新型コロナウイルスの影響で中止が相次ぐ各地の伝承芸能。

このままでは途絶えてしまうという危機感の中、地域の誇りでもある伝統の祭りを次世代につなぐため、佐賀県鳥栖市曽根崎町では3年ぶりに「曽根崎の獅子舞」を奉納した。

五穀豊穣を願う祭り これ以上中止が続くと…

3月27日に行われた鳥栖市曽根崎町に伝わる「曽根崎の獅子舞」。鉦(かね)や太鼓に合わせて、2頭の獅子を獅子釣りと呼ばれる子どもたちが操る。

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その歴史は古く、320年以上前からこの地区で受け継がれていて、鳥栖市の重要無形民俗文化財に指定されている。しかし、こうした伝承芸能も新型コロナの影響で中止が相次ぎ、存続を心配する声も上がっている。

曽根崎町古典芸能保存会 古賀武文会長:
間が空いたら子どもたちも忘れてしまう。これは引き継いでいかないといけないものだから、それが私は一番気になって

本番まで1カ月に迫った2月。地区の人が公民館に集まった。土地の悪霊を鎮め豊作を祈願するため、毎年3月末に地元の老松宮で奉納されてきたが、2020年と2021年は中止。2022年をどうするか話し合った。

地区の人:
3月に限定せんでも、4月や5月にはできないか

地区の人:
(コロナの)状況がひどくなることを考えておかないといけない。一応やるということで。ひどくなった場合は、回れなくなる恐れある

話し合いの結果、これ以上中止が続くと伝統が守れないと、3年ぶりの開催を決めた。

曽根崎町古典芸能保存会 古賀武文会長:
農家関係が昔は多かったので、五穀豊穣を願って安全におさまるようにとしていた。特に今回はコロナがあったから、早く収まるようお願いするためにも、やはり今年はやった方がいいと思って、私が特にお願いして

先代の子どもから次の子どもへ 毎日2時間の猛練習

太鼓を出して準備するなど、稽古が始まったのは本番の約2週間前。大人は1つの鉦(かね)を2人で持ち、掛け声とともに松の木で作ったバチで打つ。

獅子釣りは5~6歳くらい、太鼓は7~8歳くらい、どちらも男の子が担当する。この2つの役は4年ごとに代替わりし、先代の子どもが次の子どもに教えるというやり方で代々受け継がれてきた。

(Q:太鼓たたいてみてどう?)

今年初めて太鼓に挑戦した子ども:
難しい。たたきにくいし重いし、太鼓が手に当たるし

(Q:先代がたたいているの見てどう思った?)

今年初めて太鼓に挑戦した子ども:
たくさんあるのにいっぱい覚えていてすごいと思った

2年間中止だったため、教える子どもも3年前のことを思い出しながら伝える。

(Q:初めての教える側はどうですか?)

先代の太鼓担当:
想像より難しかった。教えようとしても意外と覚えてくれない。早くたたけるようになって、本番は2人でたたいてほしいな

稽古は午後7時から午後9時まで約2時間、毎日行われた。

規模縮小も無事に舞を披露 コロナ禍で模索続く

そして、本番当日の3月27日。

(Q:うまくできそうですか?)

獅子釣りの子ども:
がんばります

曽根崎町古典芸能保存会 古賀武文会長:
曽根崎の町民の健康と今年の豊作をお祈りして獅子舞を踊らせてもらうので、みなさんごゆっくりご鑑賞をお願いします

感染対策による規模縮小のため、舞は1度だけ。演舞を披露する約40分間、かねや太鼓の音に合わせて獅子と獅子釣りが舞を披露すると、見物客からは大きな拍手が起きていた。

見物客:
興奮しました。2年間なかったからですね。でもあの小さな子どもたちがよく覚えていますね、もうびっくりするくらい。楽しかった

今年初めて太鼓をたたいた子ども:
うまくできたと思います。来年はもっと上手にしたい

規模を縮小したとはいえ、無事に舞を披露できたことに地区の人も胸をなでおろしている。

曽根崎町古典芸能保存会 古賀武文会長:
みんなの協力で成功した。一生の思い出になる。私が元気な間、続けていこうと希望として考えているので、それを実行していきたい

コロナ禍で伝承芸能をどう次世代につないでいくか、地区の模索が続いている。

(サガテレビ)

サガテレビ
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