「早起きは三文の徳」ということわざがあるが、これに反し、早起きが“損”につながる可能性があることが分かった。

調査の結果、「夜型」の生活をしている人、つまり「夜型人間」が“早起き”をした場合、生産性の低下につながる可能性があるというのだ。調査を行ったのは、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥兼任講師らの研究グループ。

全体では1時間の“遅寝”で生産性が0.29%低下

「朝型人間」と「夜型人間」の睡眠の問題と生産性との関連性を調査し、「朝型人間」の“遅寝”と、「夜型人間」の“早起き”が、生産性低下と関連していることを3月28日に明らかにした。

調査対象は、IT、官公庁、金融、放送業、コンサル業などの第三次産業42社の従業員。2017年から2019年にかけて、質問紙の調査に回答した9264人のうちデータ利用に同意した8155人を分析の対象とした。調査対象の平均年齢は36.7歳。

質問の回答を分析した結果、全体では“遅寝”と“早起き”がそれぞれ、生産性の低下と関連していることが分かった。具体的には、1時間の“遅寝”で生産性が0.29%低下し、1時間の“早起き”で0.14%低下することが明らかになった。

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また、この傾向の有意性は「朝型」と「夜型」で異なることも示された。

「朝型人間」にとっては“起床時刻”は生産性の低下と関連せず、“入眠時刻の遅れ”のみが関連した。

一方、「夜型人間」は、“入眠時刻”は生産性の低下と関連せず、“起床時刻の早さ”のみが関連したことが分かった。具体的には、「朝型人間」は“入眠が1時間遅れる”と0.48%、「夜型人間」は“起床が1時間早まる”と0.26%、それぞれ、労働生産性が下がるとしている。

この結果を受けて研究グループは、“1時間の早起きで生じる生産性の低下”を金額として示していて、その金額はOECDの平均賃金換算で年額8000~13500円程度。これは営業日換算で「1日約三文の損失に相当します」としている。

「朝型」の“遅寝”と「夜型」の“早起き”が生産性低下と関連する理由

今回の調査では「朝型人間」の“遅寝”と「夜型人間」の“早起き”が、それぞれ、生産性の低下と関連していることが分かった。この理由としては、どのようなことが考えられるのか?

またこの調査結果を踏まえ、「朝型人間」「夜型人間」はそれぞれ、生産性を維持するためには、どうすればよいのか?

今回の調査に携わった、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥兼任講師に話を聞いた。


――調査を行おうと思った理由は?

体内時計に逆らって、寝起きすることの弊害、あるいは、体内時計に合わせた時間に寝起きすることのメリットが、近年、知られています。

特に、世界的に広く行われている取り組みとして、本来、体内時計が夜型になっている思春期世代において、今の学校の始業時刻は早すぎるため、その学校の始業時刻を遅らせると、生徒の成績が上がったり、心身の健康状態が改善するということが広く明らかになっています。

そこで、一般の社会人においても、体内時計と睡眠スケジュールと不調や生産性との間に関連が見られるかどうか、体内時計にあった生活をすることでメリットがあり得るのかどうかを明らかにするために、今回の研究を実施しました。


――「朝型人間」の“遅寝”と「夜型人間」の“早起き”が、それぞれ、生産性の低下と関連していることが今回の調査で分かった。この理由としては、どのようなことが考えられる?

「無理をしている」ということだと思います。「朝型人間」は、夜の早い時間に眠くなり、休息に入りたいモードに入っているのに、眠れないことが不調を招きます。

また、「夜型人間」は、まだ眠って休息していたい時間に起こされることで不調を招くということです。

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――「朝型人間」の“早起き、「夜型人間」の”遅寝“は、それぞれ、生産性の低下と関連しない。こちらの理由は?

「朝型人間」は体が放っておいても、勝手に“早起き”をする、「夜型人間」は放っておいても勝手に“遅寝”をする傾向が関係している可能性があります。

「朝型」「夜型」どちらの生産性が高いのかは不明

――生産性の低下の数値は「夜型人間」の“早起き”よりも「朝型人間」の“遅寝”の方が若干高い。この理由としてはどのようなことが考えられる?

これに関しては分かりません。そもそも、これらが本当に有意な差かどうかについても、統計的に分析をしていませんので分かりません。


――リリースには「夜型傾向があると睡眠が悪化しやすく、睡眠が悪化すると生産性が低下する」とある。 夜型の人は、朝型に生活のリズムを変えた方がよい?

そもそも変えられません。「朝型」「夜型」はもともと、年齢と生まれつきで大体、決まってしまっているものです。

朝に極力、明るく、夕方以降は極力、暗くする生活をすれば、体内時計は多少、早まりますが、「夜型」の人が「朝型」になるような変化を起こすことは困難です。「夜型」の人が、無理に「朝型」の生活をすると、この研究にあるように不調を起こします。

イメージ(夜型人間)

――「朝型」と「夜型」、そもそも、どちらの方が“生産性が高い”ということは言える?

分かりません。元々の生産性はどちらが高いのかは不明です。

「朝型」「夜型」が生産性を維持するためには…

――調査結果を踏まえ、「朝型人間」「夜型人間」はそれぞれ、生産性を維持するためには、どうすればよい?

「朝型人間」は夜ふかしをしないこと、遅くまで残業したりして眠るのを遅くしないことが大切です。

一方、「夜型人間」は無理に早起きしないこと、始業時刻を遅くしていいなら、遅くするなどして、しっかり睡眠をとることが大切です。


――志村さんは、「朝型人間」「夜型人間」、どちら?

私は夜型です。


――今回の調査結果を受け、志村さんは生産性を維持するために、どのような生活のリズムを作っていこうと考えている?

私自身は、しっかりと睡眠を取る生活を続けようと思っています。

「朝型の人は本当に夜遅くまで起きているのがつらいし、起こしていると不調を起こす」ということが分かったので、これからは「朝型人間」の人が、夜遅くまで無理をして仕事をしたり、飲み会に付きあったりしていたら、「早く帰って寝た方がいいよ、つらくなるよ」と言って、優しくしようと思いました。


早起きは良いものとされているが、今回の調査では、労働生産性においては一概にそうではないことが示された。労働生産性を維持するためには、「夜ふかししないこと」「無理に早起きしないこと」、そして「良好な睡眠をとること」が重要であり、こうした生活をなるべく心がけてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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