防衛省の研究機関・防衛研究所は31日、東アジア地域の戦略環境を分析する年次報告書「東アジア戦略概観2022」を刊行した。
この中で、日本の防衛費について、2000年には東アジア全体の防衛支出の38%を占めていたのに対して、2020年には17%に低下したことを紹介。アメリカと中国による大国間競争が激しくなる中、日米同盟の「安定的な抑止力の確保」のためにも日本の防衛費を増額させる必要性を訴えている。
また、今年は2月下旬に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受け、防衛研究所に緊急チームを編成。「東アジア戦略概観」の刊行を1カ月ほど遅らせた上で、新たに別冊「ウクライナ戦争の衝撃」を執筆し、アメリカや中国など国や地域ごとのウクライナ情勢への対応と動向をまとめた。
別冊の第2章「ロシアのウクライナ侵攻」では、ロシアが侵攻に至った背景に、プーチン大統領の「ウクライナが自由意志をもってロシアから離れた行動をとることを許容しないという強い意志」があると分析。今後の戦況については「ウクライナが抵抗する以上、(戦争の)長期化を想定せざるを得ない」と記した。
さらに、今回の侵攻は「ロシアの常套手段である、相手を分断し行動を躊躇させるやり方と異なっている」とした上で、ウクライナ国民やNATO(=北大西洋条約機構)といった、ロシアの“対立相手”を結果的に団結させ、「ロシアはもはや、これまでと同じ国際環境には生きていくことができない」と指摘した。
「東アジア戦略概観2022」は防衛研究所のHP内でも閲覧でき、7月には英語版も刊行される。