5月25日、首都直下地震に関して、東京都が10年ぶりに被害想定の見直しを発表。耐震化が進み被害想定が減少した一方、すぐ大混乱に陥る首都インフラの脆弱さが明らかになりました。

首都直下地震 耐震化などで想定被害は減少も…新たな課題

30年以内の発生確率が、約70%とされる首都直下地震。

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小池都知事:
大規模な地震の発生が一層現実的なものとなっております

25日、東京都は10年ぶりに、被害想定の見直しを発表。
最大規模の被害となる“都心南部直下地震”で、想定される死者は6148人、負傷者は9万3435人、建物の被害は19万4431棟に及ぶといいます。10年前とは想定した地震が異なるため単純には比較できないものの、耐震化などが進み、死者数や建物の被害が3割から4割減りました。

一方で、合わせて発表された地震後の「災害シナリオ」からは、都会ならではの災害への脆弱性が浮かび上がってきました。

都会ならではの脆弱性…帰宅困難者は東日本大震災時より100万人増

今回の被害想定で出された帰宅困難者の数は、約453万人。

シナリオによると、都内の鉄道各社は軒並み運行停止に。新幹線も止まり、東京都外から通う人の多くが、帰宅困難者になるといいます。
2011年、東日本大震災の発災初日の都内でも、帰宅困難者が道路上にあふれました。地下鉄の駅構内にも帰れない人が残り、公衆電話の前は、大行列となっていました。この時の東京の帰宅困難者は、約352万人。
首都直下地震が起きれば、この時よりもさらに100万人多く帰宅できなくなる計算です。

また2021年10月、東京23区などで震度5強を観測した地震では…

渋谷駅前にはタクシー待ちの長い列ができました。車に乗ることができても、高速道路を閉鎖する事態にもなりました。

今回発表された災害シナリオでは、生活に必要なインフラについて「広範囲で停電が発生」とされ、さらに「計画停電の実施の可能性」もあるとしています。

2022年3月、宮城と福島で震度6強を観測した地震では、首都圏でも震度4を観測、大規模な停電が発生しました。
電力の回復について、多くの地域で電力の供給が再開されるのは1カ月を過ぎてからといいます。また、今回の想定では、電気以外にも、ライフラインとして必要不可欠となる水などについても言及がありました。

【電気・ガス・水道は?】災害シナリオ「ライフライン・インフラ」

今回の災害シナリオは、時間軸でどういったことが起こるのかが記載されています。
まずは、インフラです。

電気・ガス・上下水道は、やはり発生直後は使用できない状態になります。電気は3日後から徐々に復旧する一方、計画停電があるので、1ヶ月後以降に多くの地域で供給が再開するという想定がされています。
また、ガスは一部3日後でも供給停止の状態に。ガスは安全点検をしなければ再開できないといい、多くの地域で供給が再開されるのは、1ヶ月後です。
さらに上下水道に関しては、まず断水が始まり、3日後には一部断水継続、そして、概ね1ヶ月後には利用できるようになるものの、配水管修理の終了まで、集合住宅のトイレは使用できないといいます。

全体的にみると1ヶ月は影響が残ることがわかります。

【通信・鉄道・道路】復旧まで時間がかかることも想定される

続いて、通信や鉄道などを見ていきます。

まずは、通信です。発生直後は電話、SNSの利用に支障がでます。こちらは、徐々に復旧していくものの、長期間不通の恐れがあるといい、基地局での電源が喪失してしまう可能性もあります。
さらに鉄道は運行停止、多くの方が帰宅困難者になります。1ヶ月経っても多くの区間で運行停止、復旧まで数ヶ月以上の場合も。
道路では、発生直後の通行規制と、ガソリンの給油が難しくなることも考えられます。主要道路で段階的に規制が解除されるのは1ヶ月後近くになるといいますが、こちらも復旧まで数ヶ月以上になる場合もあるといいます。

さらに、東日本大震災でも問題になった、「帰宅困難者」の問題です。

【帰宅困難者】“被害見直し”約453万人…2次災害の可能性も指摘

新たなシナリオでは、帰宅困難者が約453万人という想定です。
帰宅困難者で、通信(スマートフォン)が使用できない場合、公衆電話に長蛇の列ができることが想定されます。というのも、公衆電話の設置台数はこの10年で半減しているという一方、今回の発表は10年ぶり。時代の変化により、長蛇の列が想定されています。
さらに、徒歩で帰宅しようとする場合は火災などの2次災害に遭う可能性があるほか、東日本大震災でも問題視されましたが、道路上が混雑し、救急や消火活動に著しい支障を来す可能性があります。帰宅している途中で、おなかがすいた、水分補給をしたいと言った場合も、早期に在庫が枯渇する状況になることが想定されます。

【避難所生活の場合】生活環境悪化に懸念

今回様々な災害シナリオが出されている中で、自宅が損壊し、避難所に行った場合の生活に関することも発表されています。

発生直後から1日後は、スマートホン等がバッテリー切れし、家族との連絡等が困難に。3日後には、衛生環境が悪化し、新型コロナなどの感染症まん延の恐れも懸念されています。さらに、清掃が行き届かず、ほこりが舞い、ぜんそくなどの人は症状の悪化も考えられます。そして、だんだんとストレスがたまってくる1ヶ月後、特に外国人の方などは精神的な負担も増大される可能性があるといいます。

【自宅で避難生活の場合】体調不良、品不足…様々な懸念

一方、自宅で避難生活ができる場合にも様々な困難が想定されます。

発生から3日後、生活ゴミが回収されず悪臭などの問題が発生。1週間後、電力が復帰していても点検が終了できずエレベーターが利用できない状況が続きます。また、余震が来るかもしれないという不安で過剰な購買行動が発生、慢性的な品不足継続も。さらに、発生1カ月後、停電が続く場合は空調が使用できず。熱中症や脱水症状。寒さから引く風邪などが想定されます。

これらの災害シナリオに対し、政府は備蓄を呼びかけています。

簡易トイレやトイレットペーパーのほか、水は1日1人3Lを目安に3日分。ガス停止の備えとしてカセットコンロ。さらに、ご飯、ビスケット、板チョコ、乾パンなど1人最低3日分の食料などを自宅に備えておくことが大切だとしています。

(めざまし8 5月26日放送)