日本出発を翌日に控えた4月7日、忙しいスケジュールを縫ってインタビューに応じてくれたのは、トランプ政権下で駐日大使を務め、2021年に上院議員に選出された共和党のウィリアム・ハガティ議員だ。
日本の桜が見たい!
駐日大使を離任してから日本を訪問するのは今回が初めてとなる。約2年8か月ぶりの“帰還”だ。花見シーズンは過ぎてしまったが、遅咲きの桜を一目見たいと話す。

ハガティ氏は、8日にワシントンを出発し訪日する。東京では、岸田首相をはじめ政府要人と会談しウクライナ情勢を巡るロシアへの対応について協議するという。「日本はロシアへの制裁において素晴らしい役割を果たしているし、日本とアメリカは常に強固な連携ができている」と話すハガティ氏。日米の連携によって対ロシア制裁は効果を発揮していると指摘する。
また、台湾統一を目指す中国の軍事脅威が高まるなか、ハガティ氏は日本の自衛隊とアメリカ軍の合同演習などで軍事的存在感を示すことが、中国へ「明確なメッセージを送ることになり、地域の安定につながる」と話し、日米が安全保障面で緊密に協力することが重要だと強調した。

上院議員2年目にして外交政策通で「存在感」
ハガティ氏は2021年1月に上院議員に就任してわずか1年ほどで、持ち前の外交政策への豊富な知識で存在感を示している。ウクライナを巡るロシアへの対応についても、老練の政治家、バイデン大統領にも臆することなく問題点を次々に指摘。アメリカ政界の”ご意見番”的な地位を獲得しつつある。
3月26日にバイデン大統領が外遊先のポーランドで演説し、「プーチンを権力の座にとどまらせるわけにはいかない」と発言した。プーチン大統領の失脚をアメリカが画策しているともとれる発言をした際には、アメリカのテレビ番組に出演し「バイデン大統領は自分の発言についてよく考える必要がある。こうした発言はロシア政府に体良く利用されるだけでなく、プーチン大統領をさらに窮地に追い込む危険な発言だ」と批判した。さらに、「アメリカの強さに裏打ちされた重みのある発言は重要だが、その場しのぎの発言要らない」とバッサリ。元外交官としてバイデン大統領の外交手腕に厳しい視線を注ぎ続けている。

日本の政界や経済界と交流
ハガティ氏は今回、超党派の議員を引き連れて、東京を皮切りに京都や名古屋を回り、日本の政府要人だけでなく経済界など幅広い人脈と意見交換する予定だ。アメリカで外交政策通として存在感が高まっているハガティ氏。舌鋒鋭い御意見番を味方につけておくことは、今後の日本にとっても損はないだろう。

ウクライナ危機では、力ずくで現状が変えられていく有様を世界が目の当たりにした。今振り返ってみれば、ロシアや中国、北朝鮮と海を挟んで隣国の日本の安全保障環境は実はギリギリのバランスで維持されているがとても脆弱だといえる。混沌とする世界情勢の中でも明確になっているのは日米同盟の重要性であり、ハガティ氏のように日本と関係の深いアメリカの政治家も大切にしていく必要がありそうだ。
【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】