出会い系サイトを通じて知り合った30代の女性に、愛人契約を結ぶよう持ちかけ、言葉巧みにクレジットカード2枚をだまし取った疑いで、住所不定・職業不詳の早川幸範容疑者(62)が逮捕された。

逮捕された早川幸範容疑者(62)(15日 新宿署)
逮捕された早川幸範容疑者(62)(15日 新宿署)
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愛人を募集していた「木村裕二」

警視庁新宿署の発表によると、被害者の女性が、早川容疑者と初めて会ったのは、去年12月20日。場所は、新宿区の外資系高級ホテルだった。ハリウッドスターも定宿にしていることで知られている。

2人は4日前に知り合ったばかりだった。早川容疑者が、出会い系サイトで「愛人」を募集していたところに、被害者の女性が接触。その後、LINEで直接やり取りをした末に、この日、直接会うことになったという。

「木村裕二」という偽名を使っていた早川容疑者。ブランド物ではないが、小ぎれいなスーツを身につけ、ホテルのラウンジに現れたという。そして、初対面の女性に対して、「過去の愛人には月50万円のお小遣いとクレジットカードを渡していた」などと告げたそうだ。

「バフェットの下で働いていた」「僕はお金と権力がある」

また自分の経歴については、「昔、電通で働いていた」「若い頃はウォーレン・バフェットの下で働いていた」「これまでに丸の内やシンガポールで事業をしていた」などとウソを並べ立てたという。世界的な投資家の名前まで出すとは・・・。

さらには「僕はお金と権力がある」と強調し、女性を信用させていったとのこと。結局、早川容疑者と”愛人契約”を結ぶことを決めた被害者の女性。4日後のクリスマスイブには、新宿区の別の老舗高級ホテルで、早川容疑者と再会したという。

このホテルの部屋が、”詐欺”の現場になった。早川容疑者は、女性に対して、愛人の”お手当”として、月50万円を渡すことを持ちかけた。そして、女性のクレジットカードの請求先の口座を変えると提案してきたという。

「カード会社と繋がりがある」 暗証番号も聞き出す

要は、クレジットカードの引き落とし用の口座を、早川容疑者の口座に変更するということ。となると、女性がカードで利用した代金は、早川容疑者の口座から引き落とされることになる。そもそも、そんなことが可能なのか。

ところが早川容疑者は、「カード会社の偉い人と繋がりがあるから」と言って信用させたそうだ。最終的に、その場で、クレジットカード2枚を渡してしまった女性。早川容疑者は、「請求先を変えるには暗証番号が必要だ」などのだまし文句で、住所などの個人情報を聞き出すことに成功したという。

この日、早川容疑者は、女性に、食事代・タクシー代として現金4万円を渡した上、シャネルの香水をプレゼント。2日後の26日には、女性の自宅の郵便受けに、クレジットカード2枚が返却されていた。このカードは、わざわざ高級百貨店の紙袋に入れられていたそうだ。

「愛人手当」振り込まれず カード被害150万円

ここまでくると女性も、完全に、早川容疑者のことを信用していたのではないか。しかし、すでに、この時点で、女性のカードは勝手に使われていた。90万円分のショッピング、キャッシングで50万円の借り入れ、電車の回数券12万6000円分。被害額は150万円余りにのぼった。

早川容疑者は、ホテルの部屋で、クレジットカードを受け取った際、「システムの都合上、支障が出るから、利用履歴の検索はしないでほしい」とお願いしていたという。途中で”詐欺”が発覚しないよう、念を押していたという訳だ。

年が明けて2022年を迎え、女性は、”愛人手当”が振り込まれないことを不審に思い始めていた。早川容疑者とはLINEの連絡も途絶えたという。この段階になって、クレジットカードの利用履歴を確認したところ、身に覚えのない”買い物”などが発覚。1月9日、女性は新宿署に出向き、被害を相談したという。

”詐欺師”が犯した2つのミス

新宿署は、詐欺事件として捜査を始めたが、早川容疑者が、”詐欺師”として、決定的な"ミス"を犯していたが明らかになる。老舗高級ホテルにチェックインする際、新型コロナウイルスについてのアンケートに答えていたのだ。

そのアンケート用紙には指紋が残されていた。新宿署が調べたところ、過去に、同じような事件で検挙されていた早川容疑者の指紋と一致。さらにホテルの防犯カメラに、早川容疑者の姿が映っていたことなどから、新宿署は、詐欺容疑での指名手配に踏み切った。

そんな中、今月13日、早川容疑者が2回目の”ミス”を犯した。老舗高級ホテルに現れ、一人で食事をしていたというのだ。ホテルの従業員が、早川容疑者の顔を覚えていた。すぐに「この間、話していた男が来ています」と新宿署に通報。捜査員が駆けつけて、早川容疑者を任意同行し逮捕した。

容疑否認「その女性は知らない」 他にも3件余罪が?

調べに対して早川容疑者は、「分かりません」「ホテルの防犯カメラに映っているのなら行ったんでしょうが、その女性は知らない」などと容疑を否認している。

実は、この他にも同じような被害が3件確認されているという。このうちの1件は、女性が部屋でシャワーを浴びている隙に、カードが盗まれる被害だった。新宿署は、いずれも早川容疑者が関与している可能性があるとみて、余罪を追及する方針だ。

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社会部
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