医師不足で深刻な医療危機を抱える、石川県の能登地域。しかし、不足しているのは医師だけでなかった。

能登の医療危機…理由はドラッグストア? "薬剤師不足"も喫緊の課題

「医師や看護師の不足と共に、現在、能登地区の医療圏が抱えている大きな問題がある」。そう話すのは、金沢大学附属病院の崔吉道(さい・よしみち)薬剤部長だ。

能登の医療危機を訴える 崔吉道 薬剤部長
能登の医療危機を訴える 崔吉道 薬剤部長
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崔教授が「大きな問題」と指摘しているのは、病院で勤務する薬剤師の不足だ。
能登の公立病院では、薬剤師の新規募集をしても応募がほとんどなく、定年を迎えた病院薬剤師の再任用を繰り返して何とかやりくりしているのが現状だという。その理由とは…

金沢大学附属病院 崔吉道薬剤部長:
最近は能登にもドラッグストアが多く進出してきて、薬剤師の需要が非常に高まっているんです。条件の良い就職先として民間を選ぶ薬剤師が多くなることは、仕方のないことでもあるのですが…

公立病院より民間の方が給与は高いという
公立病院より民間の方が給与は高いという

特に奥能登の町、石川県能登町の公立宇出津(うしつ)総合病院は、2022年と2023年で薬剤師4人のうち3人が定年を迎えるという、危機的な状況だ。院長は危機感をこのように訴える。

公立宇出津総合病院 長谷川啓 院長:
能登の医療危機は切迫しています。これはもう当院だけではなくて、奥能登4市町の病院が危機感を持ってるのは間違いないと思います。

切迫した危機を訴える長谷川院長
切迫した危機を訴える長谷川院長

大学病院から能登に薬剤師が出向 地方に行くほど高まる“薬剤師の意義”

そこで金沢大学附属病院では4月から初めて、能登町の公立宇出津総合病院へ、薬剤師を1人出向させた。任期は半年間。白羽の矢が立ったのは、能登町が地元の板井進悟さんだ。

板井進悟 薬剤師:
小学生の時はここの病院の前を通って小学校に通っていました。自分自身、小児喘息があり公立宇出津総合病院には定期的にかかっていたので、そこで働けるのはものすごく有難い

故郷で働くことになった板井進悟さん
故郷で働くことになった板井進悟さん

実は板井さん、2018年に病院の薬剤師がゼロとなった志賀町の富来(とぎ)病院にも出向し、1年半かけて現場の環境を整備した実績を持つ。
公立宇出津総合病院に赴任して1カ月。能登地域で患者と直に接しながら改めて認識したことがあるという。

板井進悟 薬剤師:
高齢の患者さんが多いので、たくさんある薬を正しく飲ませることも看護師さんは大変みたい。こういう地域に行けば行くほど、薬剤師の意義は高くなるのかなという思いはあります。大学病院とは違った形での薬剤師の役割を感じています

能登だからこそ薬剤師の果たす意義は高い
能登だからこそ薬剤師の果たす意義は高い

若手薬剤師が学ぶ地域医療の実情…新たな医療モデル作れるか

金沢大学附属病院は今後、所属する若手の薬剤師を公立宇出津総合病院へ継続的に出向させ、地域医療の実情を学ばせるという。その中で、大学病院と地域の病院が密に連携し、情報共有を行う環境につなげたいと期待する。

大学病院と地域の病院が連携強化へ
大学病院と地域の病院が連携強化へ

医師不足と看護師不足、それに加えて「薬剤師不足」と、能登の医療危機は待ったなしの課題だ。大学病院と地域の病院が連携してウィンウィンの関係となる、新たな医療モデルが作れるかが注目される。

(石川テレビ)

石川テレビ
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