家庭ごみのアルミ缶持ち去りを違反行為としている福岡市。近年、苦情件数が増加したことを受け、2022年度から夜間パトロールの強化に乗り出した。
ウクライナ情勢の影響によるアルミ価格の高騰が背景にあるとみられている。
令和3年度から増加傾向 中国人男性「これは仕事」
巡回指導員:
もう1回尋ねますけど、きょう(ごみを)取ったりしてないですか? この注意書きは、お兄さんにお渡ししておきますね

深夜、福岡市内で行われている、家庭ごみのアルミ缶持ち去りを監視する夜間パトロール。2014年に条例を改正し、持ち去りを違反行為とした福岡市は、2022年度から夜間パトロールの強化に乗り出した。

福岡市環境局収集管理課・花田昌大課長:
条例改正施行後は、持ち去り行為に対する苦情件数が大幅に減少していたんですけれども、令和3年度から増加傾向が大きくなっています
持ち去り行為を禁止する条例がなかった2013年、福岡市の街中では大量のアルミ缶などを積んだトラックが走り回っていた。

中国人男性:
私の仕事です。これは仕事
――売るんですか?
中国人男性:
はいはい。6000円くらいになる

ロシアからの物流がストップし、価格が高騰
回収したごみの中からアルミなどを分別し、業者に売却している福岡市。市の歳入となる貴重な財源を守るため、2014年にアルミ缶などの家庭ごみの持ち去りを禁止する条例を施行した。

これを受け、市に寄せられていた持ち去りの苦情件数は減少したが、2021年度、その数が再び増加に転じたのだ。

一体なぜなのか。県内でアルミ缶の買い取りを行う業者に話を聞いた。
アルミ缶の買い取り業者:
アルミですね、この1年ずっと上がり続けて。買い取り価格はもともと100円もなってないのに、今は1kgを200円で買い取りしています

ロシア軍によるウクライナ侵攻で、アルミの輸出国であるロシアからの物流がストップ。需要に供給が追いつかず、アルミの価格が高騰しているというのだ。
アルミ缶の買い取り業者:
値段が高いですから。みんな、かき集めて持って来るんですね
福岡市は4月から、委託業者に依頼している夜間の巡回パトロールをこれまでの2台4人体制から、4台8人体制に倍増して監視の強化に踏み切った。
アルミ缶の山をトラックに積み…直撃に「壊すよ」
パトロールカーが走るのは、福岡市の閑静な住宅街。不燃ゴミの日、家の前にはアルミ缶が入ったごみ袋が置かれている。

実際に持ち去り行為はあるのか? 地域住民に話を聞くと…。
地域住民:
(持ち去る人)いますね。きょうも見ましたけど、軽トラックで。ボンボンって荷台に積んで
指導員が、地区内に捨てられているごみ袋の場所や数をパトロール車内から確認する。

巡回指導員:
これはすごいですね、やられますね。取るならあれでしょうね

指導員が目をつけていたアルミ缶の山。取材クルーが待っていると、その前に1台のトラックが停車した。降りて来た人物は、ごみ袋を1つ手に取って荷台に積んだあと、車に乗り込んだ。

記者が直撃取材すると…。
記者:
今、何を持っていかれましたか?
男性:
(機材を)壊すよ

記者:
何で持っていかれたんですか?
取材クルーの問いかけには応えず、男性はその場を足早に去って行った。
同時に2人?いたる場所で不審な姿
さらに、集合住宅に近づくと…。カメラが捉えたのは、男性がトラックの荷台に豪快にごみ袋を投げ入れる瞬間だった。

その後、荷台からこぼれたアルミ缶を拾い、ごみ置き場から新たな袋を持ち去ろうとしたが、カメラに気付いたのか取るのをやめて去って行った。

午後10時。指導員は監視の目を休めることはない。団地から出てきた不審な男性を見つけ、声をかけていたその瞬間、別の男性がアルミ缶が入っているとみられる袋を持ち去る姿があった。

巡回指導員:
先ほどの方は、お兄さんのお連れの方でないですね?
男性:
違うですね、僕は1人です
巡回指導員:
分かりました。今回は、お兄さんが言ったことを我々は信じますから

持ち去り行為が違反行為にあたることを指導員が注意喚起したあと、男性は地区内から去って行った。
巡回指導員:
我々がパトロールをしている時間帯は、多少は減少傾向にあるんですけども。根気強く理解をしていただきたい

アルミの価格が高騰する中、増える家庭ごみのアルミ缶の持ち去り。福岡市は、違法行為を見かけた際は直接声をかけず、環境局や近くの区役所に情報提供してほしいとしている。
(テレビ西日本)