漆黒の暗闇の中で極上の睡眠を体験できるイベントが都内で始まった。暗闇のエンターティメントを提供してきたダイアログ・イン・ザ・ダークとベストセラー「最強の睡眠」の著書を持つ睡眠研究家の西川ユカコさんが初めてコラボをした「午睡」。
「午睡(お昼寝)」は我々にどんな効用があるのか?取材した。
昼寝が仕事のパフォーマンスを上げる
「私は仕事のストレスで身体を壊した時期がありましたが、会社の仮眠室で昼寝をするようになってから毎日働けるようになったんです」
そう語るのは昭和西川株式会社代表取締役副社長で睡眠研究家の西川ユカコさんだ。
「お昼寝で覚醒度が上がり、疲労感が減ることが世界的に実証されています。オフィスで睡眠を取るには、外の音がわずかに聞こえるスクリュータイプの耳栓と、アイマスクの代わりにハンカチを目元において、目覚ましをセットするといいと思います」
この記事の画像(5枚)20分以上寝ると身体がだるく感じる
とはいえビジネスパーソンは忙しい。では午睡の効率的な睡眠の取り方はあるのだろうか?
「午前中でもいいのですが、体内時計の関係で午後1時から3時くらいが、お昼ご飯を食べなくても生理的に眠くなる時間帯です。ですからその時間帯に寝るのが効率的ですね」(西川さん)
「寝る時間は10分から20分」だと西川さんは続ける。
「それ以上寝ると深い睡眠に入るので、逆に頭がぼーっとしたり身体がだるく感じたりします。55歳以上の人は30分まで大丈夫です。男女差はありませんね」
移動中寝落ちしない身体でいることが大切
一方で西川さんがお薦めしないのは「午後3時以降のうたた寝」だ。
「一般的に午後3時以降のうたた寝は夜の睡眠の質が下がって、寝つきにくくなったり眠りが浅くなったりしますので、なるべくしないほうがいいです」
また「移動中の寝落ちも要注意だ」と西川さんは言う。
「電車など移動中に寝落ちする場合は要注意です。通常眠りに入るまでは10~20分程度はかかるはずですが、寝落ちするのは日常の睡眠が足りないからで、今寝ないとだめだと気絶に近い状態で寝ているのです。睡眠負債がたまっている証拠で、自分の健康を長い目で見ると、寝落ちしない身体でいたほうがアルツハイマー型認知症、脳や心臓の疾患のリスクも下がります」
「暗闇で寝てみたいというお客さんが多くて」
ダイアログ・イン・ザ・ダークを主催する志村季世恵さんも、「いまなぜ午睡なのか」をこう語る。
「コロナによって不安感やストレスがいつの間にかたまり、眠れないという人が増えていることを感じています。睡眠不足は判断力を鈍らせ仕事も煩雑になったりミスも起きますよね。やはり眠りは大事なので、せめてお昼寝をしたらいいと思っていたんです。そのころ暗闇で寝てみたいというお客様が多くて、ユカコさんと出会って睡眠をテーマにやってみようとなりました」
ただ実際イベントが始まるまで、志村さんも少し心配があったという。
「正直言って、暗闇の中で寝られるのかなって思っていたんですけど、逆に深い眠りですね。やはり五感を広げていくのには、寝るときのように軽くリラックスして気持ち良い状態を作ることが必要です。10分でいいので昼寝をして、少し休んでみようとすることがいいんじゃないかなと思います」
漆黒の午睡が心と身体を整える
西川さんも暗闇の中の眠りについてこう語る。
「ダイアログを体験したとき、暗闇の中で自分が3歳ごろののびのびと自由で楽しかった本当の自分に出会えた感じを体験して。そこでたまたま志村さんからお誘いを受けて。暗闇の中で本来の自分に出会えて、お昼寝して自分を整えるってすごいですよね」
筆者も「午睡」を体験した。20分程度の睡眠の中で、深い眠りと幼少期の思い出が繰り返される不思議な時間だった。午睡は自身の心と身体を整えるためにも日常習慣にしたいと感じている。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】