祖父の意思を継ぎ、癒しと健康を。一度閉業した山中の温浴施設を後世に繋げようと復活させ、地道な挑戦を続ける男性を取材。

2021年に一度閉館した山あいの秘湯 復活させたのは…

広島・尾道市原田町、山あいにひっそりと佇む山小屋のような施設。

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趣のある敷地の中を進み、振り返ると…「ゆ」の文字が描かれた暖簾が。

ここは温浴施設。御影石を敷き詰めた内風呂のほか、露天風呂がある。

奥には五右衛門風呂を使った水風呂も。

常連さんに話を聞いた。

常連さん:
僕は20キロ位離れた沼隈から。週4回

常連さん:
週2回来る
午後2時半から4時半まで2時間いる。こういう静かで良いところはあまりないよね

常連さんの評判も上々のこの施設は、はらだの湯。実は、2021年12月28日にオープンしたばかり。

以前は「ゆうじんの湯」という名前で営業していたが、経営者が高齢のため、2021年9月末に閉館。

その施設を受け継ぐ形で再スタートを切った。受け継いだのは、金野剛(かのう つよし)さん。

祖父が切り拓いた鉱山…残された「釜の火」受け継ぐ

金野さん:
私もこの近くで生まれ育ったものですから、この施設がなくなると町の賑わいもなくなってすごく寂しいという気持ちもしていたものですから、引き継いでやらないかという打診をうけまして、縁の者として、できれば釜の火を灯していきたいと思って受け継ぐことにしました

この地で生まれ育ったというだけでなく、このお風呂は、金野さんにとってとても思い入れのある場所だ。

金野さん:
元々、私の祖父が鉱山、採石場を経営しておりまして、そこに貯まる水を戦後GHQが調査して、それを入浴施設に使えば良いということになったそうです

金野さんの祖父、金野光選(かのう こうせん)さんが昭和のはじめ、この地に山三鉱業所を開き、昭和40年代までガラスの原料となる長石や珪石を採掘していた。その採石抗にたまる水を入浴施設に使った。

金野さん:
原田温泉として経営して、一時期は4軒の温泉宿があったんです。ただ、昭和50年代に全てつぶれてしまいまして

祖父が切り拓いたこの場所の歴史を途絶えさせたくないと、金野さんは引き継ぐことを決意した。

そんな、はらだの湯の大きな特徴は、表に並ぶ大量の木材。

廃材を薪に…エコな釜の湯

金野さん:
建築や船舶の廃材が多いですが、薪のボイラーを重油と併用して使っています

置いてある木材は全て燃料。時には、薪割りをしながらボイラーを焚いて、お湯を温めている。

金野さん:
湯がいいという人もいますが、資源を無駄にしないつもりで。今、重油も高いので多少助かっております

入浴後にはジビエ料理を

さらに収益を上げるために、飲食の提供も始めた。山の中の温浴施設にふさわしいメニュー、「はらだの湯特製ジビエ鹿カレー」と「イチオシ鹿ロースカツ」だ。

金野さん:
(メニューは)柔らかくて低カロリーで、お客さんは年配の人が多いので喜んでいただいています。周りは猪やタヌキがたくさん出るところなので、雰囲気もそういうのが合うのかなという気がしています

地域の歴史を大切にする金野さんの思いがあって復活を遂げた、はらだの湯。常連さんたちの喜びもひとしおだ。

常連さん:
もちろんうれしいですよ。待ち望んでいましたから

常連さん:
感謝している。ありがたい。十分儲かって、続けてもらったらいいね

今や常連さんや地元の人だけでなく、福山市や広島市、岡山・井原市などからもこのお湯を求めて、人が訪れる。

金野さん:
今、従業員の関係で午後6時までしか営業できていないので、これをなんとか8時までに営業時間を延ばして、今来ることのできない一般のお勤めの方にも来ていただけるようにしたいなと思っています。なんとか継続して経営することが当面の目標です。私がもうちょっとがんばって、また次の世代に引き継ぐことができたらと思っています

(テレビ新広島)

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