山口・周南市では、市街地に野犬が出没し、人がかまれるなどの被害が相次いでいます。背景にあるのは減らないペットの遺棄。6月1日からペットへのマイクロチップ装着の義務化も始まっています。野犬問題の現状を取材しました。

吠え続ける野犬の群れ 

ディレクター:
「奥の方から、犬が鳴いている声が聞こえます。遠くの方でも、一匹鳴いている声が聞こえますので、複数匹の犬がいると思われます」

午後10時すぎに響く野犬の群れの鳴き声。「めざまし8」が取材したのは、山口県周南市にある公園の周辺です。

道路の真ん中に大量のドッグフード

ディレクター:
「向かって右の方から犬の鳴き声が聞こえます」

鳴き声がする方向に行ってみると…

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ディレクター:
「ただ今、夜の10時半ごろです。人通りはほとんどないんですけど、あちら、何でしょうか。道の真ん中に小さなドッグフードのようなものが大量にまかれています」

野犬の保護活動を行っているという男性

取材をしていると、暗闇の中を歩く1人の男性を発見しました。野犬の保護活動をしているといいます。

Q:ドッグフードが大量にまかれているが?

「そうですね。一時は減っていたんですけどね。量は」

Q:いつも決まった場所にまかれる?

「いや、少しずつ場所変えていて、僕なんかここを見回りするもんで」

野犬の保護活動を行っているという男性。道路上にドッグフードをばらまくなどの「無差別なエサやり」を注意するため、見回っているのだといいます。

「本当に野犬が餓死してかわいそうと思うんだったら、こんなまき方、自分だったらしません」

むやみなエサやりはしないという男性。このやり方は、衛生的ではないと話します。今回、男性の案内のもと、取材班は犬たちの姿が見える場所に行ってみることにしました。

男性の案内のもと犬たちの姿が見える場所に

ディレクター:
「いました。あそこに1匹の犬がいますね。大きな声で吠えています。吠え続けていますね。ここからの距離は15メートルから20メートルでしょうか」

座ったまま吠え続ける犬。首輪は付いていません。

ディレクター:
「ここから見えるのは1匹なんですけど、呼応するように森の方からも数匹の犬が鳴いている声が聞こえます。ずっと1匹で吠え続けていますね」

すぐ近くの墓地でも、暗闇の中で聞こえてくる鳴き声。ライトをつけてみると、10メートルほど先に、犬の姿が浮かび上がりました。その奥からも鳴き声が聞こえます。

Q:このあたりは他にも犬がいる?

野犬の保護活動をする男性:
「さっき上がってきたところの左側のグラウンドにもいるし、ちょっと向こうの道に出てしまって。下の方見てるんですけどね」

Q:これだけの犬がいて鳴いていることは珍しい光景ではないんですか?

「(珍しい光景では)ないです。多い時だったらもう20匹30匹の群れが出てきてます」

数十匹の野犬が群れで行動しているという公園の周辺。取材中も、何匹もの野犬の姿が確認できました。

ディレクター:
「ここから少し見えづらいですけれども、3匹いますかね。犬たちがこのあたりに寄ってきているのが分かります。今すぐ近くに犬が寄ってきましたね。こちらの方をじっと見ています」

数年前から野犬が出没するようになった周南市。そして、野犬が出没するのは、公園内だけではなく、住宅街にも。

住宅街でかまれる被害も

ディレクター:
「野犬いますね。住宅街のすぐ近く。野犬が道路を塞いでますね。全然動こうとしませんね。3匹ずっと止まってる状況です。さらに奥にもいますね。ゆっくり歩いています。その奥にもいますね」

車のライトを当てられても、逃げるそぶりを見せない野犬の群れ。市内では住民が追いかけられ、かまれる被害も出ています。

ディレクター:
「住宅街の中なんですが、ここも野犬注意という看板がありますね」

2022年1月、住宅街の路上で、20代の女性が、小型犬2匹を散歩させていたところ、向かってきた中型の野犬がかみついてきました。女性は腰の辺りを2センチほどかまれて出血し、病院で手当てを受けました。さらに、取材を進めると、過去に5匹の野犬に囲まれたという男性も…

「かみつかれてはいないけど、結構すごい勢いで囲まれたような感じ」

Q:威嚇も?

「するする。吠えたりして近くまで来て怖いというか、かまれる時もあるみたいだから、
かまれなくてよかったけれども」

パンク町田氏「繁殖期は気が荒くなる」

こうした野犬の行動について、動物の生態に詳しいパンク町田氏は、特に今の時期、注意が必要だといいます。

動物研究家 パンク町田氏:
「繁殖期は繁殖期。ただもう少し早い時期から始まってると思いますけど、いま出産を迎えているんじゃないかな。やっぱり子どもができたりすると、気が荒くなったりする可能性はある」

住民たちを悩ませている野犬、時にこんな姿も見せます。

ディレクター:
「このあたりグラウンドになっているんですけど、あそこにいますね。4匹くらい固まっているのが見えます。じゃれ合っているような様子も見えますね」

こうした野犬の出没が相次ぐ理由について、市の担当者は…

周南市の担当者:
「捨てられた犬が繁殖して、数を増やした可能性があります。犬にとって住みやすい環境が揃っているので」

身を隠せる緑地の多い広大な敷地の公園があるなど、安全に暮らせる環境が整っていたため捨て犬が繁殖をした可能性があるといいます。

市では独自アプリで対策も…

現状を打破するため、山口県は、2019年度から「野犬問題に関する連絡協議会」を設置。
周南市と連携して巡回や捕獲などの対策を強化しています。また、周南市も独自の取り組みをスタートしました。

アプリ内の目撃情報:
「大型です。この辺りはしょっちゅう出ます」

アプリ内の目撃情報:
「野良犬がサツマイモ畑のマルチシートを破っていました。早く対策をお願いします」

市民から匿名で寄せられた、野犬の目撃情報。野犬の様子や被害の状況を撮影した写真も添えられています。これは、市が導入した、スマートフォン用の「しゅうなん通報アプリ」。市民から寄せられた野犬に関する情報を集約して地図上に一覧で公開しています。
番組スタッフも使ってみると…

ディレクター:「この『通報状況を確認する』というところを押してみますと、『犬』というマークが出てきます。さらにこの『犬』というところを押してみると、目撃日時と共に「自転車で走っている際に吠えられ、追いかけられた」と、詳細の情報も見ることができます」

市は、寄せられた情報を今後の対策に役立てたいとしています。また、6月1日に施行される「改正動物愛護法」では、ペットショップなどに対し、犬や猫へのマイクロチップの装着を義務化。チップをスキャンすると、飼い主の情報が表示されることから、捨て犬や猫が減ると共に、野犬も減ることが期待されます。

減らない”むやみなエサやり”

山口県の担当者は、「むやみなエサやりや、犬の遺棄が続いている可能性があるため、市内の野犬の数は、ゼロにすることは難しい」といいます。一部の人によって行われているとみられるエサやり行為。むやみなエサやり行為は条例で禁止されており、周南市も職員によるパトロールを実施するなど、対策を続けています。

(めざまし8 6月1日放送)