スポーツの多様化や代表人気の陰りもあり、かつてお家芸と言われた日本のバレーボールはいま岐路に立っている。長崎県でも中高生の大会へ参加校が減ってきている現実がある。

こうした中、2022年4月にバレーボール協会のトップに就任したのが元日本代表の川合俊一さん。バレー界を今後、どう盛り上げていくのか。テレビ長崎の単独インタビューでその思いを聞いた。

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「バレーは守備がよくなきゃ勝てない」長崎の注目選手は

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
僕が初めて日本代表になったとき当時の監督が、長崎の池田尚弘(のちの中野尚弘)さん。その縁で、長崎でも合宿はしたこともありますし、日本代表の初めてのきつい合宿の場だったなと。みんなで食事を出かけたなか、僕は洗濯があったのでひとりで中華料理屋でご飯を食べていました。そこにいた芸妓衆の皆さんに、「ひとりじゃかわいそうだね」と一緒に食べてもらった記憶があります

長崎とのゆかりを語るバレー協会の新会長、川合俊一さん。診断書偽造問題で前会長が解職された不祥事を受けた大抜擢で、バレー人気の回復を託された。

川合さんはタレントのイメージが強いが、トヨタ自動車でビーチバレーチームのGM兼監督を務め、ガバナンスやコンプライアンスの面からも問題ないということから今回、会長に推薦された。

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
1万5000人の会場を満員にした歴史もあるし、圧倒的にファンの方がついた歴史もあります。何かきっかけがあれば、またファンも増えますし、たくさん応援してくれる競技になるのは間違いないですね。どんなことをきっかけにするかというのが我々の課題だと思うんですね

川合さんは、多くのトップ選手を輩出した長崎のバレー界にも熱い視線を送っている。

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
大村工業って長崎でしたっけ。熱血監督ね(伊藤孝浩監督)、ああいう熱血の人がいるところは強いんですよね。そういう意味ではバレーボールで言うと強いイメージ

大村工業・伊藤孝浩総監督
大村工業・伊藤孝浩総監督

テレビ長崎・磯部翔アナウンサー:
長崎出身の選手で、いま注目されている選手はいらっしゃいますか?

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
リベロの古賀太一郎さん(佐世保南高校出身)を知っています。田中瑞稀さん(九州文化学園出身)、また日本代表に選ばれたのはいいことで、最後まで残ってほしいですね

テレビ長崎・磯部翔アナウンサー:
長崎の選手は体が大きくない選手が多いので、まずはレシーブを固めて組織的に作って勝ち上がっていくというところがあります

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
バレーボールはスパイクやブロックが花形ですけど、やっぱり守備がよくなきゃ勝てないので。長崎のチームは、バレーボールの基本的なことをしっかり教えているということでしょうね

中学校の部活動 チーム数減少に懸念も

長崎の選手たちに川合新会長について聞くと…。

男子高校生:
テレビで解説者をしているイメージが強い。(バレーは)昔はもっと人気があったので、昔のように競技人口も増えてテレビでどんどん放送されて、人気のあるスポーツになってほしい

男子高校生:
バレー人口を増やして活気のある人気スポーツになってほしい

現場の指導者からはシビアな注文も入った。

大村工業バレー部 伊藤孝浩 総監督:
選手の人間性はバレーボールでしか生まれないものがあって、そういったものの教育は日本の文化として残してほしい

学校現場では2023年度以降、土曜、日曜、祝日に行う中学校の部活動の指導を、教師ではなく地域の指導者などに段階的に移行する「部活動の地域移行」が実施される。

教師の働き方改革や、生徒数が減ってチームスポーツを行うことが難しくなってきていることが背景にあり、今後、部活動と地域のクラブ活動の住み分けをどうするかなど課題が山積している。

長崎県バレーボール協会 山口哲司 理事長:
(中学校の)土日の部活動のあり方が変わる。クラブチームへの加速化が進むと、本来あるべき中学校の部活動のチーム数が減っていく。そういうことの無いようなルール決めを早く示してほしいと思っている。

日本代表の紅白ゲーム、強豪国とのピンポイント試合

人気回復に向け、注目される一手はリーグの「プロ化」だ。

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
プロ化にしたからいいとは限らない。今だって、小学生や中学生に将来なりたい職業を聞くと、男女とも「会社員」と答えるくらい安定を求めている時代なんですよ

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
(プロは)短期間でたくさんの収入は得られるけど、引退後に会社を興すとか、人を雇って何かをするとか、能力がない限り壁にぶつかると思う。そういった意味では、今のままでも男子に関してはプロもいるし、悪くはない。女子はわからないです。女子は会社に残る人が圧倒的に少ないので、だったらプロとしてやっていく手もあるのかなと。

現在、バレーボールのトップレベルの試合を見られる機会は長崎ではほとんどない。しかし、2024年にはジャパネットホールディングスが長崎スタジアムシティとして、アリーナを完成させる予定だ。

テレビ長崎・磯部翔アナウンサー:
いつかトップセールスで「バレーの日本代表の試合も長崎でしましょう」と売り込んでほしいと思っています

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
ジャパネットさんにはバレー界はものすごくお世話になっていて。春の高校バレーとか、たくさんの応援を頂いていまして。もしアリーナが空いている期間があれば、そこでバレーボールの大会もぜひやりたいなと思いますし、(日本代表の)紅白ゲームとかね。もうジャパネットさんの仕切りですよ。入場券に番号がついていて、そこに「西田」とか「石川」とか名前が書いてあって。西田がバックアタックを1本決めたら、「会場の西田、53番をお持ちの方、ジャパネットから掃除機のプレゼントです」とか、試合中にやってみたり。コラボでやっていけたら面白い

アイデアマンとしても知られる川合さんだが、元々、雑誌で自分のファッションを取り上げられて人気を博した経験から、選手の魅力を発信するのは協会主導ではなく「SNSなどで選手自身が発信することも大切」と考えている。また、バレー人口の減少に歯止めをかけるため、身長による階級別大会開催の可能性も探っているという。

そして、バレー人気の復活に向け「代表チームの強化」に力を込める。経費的に開催が難しい国際大会ではなく、かつて行われていた日ソ対抗、日米対抗のようなピンポイントでオーストラリアや韓国、中国など強豪国との試合を実現し、レベルアップにつなげたい考えだ。

日本バレーボール協会 川合俊一 新会長:
日本代表が勝つことによって、復活することができると思う。男子、女子、両方やってほしいんですけど、オリンピックでメダルを取ったりとか実現できれば、日本のお家芸はバレーだといわれる時代が来る。しっかりと代表選手には頑張ってもらって、もう1度「バレー大国 日本」だと言われるような競技にしていきたいと思いますので、ぜひ応援よろしくお願いします

部活動の在り方が変わるなど、今後、地域レベルの地道な活動にも取り組んでいくことが求められる中、2023年6月までの任期中に代表強化やバレー人気の回復にどんな道筋をつけることが出来るのか、新会長の手腕が問われている。

(テレビ長崎)

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