新潟市西蒲区に残る、築250年以上の茅葺きの古民家。その古民家を中心に広がる人々の輪を取材した。
保存会が守ってきた“茅葺き屋根の家” 修繕には多額費用も
新潟市西蒲区福井。集落に唯一残った茅葺き屋根は、1998年から有志により保存活動が始まった「旧庄屋佐藤家」だ。

この佐藤家の保存活動を行うNPO法人は2021年、集落の歴史を写真集として出版しようと準備を進めていた。

写真集を編集するのは、保存会の理事・唐澤頼充さん。
福井旧庄屋佐藤家保存会 唐澤頼充さん:
写真集の利益は、全て佐藤家の修繕費に充てられる

保存会が大切にしているのは、みんなで建物を利用して楽しむこと。
しかし、保存活動が始まって20年…
福井旧庄屋佐藤家保存会 唐澤頼充さん:
茅葺き屋根の寿命は20年ほどと言われている。業者に工事をすべて依頼すると、2000万円くらい必要

茅葺き屋根の修繕には職人の技術が必要で、費用を分散するため工事を3期に分けて進めている。
「絆をつなげる大切な存在」古民家から広がる人の輪
2022年3月、佐藤家を楽しむ人たちが屋根の材料となる茅を集めていた。屋根の修繕費用を少しでも減らすためだが、参加する人の思いは費用削減だけではない。

保存会メンバー:
「やらなければ」ではなく、「できることをやろう」という感じ。
保存会メンバー:
佐藤家の保存はやっかいかもしれないけど、やっかいではない。みんなの絆をつなげる大切な存在

保存会の理事・唐澤さんは長野県出身だが、佐藤家の活動をする中で同じ思いを抱く源子さんと2015年に結婚して福井集落に移住。

さらに、そんな夫婦の姿に憧れ、風間信均さんと直子さんも2019年に結婚と同時に福井集落へ移住した。
風間直子さん:
友達・家族も近くにいたり、畑作業もできたり、地域の方から色々教われそうな環境だったので、ここに住んでみたいと思った

直子さんの希望で移住を決めたが、夫の信均さんも佐藤家での交流を通して、気持ちに変化が生まれたという。
風間信均さん:
仕事や家庭だけではない、つながりがありがたい

92歳の職人も…様々な世代が参加する茅葺き修繕作業
4月になり、佐藤家では屋根の葺き替え作業が行われていた。

福井集落に暮らす茅葺き職人、金子彦治さんは92歳。
茅葺き職人 金子彦治さん:
若い人たちが一生懸命なので、長く茅葺き屋根を残したい

職人をまとめるのは40歳の大崎悠さん。
茅葺き職人 大崎悠さん:
佐藤家の茅葺き屋根は、金子さんの線で美しい。私も金子さんのような茅葺き屋根がつくれるようになりたい

その大崎さんの指導を受けながら作業を進めるのは、福島県出身の小柴康隆さん(27)。3月まで柏崎市で地域おこし協力隊として、茅葺き屋根の宿泊施設などで働いていた。
小柴康隆さん:
「日本の文化を残す仕事をしたい」と、10代の頃から思っていたので、少しずつ目標に触れることができている

手間のかかる古民家保存…そこには人が集まり協力する楽しさも
4月9日、この日は行楽シーズンに佐藤家でお客さんを迎えるため、みんなで大掃除。

保存には少し手間のかかる茅葺きの古民家だが…
福井旧庄屋佐藤家保存会 唐澤頼充さん:
みんなで集めた茅が屋根に使われるのは不思議な気持ち

保存会のメンバー:
大変だからこそ人が集まって、少しずつ力を出し合って保存していくというところに、コミュニティーが生まれるのかなと思う。これからもずっと続いてほしい

そして、佐藤家の保存費用を捻出するための福井集落の写真集が完成した。

福井旧庄屋佐藤家保存会 唐澤頼充さん:
家を守るのを口実に、人と一緒に地域の自然などを楽しみたい。佐藤家でたくさん遊んで、地域が好きな次の世代が増えるといい

3期に分けた葺き替えは5月に完了予定。歴史に新しいページを重ねる佐藤家を春の風が優しく包む。
(NST新潟総合テレビ)