男性の家事・育児の時間、コロナ前と比べてほとんど変わらず
コロナ禍で在宅勤務が定着し、飲み会は減った。しかし、働く男性は、家での時間が増えたにも関わらず、家事や育児にかける時間はコロナ前と比べてほとんど変わっていない。このような意外な結果が東京都の調査で明らかになった。
2021年6月に東京都は男性の家事・育児の参画状況について、未就学児を持ち、配偶者と同居している男性1000名、女性1000名にアンケート調査をした。
その結果、1日あたりの家事・育児時間の週全体平均は、男性は3時間34分、女性は8時間54分だった。コロナ前の2019年の調査では、男性は3時間33分、女性は8時間34分で、家事・育児時間は男性が1分増加、女性は20分増加した。
一方で、コロナ前と比べ、平日の在宅時間のうち仕事以外に使える時間が増えたか聞いたところ、男性は47.3%、女性は32.4%が増加したと答えている。
また、仕事以外に使える時間が増えた人の中で、平日の「家事」にかける時間が増加したという人に、その理由を聞いたところ、「通勤時間や残業時間等仕事にかける時間が減ったから」が59.8%が最も多かった。次いで多かったのが「家庭内のやるべき家事が増えたから」で30.0%だった。平日の「育児」にかける時間が増加したという人の理由も、同じような結果となった。
この結果について、大和総研金融調査部主任研究員の是枝俊悟委員は、「家庭内のやるべき家事・育児が増加した、は女性に比べ男性の割合が低く、男性は家事・育児を積極的に実践するまでに至っていない可能性がある」と指摘する。
仕事以外に使える時間が増え、家事育児を夫婦で分担する最近の流れからは、男性の方が増えてもよさそうな気がするが、実態はまだまだ男性の家事・育児の意識の変化が必要なようだ。
そのためには何をすべきか?今回、調査を行った東京都の生活文化局都民生活部男女平等参画課の担当者に詳しく話を聞いてみた。
家族の在宅時間が増えたことで家事の総量も増加
――男性の家事・育児参画状況の実態調査はなぜ行うことにした?
令和元年度に初めて実施し、令和3年度の調査が2回目となります。本調査は、未就学児の子を持つ当事者夫婦等の家事・育児分担に関する実態や男性の家事・育児参画状況について都民の意識等を調査し、今後の施策の参考とすることを目的に実施しています。
――コロナ禍でも男性の家事育児時間が増えていない理由はどんなことが考えられる?
平日の男性の家事・育児時間は若干増加したものの、土日の家事・育児時間が若干減少するなどにより、週全体の平均で見るとほぼ変化が見られませんでした。本調査回答から、男性の家事・育児時間が増えていない理由までは明らかとなっていません。
――女性の家事育児の時間がコロナ前から20分増加したことはどんなことが考えられる?
コロナ禍前と比較して、家族の在宅時間が増えたことが家庭の家事総量の増加をもたらし、女性の家事時間が増加したのではないかと考えられます。なお、今回の結果自体はコロナ禍という特殊な状況下のため、実態把握には今後も継続した調査が必要だと考えています。
――調査結果で興味深い部分は?
「平日の在宅時間のうち仕事以外に使える時間が増加した」と回答した人のうち、男性の71.3%が「生活を重視するようになった」、65.5%が「家事(育児)に対する理解が深まった」と回答しており、在宅時間の増加が男性の家庭に対する意識に影響を与えていることが読み取れます。
あらゆる世代の都民に向け、意識改革を働きかける
――男性の家事育児の時間を増やすためにはどうすべき?
都は公表中の男女平等参画推進計画素案(※3月末に改定計画公表予定)において「テレワークの普及・定着や男性の育児休業を当たり前に取得する機運を醸成するとともに、男性が主体的に家事・育児に参画できることが重要」とし、取組の方向性として「当事者夫婦、企業、あらゆる世代の都民に向け、意識改革を働きかけ、男性の主体的な家事・育児参画に向けた行動変容を促す。」としています。
――東京都は具体的にどんな取り組みをしている?
以下のようなことを行っています。
・男性の家事・育児参画を応援するWebサイト「パパズ・スタイル」において男性の家事・育児の実践を促す、具体的なスキル・ノウハウを身に着ける情報を発信
・男性の家事・育児みんなで考え変えていくサイト「TEAM家事・育児」で企業、親から若者世代まであらゆる対象に向け意識改革を促す動画や記事を公開
・東京ウィメンズプラザにおいて夫婦で家事・育児を共に考えるセミナー「パパママサミット」を開催
・子供が生まれる前から、生活と仕事の調和(ライフ・ワーク・バランス)の重要性について夫婦で考え男性の家事・育児参画を促す冊子「パパとママが描くみらい手帳」を区市町村で母子健康手帳を渡すタイミングに合わせて配布
担当者の話では、男性の家事・育児を増やすには、当事者夫婦だけでなく、企業やあらゆる世代の意識の変化が必要なようだ。そのために東京都では、イベントや冊子、動画配信など様々な取り組みが行われている。
また、コロナ禍の在宅時間の増加が男性の家庭に対する意識に影響を与えているとも分析しているように、変化の途上なのかもしれない。