることを仕事にしたいと考えている。

森勇吉さん:
自分がアカペラで助けられているので、アカペラで助けられる人を増やしたいと心から思うし、実際に喜んでくれる人が目の前にいて、それが一番の幸せ。永遠にがんばれる

森さんは地元を盛り上げたいと、商店街に若い人が集まるよう、空き店舗を使って期間限定のアンテナショップを立ち上げたこともあった。
そうした活動から、県庁や小学校で地域活性化に関する講演会に呼ばれることも増えたという。
話す準備のため、言葉に向き合う時間が増えたことから、コラム投稿サイト「note」も立ち上げて、長崎の話題などを発信している。

アカペラから始まった森さんの「居場所」探しの旅は、その活動の輪を広げながら一歩一歩進んでいる。

(テレビ長崎)