2020年2月、コロナ禍の初期にトイレットペーパー不足があったことを覚えているだろうか?

2020年2月 トイレットペーパー不足に
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このトイレットペーパー不足は、SNS上の“デマ情報”よりも、“デマ情報を訂正する情報”が引き起こした可能性が高いとする研究結果を、東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授らの研究チームが4月28日に発表した。

研究論文は科学雑誌「PLOS ONE」のオンライン版に2022年4月4日付で掲載された。

鳥海教授らのグループは、コロナ禍におけるトイレットペーパー不足デマに関する447万6754のツイートを分析。

“ソーシャルメディア上での情報の広がり”と“実際のトイレットペーパーの売り上げ”を比較分析した結果、“デマ情報を見たユーザー”よりも、“訂正情報を見たユーザー”の方がはるかに多いことが明らかになった。

また、研究チームは、ツイート数から売り上げを予測する数式を作り、その数式から、“訂正情報”が多くなると購買行動が多くなることを導き出した。

ツイートを説明変数、トイレットペーパーの売り上げ指数を被説明変数とした売上予測モデルを構築し、決定係数0.963と高い精度を持つモデルの構築に成功した。

その回帰式の係数より、訂正情報の重要度が高いことが明らかとなり、訂正情報が過剰な購買行動を引き起こしていたことを示した。

イメージ(トイレットペーパー)

研究チームは“デマ情報”や“訂正情報”をリツイートしたユーザー数が変化した場合の売上指数を推定。

その結果、“デマ情報”の信憑性が高い場合、“訂正情報”は買いすぎを抑制する効果を持つが、“訂正情報”の過度な拡散は買いすぎを促進することが示された。

これらの分析結果を受け、研究チームは「“デマ情報”よりも“訂正情報”の拡散がトイレットペーパー不足を引き起こした要因である可能性が高いことを示した」としている。

さらに、研究チームは「デマ情報の拡散には、その訂正情報が効果的であると素朴に信じられてきていたが、必要以上の訂正情報が社会に混乱をもたらす可能性を示し、適切な訂正の在り方をシミュレーションによって示した点に社会的意義がある」と指摘している。

“訂正情報のみを見たユーザー”は“デマ情報のみを見たユーザー”の500倍

研究チームは分析の結果、「“デマ情報”よりも“訂正情報”の拡散がトイレットペーパー不足を引き起こした要因である可能性が高い」としているが、この理由としてはどのようなことが考えられるのか?

今回の分析に関わった、東京大学大学院の鳥海不二夫教授に話を聞いた。


――このようなシミュレーションと分析を行った理由は?

コロナ禍の初期にトイレットペーパーの不足が生じた際に、デマ情報が拡散したという情報がありました。そこで、どのようなデマが拡散していたのかを調べようとデータを分析したところ、デマは拡散していませんでした。

にもかかわらずトイレットペーパーの不足が実際に生じていたのはなぜかということに疑問を感じ、分析を開始しました。


――どのようなツイートを分析した?

「トイレットペーパー」という単語を含むツイートを分析しました。
期間は、2020年2月21日~3月10日です。


――「“デマ情報を見たユーザー”よりも、“訂正情報を見たユーザー”の方が、はるかに多い」ということだが、具体的な数は?

・デマ情報のみを見たユーザー:4万1988
・訂正情報のみを見たユーザー:1946万1241

一番上が“訂正情報のみを見たユーザー”の数、その下が“デマ情報のみを見たユーザー”の数(提供:東京大学大学院・鳥海不二夫教授)

――「“デマ情報”よりも“訂正情報”の拡散がトイレットペーパー不足を引き起こした要因である可能性が高い」、この理由としてはどのようなことが考えられる?

デマ情報を訂正する情報を見ることによって、「デマがあるのなら、そのデマ情報を見た人がトイレットペーパーを買い占めるかもしれない」と思って、トイレットペーパーが不足しないことを知っていても、購入に走ってしまう。

その結果として、トイレットペーパーが不足するという事態が発生したと考えられます。
実際に不足している様子などがテレビなどでも繰り返し放送されたことも、その動きを加速したと考えられます。

デマ情報を見つけたときの対処法

――デマ情報を見つけたら、どのように対処すればよい?

“デマ情報”を見つけた人は、デマを訂正するツイートを行った方が良いです。ただ、“デマ情報”を見ていない人は、デマを訂正するツイートを行う必要はない可能性がある、ということになります。


――「トイレットペーパー不足」は “デマ情報”よりも“訂正情報”が引き起こした可能性が高いということであれば、訂正ツイートはしない方がよいのでは、と思ってしまうが?

論文中にもありますが、必要以上の訂正が問題を起こした可能性があるということです。訂正が全く無い場合は、適切な量の訂正が拡散されるよりも購入数が増えると考えられます。


研究チームは「“デマ情報”の拡散が大きくない場合は、“デマ情報”を見たユーザーだけが“訂正情報”を拡散することで社会的混乱を最小化することが可能であることを示唆している」と指摘している。
“デマ情報”を見ていない人は、デマを訂正するツイートをしない。これを徹底することで、混乱が引き起こす「〇〇不足」を防ぐことにつながるのかもしれない。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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