東京都は、きょう午前、防災会議を開き、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。最大規模の地震が起きた場合、都内の死者はおよそ6148人にのぼるものの、人的・物的被害は、2012年に出された前回の想定より、3~4割軽減するとされている。建物の耐震化が進んだ影響が大きいという。

最も人的・物的被害が大きくなるのは「都心南部直下地震」が発生した場合で、震度6強以上の地域が、東京23区のおよそ6割を占めるとされる。

冬の午後6時に、風速8メートルの中、「都心南部直下地震」が起きた場合の被害想定は、死者6148人、負傷者9万3435人、避難者およそ299万人、建物被害は19万4431棟にのぼるという。また帰宅困難者は、およそ453万人と想定されている。

これを10年前の被害想定(東京湾北部地震)と比べると、死者が3493人(前回9641人)、負傷者が5万4176人(前回14万7611人)、避難者が40万人(前回339万人)、建物被害は10万9869棟(前回30万4300棟)、帰宅困難者が64万人(前回517万人)、それぞれ減っている。

この10年間で、人的・物的被害の想定が3~4割減ったことになるが、建物の耐震化が進んだ影響が大きいという。都内の建物の耐震化率は、81.2%(2010年度)から、92%(2020年度)まで向上した。耐震化が進んだことで、倒壊や火災などに見舞われる建物も減るとされる。

東京都では、耐震化率をさらに向上させるとともに、屋内での家具などの転倒・落下防止対策を進め、電気を要因とする火事を減らし、初期消火の体制を強化することなどにより、さらに被害を軽減できるとしている。

前回の被害想定は、2012年4月に発表された。その後、都内の人口は、およそ1316万人(2011年)から1403万人(2021年)に増え、人口の密集も進んだ。高層マンションが増える一方で、建物の耐震化も向上。

これら東京都を取り巻く状況の変化を考慮し、今回10年ぶりに、首都直下地震の被害想定が見直されることになった。首都直下地震の被害想定は、政府の中央防災会議がまとめたものも発表されている。

また、今回の被害想定では「スマートフォン等のバッテリー切れ」など状況に応じて起こりうる問題が、時間軸に沿ってまとめられている。東京都は「自分の環境にあった時系列を見つけて」備えるよう呼びかけている。

社会部
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