6月1日、上海で2カ月以上続いたロックダウンがほぼ解除されました。現地で暮らす3人の日本人を取材し街の様子を伝えてもらうと、ロックダウンにより発生した異変が見えてきました。

市民の喜び爆発

立て掛けられた板を、ハンマーのようなものでたたき壊す男性たち。これは、中国・上海市で撮影された映像です。

この記事の画像(24枚)

1日当たりの感染者数が連日2万人を超えていた上海市。約2カ月続いていたロックダウンが、6月1日の午前0時にほぼ解除されました。

上海市民:
上海は封鎖を解除しました!

上海市民:
もう警察も取り締まらないな。

一方で、お祭り騒ぎに不安を覚える人も。

上海市民:
恐怖を感じます。こんなに道に人がいるなんて。

現地在住の日本人が感じた変化

6月1日、解除後の街の様子を撮影してくれたのは、上海生活7年目の加藤彩子さんです。

上海在住・加藤彩子さん:
6月1日の午後4時ぐらいの時間ですが、朝に比べると人の往来がどんどん増えてきた感じがします。

上海在住・加藤彩子さん:
午前8時頃は全然人がいなくて、やっぱり解放されてもこれぐらいなんだなっていう印象だったんですけれども、夕方出たときはもうびっくりするぐらい、ロックダウン前ぐらいの人数が出てきていて、この1日の間でこんなにも雰囲気が違うんだなっていうところに、単純にまずビックリしました。

2カ月経って変わった街の風景。印象に残ったのは街路樹だといいます。

上海在住・加藤彩子さん:
街路樹が腰ぐらいの高さのものが一列にバーっと道沿いに並んでいるところがあるんですけれども、2カ月全く手入れしてないので、好き放題生えてる形で、もうボーボーになってて、落ち葉とかもすごく散らばってて、そういう自然の力みたいな、風化してるみたいなところを目の当たりにして、やっぱり時が経ってたということは実感しました。

久しぶりにスーパーに買い出しに行った加藤さん。そこではこんな失敗がありました。

上海在住・加藤彩子さん:
買える時に買っておかないと手に入らないかもしれないっていう焦りでまとめ買いして、間違いだったなって思うのは、ハンバーガーに入れるパテを24枚も買ってしまって。3人家族なのに、24枚もあってどうしようみたいな。

ロックダウンの期間中は、買い物にすら出られないため、食料は当局からの配給のみ。食材が底をつくこともありました。当時、市民からは「物資をよこせ!」と悲痛な叫びも。

少しずつ、ロックダウン前に戻ってきているという街の風景。久しぶりに犬の散歩をしたという人は……。

犬の散歩をしていた人:
ようやく従来の自由を取り戻した気分です。きょうは天気が良いし、犬のお散歩だし。犬のほうが、ワクワクしてます。長い間お出かけしていなかったから。

72時間以内の陰性証明必須 PCR検査に大行列

こちらは、上海で9年暮らしている日本人のYさんが撮影した街の様子です。

上海在住・Yさん:
圧倒的に車の量が少ないなっていう感じがしました。その理由なんですけど、電気自動車が多いので、バッテリーの充電切れだったりとか、タイヤの空気が抜けてしまっている。整備ができていないために乗れないっていう方たちも結構いらっしゃるみたいです。

長く乗れなかったため、整備が間に合わず乗れない車も多いというのです。

その一方で、街にあふれていたのはPCR検査の行列。

上海在住・Yさん:
PCR検査の行列です。空いている時間も限られているため、かなり人が殺到しています。

至る所でPCR検査の行列に遭遇したといいます。

上海在住・Yさん:
家の周りを撮ってきました。PCR検査が今後必要になるので、地下鉄に乗るにもオフィスに行くにも。なので街のあちこちにPCR検査場があって、それにすごく人が並んでました。

上海在住・Yさん:
地下鉄の駅前となりますが、ここもPCR検査の行列ができています。ここもPCR検査の場所です。こういった施設が街の至る所にあります。かなり行列になっています。

なぜ上海市民が、ここまでPCR検査に並ぶのか。その理由は、どこへ行くにも必要なQRコードにあります。コードを読み取ると、72時間以内の陰性証明が表示されるシステムです。百貨店の入り口でも画面をチェックしてから入店。地下鉄に乗るときも、改札の前で職員がチェック。そのため、陰性証明をとるために市民たちが検査場に殺到していたのです。

ヘアカットに依頼殺到 出前バイクはフル稼働

また、こちらの日本人の元には、市民からのある依頼が殺到しているといいます。

上海在住の美容師・宮本大地さん:
メッセージの返事が滞っているというか、すごく来てますね。150件ぐらい来て、順番に対応していると次のが来て…ですね。

上海に4年間住んでいるという美容師の宮本大地さん。宮本さんはロックダウン中、自宅マンションの敷地で営業してきました。

そして解除された今、髪を切りたい人からひっきりなしに連絡が来るというのです。

――待ち望んでいる方が多い?

上海在住の美容師・宮本大地さん:
本当に多いと思います。自分の髪とか美容が気になってしょうがないんですよ。そこをどうにかしないと本当に見た目が病人みたいな状態で。3週間に一度髪を切っていた常連さんの男性が、3カ月間切ってないとかなんで。もう頭がとんでもないことになってるんです。

そんな、宮本さんが驚いたのはこの光景。

道路沿いに出現した何台ものバイク。その訳は……

上海在住の美容師・宮本大地さん:
出前のお兄さんたちや配達員の方たちのバイクだったんですけど、もうみんなバーッと飛ばして、怖ろしい数のバイクが飛んでいくんで。ネットショップでの配送が始まって、そういうのを届けている方で、この人は出前。この人は別の配送とか。でもやっぱり出前の方が一番多いなと思いました。

出前や商品の配送も復活。特に市内では出前のバイクが目立つといいます。

上海市「都市封鎖」はしていない?今後は物価上昇も懸念

2カ月ぶりに、自由な生活が戻ってきた上海。ところが、ここにきて上海市は、そもそも「都市封鎖」を宣言したことはないとしています。いったいどういうことなのでしょうか。

市民に解除を知らせるメールには……。

現地日本人に送られた当局からのメール:
6月1日午前0時から、上海は逐次集合住宅の出入りを回復。公共交通の運行や自動車通行も。

「ロックダウン解除」という表現はありません。

中国メディアによると、上海市は5月29日の記者会見で「そもそも上海はロックダウンを発表したことはなく、当然、“封鎖解除”なんて存在しない。従って“封鎖解除”の言い方はよろしくない」とし、中国国内の報道機関に対し、「封鎖解除」といった表現は避けるよう、警告したとされています。

これについて、上海で暮らす日本人に聞いてみると、言葉を選びながら慎重に答えてくれました。

上海在住・加藤彩子さん:
認識してます。「ロックダウン」ではないんですよね。

加藤さんは、ロックダウン中に撮影した動画をSNSに投稿する際、表現に気をつけているといいます。

上海在住・加藤彩子さん:
字幕をつける時にそのワードを入れないようにしているんですよね。やっぱり当局が“ロックダウン”と銘打って出していないので、もしかしたら不快に思う人がいるかもしれないし、何か反感を買う引き金になるかもしれないので。

Yさんも、解除を告げるメールを目にしていました。しかし……。

上海在住・Yさん:
どこにも“封鎖解除”っていう文字はないですね。”ロックダウン解除します”みたいな感じの書き方はされてないです。

あくまでも、住宅の出入りや交通機関を「回復させる」としている当局。

一方、美容師の宮本さんは、上海市が、封鎖ではなく、市民の自主的な行動のように言っていることについて。

上海在住の美容師・宮本大地さん:
そんなの発表したらみんな怒るんじゃないですか。みんなが暴走しちゃうんじゃないですか。

市民生活に制限をかけながら、「封鎖解除」とは言わない当局。その真意は、どこにあるのでしょうか。

5月30日の段階で直前に市民に送られたメールを改めて見てみると、「6月1日、午前0時から上海は逐次集合住宅の出入りを回復。公共交通機関の運行や自動車通行も再開」ということで、解除の文字はありません。さらに下の方を見てもどこにも”ロックダウン解除”の表現はないという、かなり文面に関しても徹底したものになっています。

また、上海のロックダウン解除による日本への影響はどうなのかというと、家電が全体的に品薄で、今後も価格上昇の可能性があるということです。上海市は企業の活動再開を広く認める方針ということですが、明治安田総合研究所のフェローチーフエコノミスト・小玉祐一さんによると、「ロックダウン解除でもすぐに部品が届くわけではない。生産の正常化は7月以降にずれ込む見通し」ということです。

(「めざまし8」6月2日放送)