仙台放送では東日本大震災の月命日にあたる毎月11日に、被災した人の声を聞き、その想いを伝えている。今回は子供3人を亡くした宮城・石巻市の遠藤綾子さん。

震災当日、子供たちは自宅で帰りを待っていた…

石巻市渡波。津波で流された家の跡地に桜が植えられている。

この記事の画像(13枚)

遠藤綾子さん:
最初、サクラなんて目に入らなかったけど、なんとなく下ばかり見ていたから、上を見て、サクラ咲いたねと言えるのはいいな。3人のうち2人は成人して『20歳になるのでお酒が飲めるよね』って、お酒をお供えに置いていってくれる人がいる。そっか、そんな歳になったのかという感じ

石巻市の遠藤綾子さん(53)。東日本大震災の津波で長女の花さん(13)、長男の侃太さん(10)、次女の奏さん(8)を亡くした。

遠藤綾子さん:
一番上の花は、私に一番似ているのかなと思っていた。中一だったので反抗期気味で、よくぶつかってはいたんですけど、頑張り屋さんのところもあった。真ん中は男の子で、一人だけ男の子だったんですけど、ちょっと弱気なところもあったが、足が速くて自信がついたあたりから、ちょっと変わってきて。優しい子ですね。下は3番目として生まれてきた強い子で、たくましい子で、正義感が強くて、自由奔放で、でも優しい女の子だったと思う

震災の発生当日、石巻市内の職場にいた遠藤さん。子供たちは自宅で遠藤さんの帰りを待っていた。津波により自宅は基礎部分を残して押し流され、遠藤さんが子供たちと対面できたのは3日後だった。

遠藤綾子さん:
親戚が「お子さん2人はだめで寝かされているから」と…。ごめんなさい、まだこの話をするときはしんどい。当日の話をするのはなかなか…

震災後、2年間は何も手につかなかった。

仲間に支えられて

遠藤綾子さん:
一日も思い出さない日は絶対なくて、いろんなところで、写真を見なくても、その場所に行かなくても、こうだったな、ああだったと思い出すきっかけがいっぱいあって、一生こんなふうに生きていくしかないんだなと思ってからは変わった。今は大きいのは「仲間」が、話を聞いてくれる人が増えた

話を聞いてくれる「仲間」。自宅跡地で始めた、ある活動のメンバー。

着なくなった着物からメッセージカードを作る、「イシノマキモノ」。渡波で被災した人など、遠藤さんが声をかけた女性8人がつくり、国内外に届けている。「家のこと」や「心配ごと」。週に1回の活動のメインはおしゃべり。

遠藤綾子さん:
「こんな気持ちなんだ」と言うと、「私もそういうことあったよ」とか「こういう思いもしたよ」と伝えてもらえるから、すごく支えられていますね

東日本大震災の発生から4月11日で11年1カ月。子供たちがいた自宅の跡地には、きょうもにぎやかな笑い声が響く。

遠藤綾子さん:
亡くなった子供たちが「お母さん、またこんなことやっているよ」「こんなこと言っているよ」って、「お母さんらしいね」って、笑ったり、あきれたりしてくれたらいいと思う。あんまりこうしようとか、ああしようとか決めていないが、やらせてもらえることがあるなら、それをやっていきたいな。一生懸命やっていきたい

(仙台放送)

仙台放送
仙台放送

宮城の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。