政府は、3月19日から21日の3日間の日程で岸田首相がインドとカンボジアを訪問することを発表した。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中でのアジア訪問について、政府関係者は「ウクライナ情勢が緊迫する今だからこそ、直接対話を積み重ねる必要がある」とその意義を強調するが、背景には中国への警戒感の高まりがある。

岸田首相は、3月19日~21日で、インド・カンボジアを訪問する
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「中国はロシアの動きを観察」

ロシアによるウクライナへの「力による一方的な現状変更」の現実を目の当たりにし、政府内では「ロシアと同じ行為を中国に許してはいけない」との危機感が強まっている。ある政府関係者は「中国はいまロシアの動きをじっと観察している」と指摘する。ロシアの行為を国際社会が防げなかった場合、台湾や沖縄県の尖閣諸島周辺で海洋進出を強める中国の「力による現状変更」についても、国際社会が止められない可能性を示すことにつながる。

政府高官が「今のウクライナ情勢が歴史的なターニングポイントになりうる」と言及するように、ロシアのウクライナ侵攻が中国に“飛び火”すれば、今後の日本の外交安全保障に重大な影響を及ぼす危険性がある。

ロシア対応が不調なら中国の思うつぼに

岸田首相は最初に訪問するインドで、モディ首相との会談を19日に予定している。インドは、日本と共に、中国の海洋進出を念頭に連携するアメリカ、オーストラリアとの4カ国の枠組み=クアッドのメンバーで、6月末までに4カ国による対面での首脳会議を日本で予定している。政府関係者は「次の対面会議は日本が主催する。だからこそ事前にモディ首相と直接話して意見交換をしておく必要がある」と今回の首脳会談の意義を強調する。インドは中国と領土問題を抱えているため、「クアッド」の各国とも連携する動きを見せている。

一方で「クアッド」は、中国だけでなく、ロシアへの対応でも連携すべく動いている。3月3日には4カ国によるテレビ首脳会議を開催し、「ウクライナ危機にそれぞれ対応する中で、コミュニケーションのためのチャンネルを提供する新たな人道支援や災害救援メカニズムを立ち上げること」などでは一致したものの、「ロシアへの非難」といった直接の言及は避けた。

背景に透けて見えるのは、インドのロシアへの配慮だ。政府関係者は「インドは中国の影響力を薄めるため、ソ連時代からロシアと友好関係を築いてきた。武器輸入も半分以上をロシアに依存するなどロシアを簡単には手放せないのが実情だ」と説明する。インドは領土問題を抱える中国をけん制するために、大国ロシアと友好関係を築いてきた歴史があり、国連でのウクライナ侵攻を巡るロシア非難決議を棄権している。

さらに、インドはロシアから原油を格安で購入する検討を進めているとの指摘もある。インドによるロシア原油の購入が実際に行われれば、各国がロシアへの経済制裁を強める中で、制裁の効果が弱まりかねない上に、「クアッド」の連携にも影響が出るおそれがある。

「もしロシアからインドが原油を買い増すのであれば、クアッドの連携を崩したい中国の思うつぼだ」(政府関係者)と懸念する声があがる中、ロシアへの対応でインドと一致点を見いだせるかが焦点となる。ただ政府内からは「めざましい成果があげられるわけではないだろう」と厳しい見方も出ている。

インド・モディ首相

東南アジア諸国にも働きかけ強める

岸田首相はインドに続いて、20日にカンボジア入りし、フン・セン首相との首脳会談を予定している。カンボジアは2022年のASEAN(東南アジア諸国連合)の議長国を務める。政府関係者は「ASEAN各国はどちらかというとロシアに対しての反応が弱い」としていて、ASEAN各国との外交努力の必要性を指摘している。また別の関係者も「ASEANの中ではベトナムやラオスなどがロシアと関係が深く、日本として議長国と緊密に連携し働きかけて行く必要がある」としていて、岸田首相はウクライナ情勢を巡り、ASEAN各国との連携を強化したい考えだ。

一方で、カンボジアはASEAN諸国の中でも、中国と関係が近いとされる国の一つだ。「カンボジアがこれ以上中国に寄っていかないよう、外交努力が不可欠」(政府関係者)と指摘するように、首脳会談では「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を確認し、中国の動きをけん制する狙いもあるとみられる。

岸田首相の手腕問われる外遊に

ロシアによるウクライナ侵攻を巡って、岸田首相は当初から「主戦場はヨーロッパ」と言いながらも、「こうした力による現状変更を許すということになると、アジアにも影響が及ぶことを十分考えておかなければならない」と懸念を示しているように、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。同じアジアの一員であるインドとカンボジアとの外交を通して、ロシアに対する連携強化で一致点を見いだせるのか、さらには中国をけん制することができるのか。岸田首相の手腕が問われる外遊となる。

(フジテレビ政治部・官邸クラブ 亀岡晃伸)

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