都市部などに住む子供が、地方に移り住んで学ぶ「山村留学」。いまこの山村留学の需要が高まっている。山村留学の魅力とは。

【山村留学】主に自治体やNPOが運営を担い、小中学生が自然豊かな地方でホームステイをしたり、寮で生活しながら現地の学校に通う。期間は基本的に1年。寮には指導員が置かれる場合も。一定の費用を月々保護者が支払う。

子供2人が「山村留学」している女性 感じた成長

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田んぼに囲まれた細い道を並んで歩く子供たち。「山村留学」の体験会だ。山村留学とは子供が自然豊かな農村などに移り住み、その地域の学校に通いながら、様々な経験を積むことができる制度だ。

静岡県内でもこの制度を実現しようと体験会を主催したのが、天野多美子さんだ。体験会に先立ち、2021年10月には静岡市で説明会を開いた。

天野多美子さん:
一番大きいのはやはり、かけがえのない思い出や体験。そして自然体験やアウトドア、田舎暮らしができることです

普段は生命保険会社に勤める天野さん。仕事のかたわら、山村留学を広める活動をしている。伝えたいのはその魅力だ。

天野さん:
中学3年生と小学校5年生の息子が2人おり、その2人の子供たちがいま長崎県の壱岐島に離島留学をしています

親元を離れ、里親のもとで生活する息子たち。その成長を肌で感じているからこそ、大勢の人に山村留学を勧めたいと考えている。

山村留学中の天野さんの息子
山村留学中の天野さんの息子

天野さん:
タコをモリで突いて自分でとり、その日の夕飯に食べたんです。そんな海の楽しさを体験しています。1年経って今すごく感じているのが、静岡にいた時は「俺は無理だから」とかチャレンジしないで逃げてしまうことが正直多かったと思います。いまは「やってみればできるかも」「やってみたらできた」「今回駄目だったけど次こそ」という思いにつながっている

「留学」受け入れ自治体は少ない

全国山村留学協会によると、山村留学している子供は2020年までの5年間で約1.4倍に増加している。特にテレワークの普及など働き方の変化も影響して、子供と親が一緒に留学したケースは2020年過去最多の223組にのぼった。
需要が高まっているものの、現在受け入れているのは全国67の市と町だけだ。静岡県内では山村留学を受け入れている自治体はない。

親子で山村留学するケースも増加
親子で山村留学するケースも増加

田舎の小学校親子見学ツアー

こうした中、静岡・掛川市の山間地・倉真で開かれた親子体験会。山村留学の魅力を伝えるため、まずは地元の小学校を見学するツアーだ。

檜林正礼校長:
ここが、全校児童が使ってもたくさん余るという靴箱です

倉真小学校の全校児童は58人。静岡市や浜松市など都市部の小学校に通う子供たちは教室の机の少なさに驚きながらも、そこに魅力を感じた子供もいたようだ。

校長:
何人いるんだっけ?学級は

子供:
32人です!

校長
ここは15人だから、30人の学級よりも1人1人に勉強やお話がよくできるの

子供:
知ってる。それがいいんだよなあ

学校を見学した後は、近くの畑で綿花摘み。都市部では機会が減る、自然と触れ合う体験だ。

住民:
持って行って(綿花を)まいてもいいんだよ

子供:
家行って、まこう

他にも地元の小学校伝統の正月飾り作りを体験したり、外の遊具で遊んだりと、山間地らしい1日を過ごした。

子供:
自然がいっぱいで、いろんなものもあってすごい所だと思いました。虫とかいっぱい捕まえたり、植物いっぱいあって楽しみになった

体験を見守った保護者も、外で自由に活動する子供たちを見て、山村留学の魅力を感じていた。

親子で綿花の収穫
親子で綿花の収穫

保護者:
街中だと、どうしても安全とか制約が出てしまうので、こういう所にいると自然と学んだり遊んだり、子供はしやすいと思いました。こういう選択肢があると知ることができただけで、これからの息子の選択肢が広がってよかった

天野さん:
率直にやってよかったなというのが一番。目がキラキラして楽しそうなんですよね。楽しんでいるのが伝わってきて、いつもと違う環境の学校を見て子供たちが感動しているのを見て、私もちょっとうれしかったです。他の県の人や静岡県内の人に、そういう選択肢がある、静岡で体験ができることを知ってもらいたいと思っているので、広まっていけばいい

のびのびと遊ぶ子供たち
のびのびと遊ぶ子供たち

学びや遊びなど様々な面で魅力が詰まった山村留学。少子高齢化が進む地方の活性化を目指すねらいもある。
寮の運営費用や子供を預かる大変さなどがあり、自治体の協力に課題はあるが、この制度が広く知られ、子供たちの成長のきっかけとなることを楽しみに、天野さんは活動を続けている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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